『ファーストクラス』

 ファッション雑誌の編集部という華やかな世界にあったのは、女同士の格付け地獄。女同士の果てしなき泥沼の戦いを、ショッキング&ポップに描く。壮絶な格差に立ち向かう底辺女子が、頂点を目指して成り上がる裏シンデレラストーリー。

見る前は、日本の『プラダを着た悪魔』なのかなと思っていたけれど、ファッション雑誌の編集部が舞台という以外は、どうもそうではないみたい。あの映画で一番の肝は編集長ミランダとそのイデオロギーで。ファッション誌の頂点にいても、更にその上にある男性社会の論理を、最後にひっくり返す所にはノレるものの。主役であるアンドレアの話には、不満が残った。
このドラマで、ミランダに当たるであろう板谷由夏演じる編集長には、まだそのカリスマ性は見られないどころか。三浦理恵子演じる副編集長に、皮肉を言われてしまう始末で。とてもじゃないが、頂点に位置するカリスマにする演出ではない。単に下手くそなだけかもしれないが。あの、2つのベルトで悩んでいるスタイリストに対しアンドレアが思わず笑ってしまうシーンのような、ハッとさせられるシーンがあれば、また見方も変わってくるのだけど、恐らくプラダとは違い、沢尻が頂点を奪う話になるのだろう。それにミランダの、理不尽にも取られかねない要求も、イジメでは無いので。根本的に描くものも、何より時代と国が違うのだから。今の日本だからこそ、描けるものを見たいところだ。

このドラマには、二つのポイントが合って。一つは沢尻エリカの見た目と、立ちふるまいが変わっていく姿。もう一つは、外から見たら滑稽にも写る、女の世界で繰り広げられるマウンティング=人間の格付けランキングだろう。既に一話の時点でそちらの要素は、大きく展開されていたのだが。なによりキャラクター紹介時、雑誌の表紙のようなデザインと、そこに書かれている異名に爆笑した。『腰掛系の腹黒コネ入社』とか『カリスマ気取りのサバサバ詐欺』とか。10年近く前、雑誌のコピーが一番イカレテた時代の『ちょいモテセレブのあげあげファッション術』みたいなノリを思い出させてもらって、とても嬉しい。今後は最初と最後だけでなく、細かくランキングが上下する様子を、アプリかなんかで連動させるのなんてどうでしょう。

そんな感じで『プラダを着た悪魔』とは全然違うというよりも、日本的な仕事と女の話になりそうだ。そこに関しては、一日の長がある渡辺千穂が脚本だから問題ないだろう。字幕で内面を見せる、特殊な演出にはまだ慣れないが、全員の内面を視聴者に分からせる事自体は、全然間違ってないと思うので(見せたいことがハッキリした作品なので、余計なミステリーに時間を使わず、テンポを良くするのは大事)。あとは仕事をカッコよく見せれたら、結構いい線いくんじゃないだろうか。それこそシンデレラのように、ファッション誌の頂点への階段を昇る「カッコいい」話でもあると思うので。周りの人間をガンガンぶっ飛ばして、ランキングの頂点に君臨するような。『プラダを着た悪魔』から、ここまで時代は進化したという姿を見せて欲しい。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?