【毎週ショートショートnote】『 秋の空時計』
恋人の時恵は時間にルーズで、待ち合わせの時間に来たことなんてほとんどない。
5分、10分の遅刻は当たり前。
2時間以上も遅刻してきた時には、さすがの僕も本気で怒ってしまった。
遅刻をするということは、相手の時間を無駄に使っているということだ、そのことを、君はどう考えているんだ。とーー。
すると、時恵は心底申し訳なさそうな顔でこう言ったのだ。
「ごめんね翔斗。本当にごめん。でもね、空を見ていたんだ。雲って面白いんだよ。いろんなふうに形が変わって、同じ形なんて1つもなくって、それで……気づいたらこんな時間に……ごめん、怒ってるよね?」
本気なのか天然なのか、良く分からないその返答に、僕の怒りはなぜか消失してしまう。拍子抜けというやつだろうか。
目を落として腕時計をみる。
そのガラスに空が反射していて、うまく時間を読み取れなかった。
秋の空が
「今日くらいは時間を気にしなくてもいいんじゃない?」
と言っているかのように思えた。(416字)
++++++++++++++++++++++++++++++++++たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
*元来は『男心と秋の空』だったように、男心というのは移ろいやすいものなのです。
**私の時計は止まってしまっていたようで、お久ぶりとなってしまいました。また今月から細々(毎週ショートショートnoteに限らず)動きだしていこうと思います。再開は初日投稿でと決めていました。ではまた。
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