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世界を作ったオシャラーとオドゥドゥアー

今回は、カンドンブレーの言い伝えでの、私たちが生きているこの世界のはじまりについてのお話です。

 オリシャーたちの世界にはヒエラルキーがあり、最上神をオロルンといいます。またの名をオロドゥマレともいい、この方はすごすぎて、人の目には見えないといわれています。オロルンに従属する神々として、私たちも知っている個性豊かなオリシャーたちがおり、主に20種類の神様が語り継がれています。今回はオロルンの二人の子ども、オシャラーと、オドゥドゥアがライバル争いをしながら世界を創造していくというお話です。

 オシャラーは創造神で、人間を創りました。背景が人の影になっていますが、頭がないことにどうぞ注目してください。頭はこの後、アジャラーというオリシャーが頑張って創ってくれます。オリシャーの「オリ」とは「頭」という意味で、頭はカンドンブレーにおいては非常に大事なものとされています。「シャー」は「守護神」と言う意味で、オリシャーは私たちのたいせつな頭を護ってくれる存在なのです。

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イラスト©️クルプシ

 オシャラーは年老いていて、疲れ、のろのろした姿で現れます。もう踊ることもできず、太陽光にも耐えられないので、白い布で完璧に覆われています。オシャルファ、オバタラーとも呼ばれ、「オパショロー」という踊りの時に助けてくれる杖を持っています。オシャラーを守護神に持つ人は権力、創造的な仕事が好きで、断固たる性格をしており、横暴でもあります。カタツムリ、イニャーミ芋、スイカ、白い食べ物が好きです。でも塩、デンデー油は入れません。「エバー ババー」と叫び、白色と金曜日の担当です。番号は1番を象徴します。

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オシャラーを祝うお祭りが、奇跡の教会と言われる「ボンフィンのお祭り」です。ブラジル・バイーア州には365の教会がありますが、ボンフィンはその総本山で、カトリックの教会ですが、その後ろにはオシャラーの姿があります。

 ブラジル音楽が好きな方は、昨年ジルベルト・ジルやガル・コスタも参加した「Obatalá」というアルバムがまさにオシャラーの名前ですね。

 それでは、ヘジナウド・プランジさんの「シャンゴー」という本よりご紹介します。このお話は長編なので、前編から。

 オシャラーとオドドゥアーは長い間ライバルでした。
それは、世界ができるよりも前の話。
最初は、世界には私たちがいま、私たちの世界として知っているようなものはなにもありませんでした。
オロルン・至上神は、オルン(セウ Céu )という天空に子どもたちと一緒に暮らしていました。
ある日オロルンは、オシャラーに、世界を作るように命じ、創造の時に使う、材料の入った袋を授けました。そして、注意深くこう息子に言いました。なによりも、ことを始めるなによりも前に、エシューに何かお供え物をするんだと。
エシューに協力してもらえなければ、何も作ることはできないし、何にも変化しないだろう。
なぜなら、エシューの力は変化させることだから。

 オシャラーは、創造の袋を背負って、出発しました。道すがら、考えました。
「もう少ししたら、世界を作るんだ、全てのものがある世界を」
そして、その未来の創造物のことを考えてうっとりしてしまいました。
「もう少ししたら、男と女を作ろう」
そして、自惚れてこうしめくくりました。
「自分は、とっても大事な存在になるなあ。何のためにエシューに感謝しないといけないんだろう?すぐに私が創造主になるというのに?」
そして、エシューに何もお供えをしませんでした。
エシューはオシャラーの軽蔑に侮辱を感じ、計画を邪魔してやることにしました。
当然のことです。

 オシャラーは道を行きながら、とても喉が渇きました。近くには水がなく、オシャラーが杖で椰子の木を突くと、木の幹から澄んで美味しいワインが出てきました。ワインはとても美味しくて、喉の渇きは強烈です。
オシャラーは思った以上に飲みすぎてしまって、酔っ払いました。
創造の袋を置いて、椰子の木の木陰で眠ってしまいました。

 そこへ通りがかったのは、オドゥドゥアー、オロルンのもう1人の息子です。
オドドゥアーは、オシャラーの役目を知っていました。
その任務を自分が担う名誉を得たいと願っていました。
実は家を出る前にオドドゥアーはエシューに贈り物をしてありました。そしていま、エシューは道の途中で、オドドゥアーにその報酬を与えたのです。
オドドゥアーはオシャラーの創造の袋を盗んで、遠くへ逃げてしまいました。

 オドドゥアーは袋の中にあったもので、世界を創りました。オシャラーが眠って、酔っ払っている間に、オドドゥアー・世界の創造主は、大地を創りました。そして鉱山、動物たち、植物を創りました。

 目覚めて、何が起きたか理解したオシャラーは、オロルンの家へ走りました。
そしてオドドゥアーに騙されたと話しました。
オロルンはひどくお怒りになり、オシャラーのことを軽率で、怠け者だと罰を与えました。ですがまだにんげんは創られておらず、大地が創られただけでした。
そこでオロルンは、オシャラーに、創造を完成させるように命じました。
「だが今度こそ、エシューにお供えものをするのを忘れてはいけないぞ」とオロルンは笑っていいました。
オシャラーは言われたことを遂行し、男と女が作られました。人間たちはすぐに増えて、世界に暮らすようになりました。男も女も創造してくれたオシャラーを崇拝し、「偉大な父(グランジ・パイ)」、「偉大なるオリシャー」と呼びました。

 ですが、不注意のお咎めとして、オシャラー・偉大な父は、もう決して椰子のワインを呑んではいけないことになりました。それだけでなく椰子から採られるもの、例えばデンデー油なども。椰子の油でできた食べ物、ヴァタパーや、カルルー、アカラジェー、シンシン・ジ・ガリーニャ、その他の美味しいものたち、これらはオシャラーと、オシャラーの子孫たちには禁じられています。

 オドゥドゥアー・世界の創造主(クリアドール・ド・ムンド)だけでなく、人間を作ったオシャラー・偉大な父(グランジ パイ)や、ほかのオリシャーたちも創造に参加し、オロルン・至上神によって考えられた作品の仕上げをしました。「世界」と「人間」ができてから、ちゃんと世界を支配できるように多くのことを人類に教えねばなりませんでした。
 オリシャーのオシャギアーは食料をこしらえるピラォン(すりこぎ)を創り、大好きなイニャーミ芋の準備を容易にしました。こうやって、自然のものを変化させる能力を人間に与えました。
 オグン・鍛冶屋は、製鉄の方法を発明して、鋤や、シャベル、熊手大鍬、鎌などを作り、人間が大地を耕し、食べ物を収穫して、ひとびとのお腹を満たし空腹にならないように手助けしました。でも、同時に戦争に使う武器も発明したのです。ナイフ、刃の長い剣、サーベル、破壊し、傷つけ、殺すものです。
なぜなら存在するもの全てはふたつの面があり、良い面と悪い面があるからです。

 さて、実はこのあと、この兄弟は信徒を率いて戦争になります。そのお話はまた別の機会にご紹介します。

 しかしどうでしょうか、私たちを創った神様は意外とうっかりしていたようです。大切な課題があったにもかかわらずお酒を飲んで寝ていたわけです。彼に作られた人間の一人として、そのうっかりした要素は十分受け継いでいるような気がしてなりません。でも、そのせいでおいしいデンデー油入りのムケカもアカラジェも食べられないのは、本当にかわいそうですね。

 Xangô o Trovão シャンゴー 雷 Reginaldo Prandi 訳/さかやきわ

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