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転換仮定法

If-Converted Method (ICM) とは

ICMは、If-Converted Method と呼ばれる。これは、転換権付き証券が普通株式に転換された場合、増加する普通株式を計算し希薄化調整後の発行済株式総数およびEPSを計算する手法である。俗に言う、Fully diliuted baseの発行済株式総数の計算にも役立つ。

例えば、CB(転換社債型新株予約権付社債: convertible bond)は、転換社債を普通株式に転換することで、潜在的に株主として会社の経営に参加する機会を提供する金融商品である。
普通株式の価格(つまり株価)は、一般的には会社の業績が良好であったり、市場環境が良好な場合に上昇する。この時、債券や優先株で受け取る利子や配当よりも大きなキャピタルゲインの機会が提供されることになる。

CB等の転換証券保有者は、転換価格で株式のポジションに変換可能なので、CB保有者の受け取る株式数は転換率 (Conversion Ratio:CR)=転換証券を株式に変換できる比率により決まる。

ICMとEPSの計算の関係

一般的に、企業の財務報告上は、会社が転換証券(CBなど)を発行している場合は、希薄化考慮前EPS と希薄化後 EPS が計算される。

希薄化後 EPS は、すべての転換証券(もしくは以前解説したように新株予約権やストックオプションも含めて)が、普通株式に転換された場合に計算されうる、希薄化効果調整後1株当たり当期純利益である
すべての転換証券が転換された場合、より多くの普通株式が存在することになるので、希薄化後 EPS は希薄化考慮前EPS よりも小さくなる。

時価総額の場合は、希薄化調整による増加普通株式数が発行済普通株式数に加算されるので、調整後の時価総額の方が調整前よりも数値は大きくなる。

ICMの計算例

ICMを使用した、希薄化調整後発行済普通株式数の計算例は非常にシンプルである。

基準日の株価と転換価格を比較し、株価の方が転換価格よりも高ければ、転換することになる。転換により増加する株式数は、額面金額を転換価格で除した数である。
つまり、株価よりも転換価格が低ければ、転換価格で普通株をGetし、差分の値上がり益が得られるであろうという理屈だ。

実際のバリュエーションでは、普通株の発行済株式総数があっても、ワラントや転換証券があればそれらは株価に応じて行使されたものとみなして希薄化後の株式数を計算するので上記のような計算をしている。

計算テーブルイメージ

上記のテーブルでは、普通株増加分= (+IF(転換価格<株価,IFERROR(額面金額/転換価格,0))という式になることが理解できよう。