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ZERO : FEVER EPILOGUE 世界観

【A.INTRO】

「人類を襲う破滅から救う」
マヤの遺物を盗んで捕まった3人組が明らかにしたのは
「Sciensalvar」は新しい新興宗教組織だと
※サイエンサルバール

国立中央博物館で展示中の「マヤ文明展」でマヤの遺物を盗もうとした3人組が、当時勤務していた*請願警察に捕まった。 ソウル龍山警察署は17日、特殊窃盗未遂などの容疑でA(31)さんとB(28)さん、C(21)さんを捕まえて調査している。 彼らは去る10日午前10時5分頃
「マヤ文明の時間、運命、予言」展に展示されている遺物を盗もうとした容疑だ。

*請願警察-(プライベート警察)韓国で「청원경찰」請願警察と呼ばれ、官庁や公共団体・銀行などが費用を負担して警察の配置を請願する制度であり、それによって配置された警察官のことである。

事件の担当記者は、容疑者Aの犯行動機を取材した。容疑者Aは、"世界の終末を迎える前に人類を救うために遺物を盗まなければならなかった "と供述している。その後、この3人組は「サイエンサルバール」という宗教の信者であることが判明した。
この3人組は、宗教の指導者であるヘンリー・ジョーの影響を受けて犯行に及んだと推測される。
サイエンサルバールは、1999年にヘンリー・ジョーという科学者によって設立された新しい宗教である。この宗教は、人間はエネルギーの集合体であり、不確実な未来からくる人間の悩みは、科学によって解決できると考えている。ヘンリー・ジョーは公式声明の中で、砂時計の形をしたマヤの遺物についてたびたび言及している。ヘンリー・ジョーは、その中に凝縮されたエネルギーが人類を救う鍵になるとも述べている。

ヘンリー・ジョーの言ったマヤの遺物は、月の動きを模した砂時計の遺物である。この遺物の正確な目的については、専門家の間でも多くの憶測がある。しかし、一つの明確な定説は、この遺物は珍しい冶金技術によって作られ、儀式のために使われたということだ。

【サン】

ヨサンがいない状態で戻ってきてから、1週間が経った。
異次元に旅立つ前に、アンドロイドガーディアンが存在しないこの場所に滞在していた。
あの街並みも、人々も、いつもと変わらない様子だった。
ただ、変わったのは時間帯だけだ。
簡単に言えば、僕たちは過去に戻ったんだ。

僕らがアジトに集まる前、ユノの兄が交通事故に遭う少し前の時間だ。
クロマーが壊れた時に時間帯が少しねじれたと推測され、ユノは感激していた。
おそらく、兄が悲惨な交通事故からよみがえったからだろう。
ユノのことは頭では理解できるが、心の底ではユノに対して薄情だと思っていた。
過去であろうと現在であろうと、ひとつだけはっきりしたことがある。
僕たちは生きていても、ヨサンは僕たちと一緒にここにいないんだ。
クロマーが壊された以上、僕たちがあそこに戻ることはできない。

どうしようもなく時間を過ごしていたその時、ソンファ兄さんが駆け寄って叫んだ。
"これクロマーだろ"
彼は、韓国国立中央博物館に展示されているマヤの遺物「月の動きをとらえる砂時計」の強奪未遂事件を取り上げた記事を見せた。
「クロマーだ!」

【ソンファ】

「思えば、夢の中で手に入れた壊れたクロマーは、黒いフェドラ帽の男からだった。
つまり、そのクロマーは彼らの次元に存在していたことになる。この次元に別のクロマーが存在する可能性もある。ヨサンを探すためにクロマーを見つけて、元の場所に戻そう!」
ホン・ジュンはそう叫んだ。
しかし、他のメンバーは「危険すぎるし、違法だ」とホンジュンのアイデアに反対した。

「合法か違法かが重要なの? ヨサンはどうする?彼を置き去りにしろというのか?」

もし、昔の僕だったら、ホンジュンがアイデアを出したとき、ルールを破るのが怖くて、他のメンバーと同じように反応していたのかもしれない。
それでもっと怒ってたのかもしれない。
でも、今の僕は以前の僕とは違う。
ヨサンを救うことが最優先なんだ。

"僕たちは過去にとらわれないことを決意した。異次元に旅立つとき、僕たちみんなで決心したんだ。そうだろう?"

僕たちはここが現在じゃないことを知っている。
だから、すべてを元に戻すためには戻らなければならないんだ。

しばらく考えてからメンバーたちは次々とクロマーを盗むことに賛成し始めた。
みんなが集まってきたとき、ユノが静かに言った。

「僕はここにいたい。兄さんを置いては行けないだ」

【ジョンホ】

ユノ兄さんを信じていただけに、彼の発言はショックだった。
僕は気持ちを落ち着かせるために、僕たちのアジト周辺を歩いた。
ミンギ兄さんがそっと出てきて、一緒に歩いてくれた。彼も同じ気持ちだったんだろう。

" ユノの決断を尊重してあげて"
僕は戸惑いながらもミンギ兄さんを見た。
彼は慎重に続けた。
「おばあちゃんを失うかもしれないと思った時、夢もメンバーも、すべてが無意味に思えてきたんだ。ユノの場合はもっとツライと思う。ユノはすでに一度、兄さんを失っているからね。絶対に手放したくないはずだろ」
その時、僕はミンギ兄さんを殴ったことを思い出した。
ミンギ兄さんが僕たちの夢は無意味と言って辞めようとしたとき、僕は裏切られたと思い、殴ってしまったんだ。すぐに後悔したけど…

「今さらだけど、実はあきらめたくなかったんだ」

彼が諦める決心をしたのは、唯一の家族である祖母が倒れたからだったという。
祖母が苦しんでいるのに、自分はメンバーと楽しく過ごしているという事実が、彼を苦しめていたのだ。
僕は、ミンギ兄さんの話を聞いて、ようやくミンギ兄さんの考え方を理解することができた。
ユノが経験したことを完全に理解することはできないと思ったけど、彼もつらい思いをしているのだろうと思った。
兄を探すこととヨサンを救うことの間で葛藤しているはずだ。きっと苦しんでいるだろう。

長い間話し合った結果、僕たちはユノ兄さんの選択を尊重することにした。
誰も決定を強制することはできない。

【ユノ】

今頃、みんな博物館の前にいるはずだ。
どうしてこんなに緊張しているんだろう。すべて計画通りに進んでいるはずなのに。

兄に「1分おきに携帯をチェックしてるじゃないか」と叱られた。恥ずかしくなって僕は携帯を置いた。
僕は兄さんの左足をマッサージし、「大したことじゃない」と声をかけた。
「おかしいよ!?変わったよね。まあ、バイクでフラフラしていた頃に比べれば、だいぶマシになったけど......。でも、この2週間に急に変わったから慣れないよ。」
兄さんの言うことは理解できる。
だって僕は未来から帰ってきたんだから。

「神様は完璧な手を与えたけど、その代償として、少し不自由な足を与えたんだと思う。」と僕は言った。
不思議そうな顔をする兄に、僕はギターを弾く真似をした。
彼は大笑いしながら、左足をもっと強くマッサージしてくれと言った。
生まれつき右足が不自由だから、左足はいつも浮腫んでいる。
「でも、もし足が良かったら、ここで楽器を弾いている自分なんて想像もつかなかっただろうね。欠点があることは、逆に言えば、本質を見抜く力を与えてくれるものなのかもしれない。そうだろ?」

話を終えて、部屋の隅にあるテレビをつけると、ヘッドラインニュースが流れてきた。それは、サイエンサルバールのリーダーであるヘンリー・ジョーが、サイエンサルバールの信者数百人と共にマヤの遺物を盗むために韓国の国立中央博物館に侵入したというものだった。遺物を盗もうとする彼らを止めようとした少年たちも、今は人質として捕らえられている。
僕は飛び上がった。
人質は僕のメンバーだった。
僕はキャビネットからバイクのキーを取り出し、兄に叫んだ。
「兄さん、今日絶対外に出ないで。 絶対、絶対に何があっても出てはいけないよ!」

【ウヨン】

サイエンサルバールは宗教団体だと思っていた。でもなぜ...
なぜヘンリー・ジョーは僕の喉にナイフを向けているんだ?なぜこんなことに?

午後4時、美術館の前に集合し、3人ずつ2組になって入館する予定だった。
閉館時間が近づくにつれ、警備も緩んできた。
一組は警備員の注意を引き、もう一組はクロマーを盗む役割を担った。
クロマーを盗んだら、すぐにヨサンのもとに行くつもりだった。
しかし、美術館に入る前から、その計画は崩れてしまった。
展示場から出てきた赤い服の人たちの中に、黒いハイテクウェアを着た男がクロマーを手にしていたのだ。長い白髭を生やし、右頬に黒いほくろがあり、大きなゴーグルをかけていた。
サイエンサルバールの指導者ヘンリー・ジョーだった。
クロマーを彼から取り戻さなければならないのだ。この機会を逃したら、もう取り返しがつかないかもしれない。

その時、赤い膝掛けを肩に掛けた女子高生たちが、僕の横を通り過ぎた。
僕は何も考えず、彼女たちの膝掛けを取り、頭からかぶって、サイエンサルバール信者の一団に加わった。戸惑う女子高生の顔を後に、メンバーも毛布をかぶった集団の中に入っていった。

僕たちはゆっくりヘンリー・ジョーに近づいていった。
クロマーを捕まえようと近づいた時...
バンッ!
警察が空砲を撃ち、ヘンリー・ジョーとサイエンサルバール信者を遮った。
その瞬間、僕はクロマーに向かって手を伸ばした...。しかし、ヘンリー・ジョーはさらに素早く僕の喉元に刃を向けた。
彼は笑いをこらえながら、僕の耳元でささやいた。

"ちょうど人質が必要だったんだ、だから来てくれてありがとう!"

【ホンジュン】

「頭を使え、ホンジュン、頼む、知恵を絞れ」

何も思いつかない。

今まで感じたことのない恐怖で、頭が止まってしまった。
バーン!警察がまた空砲を撃った。
最後の警告として、人質が解放されない場合は、直ちに発砲すると叫んだ。
信者がざわめき始めると、ヘンリー・ジョーが「動くな」と叫んだ。

その時、ライダーの一団が大きな排気音を立てて美術館に向かって走ってきた。
6台のバイクがサイエンサルバールの群衆を囲み始めた。信者たちは、ライダーたちの意図がわからないことに不安を覚えはじめた。
ヘンリー・ジョーが叫んだが、バイクの音がうるさくて何も聞こえない。
その時、見覚えのあるステッカーが目に飛び込んできた。

『ATEEZ YH』ユノだ。

他のライダーは、きっとユノの仲間なのだろう。

僕は直感的にユノの計画が分かった。
ヘンリー・ジョーは信者をコントロール出来なくなると群衆のほうを向いた。

"ウヨン!!!"

ウヨンに聞こえたのか、直感的にユノだとわかったのかわからなかったが、ウヨンはクロマーをひったくるようにして奪って走り出した。
信者の集団から走り出すと、ユノとライダーたちは僕たちをバイクに座らせ、猛スピードで走り出した。

警察が信者を取り締まる中、一人逃げ出すヘンリー・ジョーの姿が見えた。

【ミンギ】

"ああ、やっぱり戻ってくると思ったよ!"
僕はユノの後ろで興奮気味に叫んだ。

嬉しくて叫んでいると、隣で走っていたホンジュン兄さんの声が聞こえてきた。

"後ろに車がいる!!"

6台のバイクが突然向きを変え、全員が地面に倒れ込んだ。
僕たちを襲いに来た車は、その勢いに負けて歩行者用通路に反転し、通行人たちにぶつかったのだ。地面に倒れた歩行者たちを見て、ユノは目を震わせた。

"兄さん!"
ユノは通行人に駆け寄りながら叫んだ。
地面に倒れていたのはユノの兄だった。ニュースでユノのバイクを見て、美術館へ向かってきたようだった。
ユノの兄はゆっくりと目を開け、尋ねた。

"今、5時7分なのか?"

携帯電話を確認すると、午後5時7分だった。

「お前の日記によると、俺は午後5時7分に車に轢かれたって書いてあったよ」
ユノは驚いて兄を見た。

兄は続けて
「ごめん。机の上に置いてあった日記を読んだんだ。何かあったんだろうとは思っていたけど、どんな事が起きているのかは教えてくれなかったね 」と。

彼は苦しそうに呼吸を続けた。

「意味がわからないから、嘘だと思ったけど、そうじゃなかったんだね」

"今すぐ病院へ行こう"
ユノは涙を拭きながら兄を引っ張ろうとしたが、兄はその腕を掴んだ。ユノは兄を離さないように兄の手を握りしめた。

「お前に言わなければならないことがある...。あの時、僕が怪我をしたのはお前のせいではないし、今でもお前のせいではない。だから、俺のことは過去に置いておいて、自分の人生を歩むんだよ」
ユノは泣いていた。兄はゆっくりとユノの頭を撫でた。
「愛してるよ、弟よ。俺がいつも言ってること、分かるよな?お前は今日一日を過ごすだけで精一杯なんだ。この2週間は十分幸せだった。感謝してるよ」

そして、ユノの兄は気を失った。
ユノは兄の胸に頭を埋め泣き叫んだ。

ヘンリー・ジョーは横転した車の運転席からよろめきながら出てきた。頭に傷を負ったヘンリー・ジョーの顔には、じわじわと血が流れ落ちていた。ヘンリー・ジョーはウヨンの手に握られたクロマーをじっと見つめた。そして、ナイフを持ってウヨンに向かって走り出した。
ユノはすぐにヘンリー・ジョーに殴りかかり叫んだ。

"クロマーを回せ!"

ヘンリー・ジョーは倒れたときに落としたナイフをまた掴んだ。

"急げ!"

ヘンリー・ジョーがこちらに向かって猛威を振るったその瞬間、ウヨンはクロマーを回した。

【ヨサン】

このガラスの筒にどれくらいいたのだろう。光もないこの筒の中にいるのは、永遠に続くような気がした。ガラス張りの筒の前には、政府に反旗を翻した抵抗組織の隊列が、生体エネルギーを奪われて立っていた。
アンドロイドガーディアンは、彼らを黒い布で覆っていた。抜け殻になった彼らを見たくなかったのだろう。最悪なのは、その中にグライムス兄妹が含まれていたことだ。

グライムス兄妹とレフトアイは、クロマーが粉々になった時に放つ光を見て、美術館に駆け込んだ。レフトアイはバンカーから脱出することができたが、右腕を失ってしまった。グライムス兄妹は捕まってしまい、生体エネルギーを失ってしまった。

どれだけの時間が経ったのかわからない。いっそ感情を失いたくなるほど辛かった。
いや、いっそガーディアンに僕が殺されればいいと思った。

そこまで思考が及んだとき、どこかでトランペットの音がした。僕を監視していたガーディアンが外に飛び出した。
ドアの向こうでは、打撃音とうめき声が聞こえた。
僕は知らずに両手でガラスの筒を叩き始めた。
生きたかった。そう、本当は生きたかったんだ。

「誰か僕をここから出して!お願いだ!」

ドアが開くと、久しぶりに見る光が差し込んできた。開いた扉の向こうでは黒いフェドラを被った男たちがアンドロイドガーディアンと戦っていた。
"やあ、ヨサン"
僕の名前を呼ぶ優しい声が聞こえた。
僕のガラス張りの筒に近づいてきた男が、黒いマスクを下ろした。安堵の涙があふれた。
ソンファ兄さんだった。

【Z.OUTRO】

-反抗組織の地下アジト
黒い海賊団-

古い小型の機械から信号が発せられた。
片腕の男が駆け込んできて、古い機械の前に座った。
片腕の男はペンをかざして暗号を書き込んだ。
レフトアイだった。
またの喪失感にめっきり痩せた姿だった。

"・・・ ・- -・--  -- -・--  -・ ・- -- ・  ・- - ・ ・ --・・"

レフトアイは書き留めたモールス信号を解釈した。その顔には、だんだん希望の光が広がってきた。
レフトアイは、人々のほうを向いて叫んだ。

「彼らが帰ってきたぞ!戻ってきたぞ!」

地下のアジトに「黒い海賊団」の歓声が響く。
紙に書かれたレフトアイの乱雑な筆跡には、こう書かれている。

『SAY MY NAME ATEEZ』

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