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スイミーとリーダーシップ(2)

前回(スイミーとリーダーシップその1)の最後で、
「じゃ、うちの部長の権限って、いったい何なの、何であんなに偉そうにしているの?」とお嘆きのあなたへ、そんな話やアクセプタンスの詳細を次回以降のどこかに書きたいと思いますので、たくさんいいね!やスキやシェアをしていただくと書きたくなります(笑) よろしくね。

と言ったら、170フォロワーくらいでずっと停滞していたのが、203フォロワーにまで増えたので、本当に「スイミーとリーダーシップ」の続きを書く羽目になってしまった、ありがとうございます。

前回のスイミーのお話から、リーダーとリーダーシップの違いと、権限、権力、権威、影響力を定義して、順に話を進めていきたい。

権威と権限からも切り離された「リーダーシップ」とは、みんなの合意を得て、困難に立ち向かい、大勢の仲間を動かす手段である


スイミーはリーダーじゃなかった
自らリーダーシップを発揮して「みんな いっしょに およぐんだ。 うみで いちばん おおきな さかなの ふりして!」と叫んだけれど、このときはまだリーダーじゃなかった。

ん?リーダーとリーダーシップは何が違うの?
と思われた方も多いだろう。リーダーは役職(職位や地位ではなく)ではなく、任命された役割だ。誰が任命をしたかと言えば、それは小魚たちだ。リーダーを任命されたスイミーとリーダーを任命した小魚たちで組織が構成されることになる。これからはスイミーを組織のリーダー、小魚たちを組織のメンバーと呼ぶことにする。

スイミーのリーダーシップは自ら進んで発揮したものだったから、最初はなんら権限を持たなかった。

小さな魚たちの信頼を得て、共感を得て、アクセプタンス(いつか詳しく説明します)が高まっていく。

小さな魚たちが自らの意思で、自分たちの権限(生きるか死ぬかの瀬戸際で、スイミーの指示に従うというもの)をスイミーに託した(委譲した)のだ。この時にスイミーはリーダーに任命されたのだ。任命によって、スイミーと小魚たちは一つの組織を形成することになり、小魚たちは組織のメンバーとなった。

メンバーである小さな魚たちにリーダーを一任されたスイミーは、ここでようやく権限を手にする。メンバーに行動を指揮する権限であり、同時に責任も生まれた。

つまり、他より優れた能力を正しく利用でき、信頼のおける人へ権限を委譲して、リーダーと任命する。リーダーを定義するのは、任命する側なのだ。スイミーをリーダーと定義づけたのは他ならぬメンバーの小魚たちだったのだ。

ただ、スイミーはリーダーを任命される前からリーダーシップを発揮していた。あれ?

つまり、小魚たちと話をして、小魚たちの合意を取り付け、大きな魚に食べられてしまうという困難に立ち向かい、その問題を解決するために大勢の小魚たちを動かして、おおきなさかなのふりをした、この一連の手段がリーダーシップである。改めて定義を確認すると(小魚のママだとややこしいの人間の話に戻すね)、

権威と権限からも切り離された「リーダーシップ」とは、みんなの合意を得て、困難に立ち向かい、大勢の仲間を動かす手段である(参照:ロナルド・ハイフェッツ教授〜NHKリーダーシップ白熱教室〜)

権限を手に入れたからと言って、リーダーだけが得をするような、例えばリーダーだけが生き延びるためにメンバーたちを犠牲することができる、というような独善的な「私腹を肥やす」ための権限ではない。いや、権力をそういう誤った使い方をする人は確かにいるよね(後述)。

サービスの提供能力
その権限は、「もう小さな魚たちが岩陰にずっと隠れたままで過ごすことなく、安心して海を泳ぎ回ることができるようにする」という小魚全員の命を守るサービスを提供することが交換条件になって委譲されたものだ。

もしもスイミーがこのサービスを提供できなければ、たちまち小魚たちは委譲した権限をスイミーから剥奪してしまうのだ。つまりサービスの提供能力がなければ、リーダーを解任されてしまうのだ。

もし、スイミーのサービスによって、安心して海を泳ぎ、大きな魚を追い出すことができるようになったことで「やっぱりスイミーの言うことを聞いて正解だったね、あいつは信用に足りる奴だな」と信頼が高まることで、はじめて権威が生まれる。

この権威は「あいつの言うことを聞いていれば、大きな魚に食われる心配がなく、生き延びることができるから、もう岩陰に隠れて暮らす必要はなくなり、みんなで安心して暮らすことができる」と言う生き残りのエキスパート(サバイバルというサービスの提供能力に優れた専門家、という権威)として認められたということだ。これは単にリーダーという役割を任命されたときよりも、権威を持つことによって、権限とと一緒に付与された権力以上のものを手に入れることになる。

最初はリーダーに権威がない
こうしたことは、私たちの普段の暮らしの中でも起きている。ガーデニングをしている人であれば、植物の害虫に関しての専門家には、自らの意思で権限の一部を委譲して、害虫駆除の指導というサービスを受ける。それが上手くいって、庭の花が見事に咲けば、さらに信頼が高まり、権威が生まれる。

権威が生まれる場所は、権限の一部を委譲されたスイミー・リーダーと、権限を委譲したメンバーの小魚たちで構成する閉じられた組織内だけでの話だ。

権威を構成する要素には、
1)この組織の外からの脅威を未然に防ぐ、もしくは被害を最小限に抑えること
2)この組織の構成員(小魚たち)が最大の恩恵(安心・安全・衣食住・利益・幸福)を得られるようにすること
3)そして組織内における小魚同士の争いごとや混乱を仲裁して組織に規律と平和を与えること

こうした権威は、組織の中だけで機能するものだったが、その権威に関する信用情報が組織の外へシェアされることで、権威は一人歩きし「権威ある専門家」として、まだ直接にはサービスを受けていない人にとっても権威が認識されるようになってくる。まだサービスを受けていない人も、一人歩きした権威を認めた時点で、もはや権限の一部を委譲したことになる。

権威は誰かによって「はい、これがあなたの権威ね」と渡されるものではなく、信頼によって後から生まれる結果に過ぎないので、権威を譲渡するとか、売り買いすることはできない。権限の一部を委譲できることと、権威が生まれることは別物なで、区別しないといけない。

権威があるから権力が生まれるのではなく、権限の一部を委譲されたから、権力(指揮命令権)を持つことができるだけだ。

話を戻すと、スイミーへの信頼によって権威が生まれたことで、権限だけで小魚たちの一挙手一投足(魚には手も足もないんだけどね)を指揮命令するだけではなく、それ以上におおきな影響力を持つようになる。

それは、スイミーに指揮命令権がないことでも、スイミーが「あっちの方が美味しい海藻が生えているからみんなで行ってみない?」と言えば、小魚たちは影響を受けてあっちの方へ行くようになる。相手を強く信じるようになり、相手の意見や考え方や言動・行動によって、自分の意見や考え方や言動・行動を変えるようになる、これが影響力だ。

もともとは、小魚全員の命を守るサービスを提供するだけだったはずの権限の委譲が、結果として権力(指揮命令権)だけではなく、影響力も持つようにる。影響力が高まることで、小魚たちは、今まで以上に権限を委譲するようになり、スイミーの権限が及ぶ範囲は拡大し、権力も比例して大きくなる。

以上のことから、スイミーというリーダーが権威を持つようになり、権威を大きくしていくプロセスから、リーダーと権威は強く結びつくのがわかるだろう。

権力より影響力
権力があるからと言って指揮命令をするだけであれば誰でもできるだろう。しかし、いくら権限の一部を委譲したからと言って、そうそう頭ごなしに権力を振り回されて、なんでもかんでも命令されては楽しくはない。きっと「おいおい、おまえに権限を与えたのは誰だか忘れたのかい?」とでも言いたくなるはずだ。

それよりも「あっちの方が美味しい海藻が生えているからみんなで行ってみない?」と誘われれば、スイミーへの信頼で高まった権威の影響力によって、「あっちへ行っても良いかな」と行動するようになる。決して強制的な指揮権発動によって相手を動かしたわけではなく、スイミーの影響力によって小魚たちが、自らの意思でスイミーと行動を共にし、自ら進んで海藻を食べに行くようになる。

これが組織においても、部下や上司とだけではなく、仲間や同僚ともこうした「影響力によって行動する」関係を構築できるならば、さぞや変革やプロジェクトも上手くいくに違いない。

しかし実際はそうでないことが多い。ここでようやく↓この話につながってくる。

「じゃ、うちの部長の権限って、いったい何なの、何であんなに偉そうにしているの?」とお嘆きのあなたへ

あなたが組織に自らの意思で所属した時点(採用時)で、雇用契約に基づき、組織へ権限の一部を委譲したことになる。いや、そんなつもりじゃなくて、単に入社しただけで、なにも権限なんか与えていないよ、と思われるかも知れないが、もはや後の祭り。雇用契約書も見たりサインした記憶もない、というかたもおられるかも知れない。

雇用契約
民法第623条(雇用)においては「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」とあり、双方が対等な立場で規定されている。
雇用契約書には、「絶対的明示事項」と言うものがあって、以下が規定されている。
1. 労働契約の期間
2. 有期労働契約を更新する場合の基準
3. 就業の場所と従事すべき業務
4. 始業および終業時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換(シフト制がある場合)
5. 賃金に関する事項

あれ?「権限の委譲」なんて何処にも書いてないじゃん!と思われるかも知れないが、契約に従うと言う時点で、それは権限の一部を委譲して「従う」ことを約束したことになるのだ。

あなたはスイミーと小魚たちとは違い、必ずしも信頼に基づく(その組織・会社を選んだのだろうからきっと信用はしているはずだが)だけではなく、組織への所属=雇用契約との交換条件なので、悪い言い方をすると、自分自身を人質に採られたみたいなもの。

もう、「その委譲した(召し上げられた)権限を、どう使おうと文句は言いません」と宣言したのと同じかもしれない(本当は違うけど、召し上げた方にしてみれば、そういうつもりの人もいるのも事実)。

もちろん、その組織に入りたくて、その組織で働きたくて、よろこんで、感謝して、権限の一部を委譲する人もいる。幸せだ。

そしてあなたから権限の一部を委譲された組織は、組織のメンバー(雇用契約者のこと)に対して、仕事を与えることで、社会貢献と自己実現する場を与えるという「サービス」を提供する。

皆さんがもらう給料はサービスではなく、労働と価値創造への対価(報酬)である。

権限の委譲によってサービスが提供され、そのサービスが約束通りであれば、その組織を信用でき、雇用契約を継続しようと思うはずだ。

これによって組織には権威(頼っても大丈夫だろう)が発生するはずだが、日本の企業においては、権限の一部を委譲したと言うよりも「給料で雇われている」感が強いかも知れない。つまり、必ずしもスイミーのような信頼に基づく権威とはいえない。権限を渡してしまっている以上は、組織は雇用契約者に対して、指揮命令権を持ち、それは強制的な権力である。

しかし、単に労働を指示するための「指揮命令」としての権力を行使するだけであれば、たいした問題にはならない。だが、実際にはこの権力の行使を労働を指示(業務指示)するためだけではなく、別の目的に使う勘違いした輩がたくさん現れるからややこしくなる(後述)。

権限の再配分
雇用契約者(メンバー)から権限を召し上げた(委譲された)組織は、メンバーの雇用との交換条件として召し上げた権限を、自由に再配分することができる。

それが、上司から部下への権限の委譲だ。組織は、独自のメカニズムで権限の再配分=権限移譲を行う年功序列だったり、人事評価システムだったり、昇進試験だったり、と様々だ。

権限は役職という目に見える形で、再配分され、たくさん権限委譲されると社長とか役員になり、そこそこなら事業本部長や部長に、ちょこっとなら課長・係長・グループ長にという具合だ。

これは任命者がメンバーではなく組織であるが、メカニズムはメンバーがリーダーを任命するの同じで、権限が委譲され、それに権力が伴う。

ただ、委譲されたリーダー(社長や部長達)は、この「権限委譲の見返りとしてサービスを提供する」というメカニズムを理解しないままだ。よもや自分や部下たちが雇用と引き換えに委譲した権限が、自分に再配分されただけだとは誰も理解していないことがほとんどだ。そのため、自分に権限の一部を委譲してくれたのは、目に見える上司や経営者や組織であると思い込む。たしかに、これまでの実績や働きぶりや、価値観、行動様式やお客さまからの評判などが評価されて、部長を任命されたのかも知れない。それを、自分の功績の結果としての昇進であり、権限の獲得であり、それは自分の能力がその権限に見合ったものだからだ、と部長という役職に就いたことが能力の証しであり、能力があるから権限と権力がついてきている、と勘違いをするものが現れる。

役職に就けたから、能力があって、自分は他のものに比べて人品が偉いのだ、と錯覚する。

そんなリーダーたちは、権限の委譲との引き換えに還すべきサービスを、本来の権限の持ち主であるメンバーへ提供しようとはせずに、自分に権限の一部を委譲してくれた(と思い込んで)上司に還そうとする。

それが上を見て仕事をすることにつながる。これはいま、現実に起きていることで、「じゃ、うちの部長の権限って、いったい何なの、何であんなに偉そうにしているの?」につながってくる。

自分を部長にしてくれた上司に報いるように、もっと権限を拡大できるように上司を向いて仕事をするようになっていく。

なかには上司に報いるように権力を行使するだけではなく、自らの地位・役職・既得権益を守るために、つまり私腹を肥やすがごとく権力を行使して、人に指揮命令するものも現れる。組織全体の最適化のために権力を行使してサービスを提供するのではなく、自分の利益の個別最適化のために権力を行使するのだ。自分の地位を脅かす優秀な部下を左遷したり、出向させたり、嫌がらせのような指示命令でやる気をそぐなど、TVドラマのようなことも起きているようだ(最近聞いた実話)。

さて、次は権威を持たないままリーダーシップを発揮したスイミーが、小魚たちにアクセプタンス(受け入れてもらえること)を得て、どうやって信頼を得るようになったのか、そのプロセスを検証してみよう。きっと、あなたが、組織内でリーダーシップを発揮して、人々の合意を得て、困難に立ち向かって、大勢を動かしたいときには、必ず役に立つはずだ。

どんどんシェアしてフォロワーが増えたら、励みになるし、嬉しくなって執筆も早まると思うので、よろしくね。

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