【J1リーグ第33節 清水vs神戸 レビュー】

こんばんは、AT_Soccerです。今回は、J1リーグ第33節、清水エスパルスvヴィッセル神戸の試合を分析したいと思います。20分近くに及んだロスタイム、最終的にピッチ上の人数が9vs9となる事態、GK六反による同点ゴールなど、トピックに溢れた試合になってしまいましたが、策士ヤン=ヨンソンとポジショナルサッカーの世界的権威ファン=マヌエル=リージョとの戦術争いは非常に見応えのあるものでした。
これまで章立ては前後半で分けることにしていましたが、今回は両チームともに前後半で狙いやフォーメーションが大きく変わったりすることがなかったので、前後半による章立てはしていません。

目次
1. 両チームの狙い
2. レフェリングと試合終盤について
3. まとめ

1. 両チームの狙い

まず、両チームのスタメンは以下でした。

まず、エスパルスのこの試合における狙いを分析していきます。今シーズン、エスパルスは4-4-2ブロックによるゾーンディフェンスを基調とした守備を敷き、そしてボール奪取してからのショートカウンターで得点を奪うことを狙いとしています。今節でもそれらの狙いは見られましたが、さらにもう一つ、ヴィッセルの守備に合わせた狙いを持っていました。

ヴィッセルの守備は前線の三人(古橋、イニエスタ、ポドルスキ)から始まります。これに対し、エスパルスは四人(立田、ソッコ、河井、竹内)がビルドアップに参加することによる数的優位を作り出します。ヴィッセルの三人の守備意識がそこまで高くないこともあり、竹内や河井が前を向けるシーンも見られました。
前線の三人を突破後のエスパルスの狙いは、ヴィッセルの3MF脇のスペースです。これらのスペースを攻略する任務を負ったのは、両サイドバックの松原と飯田。さらに、両サイドハーフの白崎と金子は内側に絞ることで、伊野波と三田をピン留めすることに成功していました。
しかし、この攻撃では最終的にゴールを狙う形が基本的にはクロスとなってしまい、確率としてはあまり高くありません。結果として、エスパルスのこの攻撃は機能はしたものの、ゴールという形には結びつきませんでした(エスパルスの二点目は、ヴィッセルが九人の状態で押し込むことで生まれたものです)。

対するヴィッセル。先ほど、エスパルスはブロックを敷いて守備を行うという話をしましたが、それは同時に構造的にスペースが生まれることを受け入れることを意味します。

さらに、この試合ではエスパルスの守備時にFWとMFのライン間の距離が開いてしまっていたため、そこではさらに大きなスペースを神戸に与えていました。こうしたエスパルスの守備の構造的欠陥を、ヴィッセルはこのように使いました。

この選手配置によって、選手がボックスの中心でボールを受けることが可能になっていました。就任後5試合目という短時間でこれだけポジショナルなサッカーをチームに仕込めるリージョ監督の手腕はさすがとしか言いようがありません。
しかし、この神戸の攻撃はそれほど効果的に清水のゴールに迫ることができませんでした。それは、一点目としてパスの精度が低く、エスパルスの守備網に引っかかったということがありますが、二点目かつ重要な点としては、以下のような欠陥によります。

ボールを繋いだ先でゴールにつなげるためには、DFラインの裏のスペースを突く必要があります。しかし、今回のヴィッセルの攻撃では、図中の赤いゾーンに抜ける選手がおらず、両サイドの黄色いペースは両サイドバックしか使っていませんでした。これによって、ヴィッセルはポジショナルな優位性を効果的な攻撃に結びつけることができなかったのです。

以上で見たように、両チーム非常に明確な狙いを持っていたもののそれをなかなか効果的な攻撃に結びつけることができなかった、というのが今節の特徴でした。とはいえ、前半終了時点でスコアは1-1、シュート本数は清水9-5神戸、ボール保持率は清水45%-55%神戸と、ほぼ互角の戦いを繰り広げることができていたため、両チームの監督は前後半を通じて大きな変更が加えられなかったと考えられます。互いに狙いを持って戦うも、それによる弊害がぶつかり合ってしまうという意味で非常に面白い試合でした。

2. レフェリングと試合終盤について
今回の試合ではレフェリングに言及せざるを得ないでしょう。エスパルスサイドからすれば兵働のホーム引退試合であり、久米GMの追悼試合という非常に重要な試合。さらに、イニエスタ効果もあって満員となったアイスタ。選手たちのテンションは非常に高かったと思います。結果として、審判団は選手たちをうまくコントロールすることができず、退場者二人、負傷者複数名が出てしまいました。

今回のレフェリングに関しては、どちらに有利、不利ということはそんなに感じませんでした。それぞれのチームの選手やサポーターからすれば相手方に有利になるようなジャッジだったとお考えになるかもしれませんが、正直平等ではあった、そうでなくても許容範囲内だったと感じています。それよりも今回のレフェリングでの最大の問題は、ジャッジの一貫性がなかったことに尽きると思います。ルールというものは厳格に適用しようと思えばどこまでも厳格に適用しうるもので、選手たちは審判ごとに、ルールがどの程度厳格に適用されるのかをアセスしながらプレーをしていきます。しかし、今回の柿沼主審にはそれがなかった。ラフプレーでファールを取らないかと思えば、非常に軽微に見えるファールで笛を鳴らしていました。そうなると、選手はフラストレーションが溜まります。そのフラストレーションが最後に爆発してしまい、ロスタイム20分弱という混乱を巻き起こしてしまうことになったのでしょう。

そんな中で、選手たちの戦う姿勢は素晴らしかったです。試合がいつ終わるのかも明確に分からず、さらに互いにフラストレーションをためあって危険な中、両チームの選手は非常に勇敢に戦っていたと思います。もちろん審判団も試合を構成する非常に重要な要素ですが、やはりサッカーの中心たるべきはプレイヤーです。彼らが安全に、安心してプレーできるようなレフェリングの重要性に、改めて気づかされた試合でした。

3. まとめ
記憶に残ったのが試合終盤のみという方も多いかとは思いますが、今回の試合は戦術的に非常に見応えがあり、面白い試合でした。清水は何とか引き分けに持ち込んだことで最高で五位まで順位を上げられる可能性があり、久しぶりの上位進出を果たすチャンスを得ました。神戸も、この試合で勝ち点を積んだことでJ1残留が決定、来年もJ1の舞台であの豪華なメンバーを見られることになりました。J1も残すはついに一試合となってしまいましたが、最後まで各チームの選手たちが熱い戦いを繰り広げてくれると確信しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。解説等についてご意見、ご感想があればコメント欄にいただけますと嬉しいです!

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