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フェイクニュースに騙されるな中編

前編がまだの人はコチラから

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たった一つの論文だけを信じないこと

 ここで騙されないようにする(信じないようにする、と言うよりも事実と意見を切り分けようと言う話ね)には、たった一つの論文の主張は決して鵜呑みにしないこと、いや信じてはいけないのだ。論文が事実ではないとまでは言わないが、論文が全て正しいわけではない、あくまでこういう結果が出ました、その結果を私はこう解釈しましたという主張でしかなく、本人は「こんな事実がわかった!」と声を大にして叫ぶけれど、それは一つの意見でしかないと冷静に受け止めるべきだ。捏造かもしれないし、間違っているかもしれないし、たまたまの偶然の産物で再現性がないかもしれないし、最初から結論ありきで実験して、解釈を大幅に自分の意見に従わせただけかもしれない。そう、どんな実験結果が出ようとも結論が決まっているならもはや論文ではなく意見書に近い。
 
 だから、フェイクニュースかどうかをそのニュースの出所をたどって探して正しいかどうかを検証する手間暇をかけるよりも、まずは「~という論文発表」とか「~という研究成果」や「~が判明」などいうもっともらしいニュースは、そういう意見を言っている人が広い世の中には一人くらいはいるんだな~、と右から左へスルーすることだ。
 
 もし、ここで、あなたが鵜呑みに信じてしまうと単なるフェイクニュースの被害者なのだが、それだけで止まらずに
「これはすごい、前々から私が主張していたことがちゃんと研究されてて、とうとう論文になって認められた、やっぱり私は正しかった、見て、これが証拠だよ」
と人に話したり、SNSでシェアしたり、それをネタにブログ記事を書いたりした瞬間に、あなたはフェイクニュースの共同正犯、そうだ、加害者の仲間入りだ。

 しかし、論文を信じないで、一体何を信じろというのだ? じゃ、研究者は論文を信じないで、どうやって研究を進めているのか?

 私は薬学部出身だったことと、元々はスウェーデンに本拠をおくバイオテクノロジー技術の支援会社(旧ファルマシア、のちのアマシャム、現在はGEヘルスケア・ライフサイエンス)で32年間働いてきた経験から、論文の読み方(後述する)や取り扱いは学んできたつもりだ。←個人の意見というか主張ね、博士号を持っているわけじゃないから。

 そもそも研究とは、物事の因果関係を証明しようとするものだと言ってもいいと思う。実験計画法に基づいて設計した「ある因果関係の仮説を証明する実験」を行い、その結果を考察することで、「因果関係」を明らかにする、それが研究であり、科学論文だ。

 同じテーマで因果関係を証明しようとする研究はたくさんある、たくさんあるだけじゃなく、結論もたくさんあり、仮説が真逆で結果も真逆、つまり真っ向から反対の事柄を「正しい」と信じて主張する論文などはいくらでもあるのだ。

 こうした場合に、自分の都合のいい論文だけを取り上げて、それを信じて、これは「正しい」と主張するマスコミやメディアのやり方に私たちは日々暴露されている。私たちもそれを信じてしまいがちになる、それは権威がある研究者や施設の発表だからだったというだけではなく、自分が信じたい内容、普段からそう思っていた内容であれば、援軍を得たような心持ちになり、容易に信じてしまうのだ。反して、そうは思っていなかったことであれば、冷静に対処して「眉唾ではないのか?」「たった一つの論文だけじゃ信じられない」と言えるかもしれないが、それでも論文だと言われると心が揺れるものだ。

 特にインターネット上で問題となったDeNAのキュレーションメディアなどは、こうした論文などの偏った引用によって、信じさせようという「フェイクニュース」を量産していると言っていいだろう。

 科学的には、いや統計学的というべきか、「メタアナリシス」という手法で、同じ因果関係を証明しようとする同じ複数の研究結果を一つにまとめて検証し、今ある研究成果だけを見たときに、全体がどのような因果関係を証明しているのか、という研究手法が存在する。これ以上は詳しく触れないが、「たった一つの論文だけを鵜呑みにしない」リテラシーが求められている。

フェイクニュースやサイバー攻撃は同じもの(意見)

 一つ、事例を挙げると、1ヶ月ほど前の「ウコン」のフェイクニュースを覚えておいでだろうか?
その時の私の投稿記事を例にしたいと思う。

日本ではに二日酔いに効くとされる「ウコン」薬効がないことが判明〜ライブドアニュース〜
http://news.livedoor.com/article/detail/12608128/
これは間違った翻訳もしくは解釈によるニュース、英語原文までちゃんと読んでいないネット住民が、面白がってシェアしまくっているが、鵜呑みに信じてはいけない。ここで恥ずかしいと思えれば、リテラシーが芽生えてきた証拠だ。

 
「ウコンに薬効がないと書いた方が拡散する」ことを狙った記事だ。
 
 まず、この研究で問題視されたのはそもそも「ウコン」ではない、そこが間違い。天然ウコンに含まれるたくさんの薬効成分の一つである「単一成分としてのクルクミン」が槍玉に挙げられているだけだ。純品のクルクミンという意味で。
論文タイトルには「ウコン」なんて一言も入っていないし。
 
 しかも、この論文は自分たちで実験した研究結果を示したわけではなく、追跡できないほどに膨大な研究論文を調べまくって、統計学的な解析をしたところ、
1)クルクミンという物質は、生物に対する薬効活性を測定する試験方法においては、適切な結果判定を妨害する性質を持つために、効果があるかないかに関わらず「活性がある」という結果になる特性があるという点と、
2)クルクミンの薬効評価の臨床試験において、数値的には差はあれど、有意差があるとは言い切れない程度の差しかない。
ことを言っているだけ。
 
 結論には、Of course, we do not rule out the possibility that an extract of crude turmeric might have beneficial effects on human health.
訳すと

「もちろん、天然ウコンの抽出物が、人間の健康に有益な効果を及ぼす可能性は否定するものではない」

と結論づけられているのに加えて、さらに「こうした事実(クルクミンの研究が盛んだが薬効が証明されていない)をしっかり認識することで、天然ウコンの健康への有益性に関する複雑な研究から、複雑さを取り除いてくれるかもしれない」と締めくくっていて、「ウコンに薬効がない」とは、一言も書いていない。 
 それと、この研究論文もたくさんある論文の一つであり、つまりは一つの解釈でしかなく、これが事実かどうかは誰かが追跡調査して証明しない限りは「真実かどうか」はわからないので、あくまで「こういう主張をしている論文がある」だけのは話でしかなく、この論文一つを持ってして「判明した」と断じるのは科学的ではない。勘違いしてはいけない。そういう主張をしている人がいる、程度の話だ。
 
 ちなみに私は「ウコン」の味方でもなんでもありませんからね。
 
いちおう薬剤師なのと、バイオテクノロジーの会社で32年ほど働いてきたので、言わずにはいられなかっただけ。


加えて、この私の投稿もあくまで私の解釈であること、私の主張に過ぎないと思ったほうが正しい認識と言える。私に騙されるな!

普段からウコンに対して思うことがあったので、それ見たことかという感情が引き起こす 行動が「シェア」である。
 
自分の身近にウコンを信仰する誰かがいたら、親切に警告したかったのか、あるいはバカにしたかったのだ、ウコンなんかありがたく飲んでいるけど、ほら、見てみろよ、論文が出ているんだぜ。 
 
誰かをバカにしたいけど、自分がいうのはなんだけど、ニュースが代わりにバカにしてくれたので、安心してシェアできる。 
 
ネットはすぐさま反応して、これを引用した、取材をしないままで。事実かどうかの確認をしないで、無責任にもシェアしたのだ。
 
GIGAZINEは最初に出した罪は重く、凄まじいシェア数、リツィートを記録した
他にも
ねとらぼ
財経新聞
ロケットニュース
 EARL@パワポの奴隷
アノニマスポスト
Sunrise

と二桁三桁のシェアを記録していた(まぁ、そもそもたいした信用するに足るメディアではないのだが)
 
 この時には、あの有名な「やまもといちろう」さんや、LINEの「田端信太郎」さんでさえも、フェイクニュースを思い切り広めてしまった
 
 彼らのように目が肥えたはずのネットの論客でさえも、論文発表と記載があれば、元記事なんかも読まずにいいね!をしてシェアしておしまい、という具合にいとも簡単に騙され、加害者に転身するのだから、私たち素人は、フェイクニュースを見分けようなどと思わないことだ。
 
 個人だけではなく、同様にメディア各社も間違えたのは、「健康食品「ウコン」(ターメリック)には薬効はないことが判明」と、科学論文を「事実」として「判明した」と報道した稚拙さだ。プロのメディアとしては、恥ずかしいより「廃業すべき」レベルだ。
 
 そのニュースがシェアされている件数や、リツイートされている件数は、それがフェイクニュースではない、という証拠にはならないし、有名で信用に足りる人がシェアしていたから信じるというのは、気持ち的には、それを信じなかったら何を信じればいいかという話になってしまうのだが、前述のやまもといちろうさんや田端信太郎さんが見事に騙されたのを見てしまうと、それも基準たり得ないのは明白だ。
 
 じゃ、どうすればいいのか、というと、このウコンの時は、私は大元の科学論文を読んだのだが、全てを読み込んだわけではない。科学論文には、一定のフォーマットがあって、自分の知りたいことをどこから読み取ればいいのか、その構造が明確になっている。
 
科学論文は、だいたい8つから構成されているはずだ。
1)題名(タイトル:その名のとーり) 
2)アブストラクト(要約のこと、アブストと言いますね) 
3)序文(イントロ:なぜ、その実験をしたのか、背景とか、目的とか) 
4)方法(マテリアル & メソッド:材料と方法、料理のレシピに当たる)
5)結果(結果、図表を載せる) 
6)考察(結果からどんなことが言えるか結論を考えて見ました) 
7)謝辞(お世話になった人たちのお名前とお礼を書く)
8)参考文献(リファレンスという:背景にどんな先人たちの論文からの知識があったか) 

 
ただし、全部読むのはしんどいので、目的にもよるが、
 
1. まずタイトルをしっかり読む、短いけど端的に何の研究なのかは良くわかる
2. 要約と序文を読む
3. 結論を読む

この3つで十分だし、これだけでウコンのニュースはフェイクだったと判明した。

「でもさ、一般の人が元記事まで辿って確認なんかしてられないよ!」って、その通りだ

科学論文は「決定的な事実」ではなく、あくまで一つの「意見(解釈)」でしかない

 見分けられる自信があるか、と言われたら見分ける力は私にはない。でも、わからなければ、白でなければ、黒でなくともグレーならば、疑わしきは信じないのが賢明だし、シェアをしないということが原則になる。 

事実のように見える「ニュース」は要注意だ。 

 もはや新聞でも、テレビでも信用はできない。 
 そもそも自分に関係がないニュースに関心を持つのはいいとして、それを信じて何か行動を起こさないというのが重要だ。 

見分けることができないのであれば、フェイクニュースに加担しない、

というスキルが必要だ。

 見分けようとするよりも、論文発表などという肩書きに騙されないことだ。いや、論文だけではない、いかにもページビューを稼ぎそうな、扇情的で釣り記事のようなタイトルのニュースはそもそも怪しいわけだし、自分で取材をしていないコピーのコピーのようなニュースですらないようなネタは、クリックして開く価値さえないということだ。 

PVは正義か、バズれば勝利なのか?

冷静に考えれば違うとわかるが、PVを稼ぐことがビジネスゴールである人や、バズって利益を稼ぐ人には、それが正義なのだろう。
 
そうやってみると、信じていけない基準は
NHKだとか、朝日新聞だとか、日経新聞だからと言って、肩書きは信じない
テレビの医療番組や健康番組で紹介したからといっても、信じない。NHKの「ためしてガッテン」(今は改名して「ガッテン」になった)でもフェイクニュースをせっせと生産して、謝罪までしている始末だ(睡眠薬が糖尿病治療に有効というようなことを放送したらしい←ココ 私は本放送を見ていない、謝罪放送を見ただけ)

だって、最近の報道番組でもネットで拾ったニュースや動画を垂れ流しているのだから、取材もしないコピー文化に染まったもはやメディアとは呼べない存在に成り下がっている

くどいけど、論文発表も鵜呑みにしない
政府発表だって信じないほうがいい

 フェイスブックで回ってきたニュースは、人々にシェアしたくなる魔力のような力があるので、そもそも気をつけたい。特に感情を揺すぶられるようなニュース、楽しい、面白い、悲しい、辛い、感動した、というのは人間は信じたくなるものだ。酷いというニュースもそうだ、一緒に腹を立ててしまうのだ、「これはヒドい」と。そこが付け目なのだ、フェイクニュースの。

フェイスブックはむしろ偽のニュースの方が多い気がする←意見ね。

 テレビに医者のコメンテーターが出てきてしきりに紹介する健康法は信じていいのだろうか?
といえば、これも論文と同じ類の肩書きをまとっているだけの話で、たった一人の医者が主張している健康法など恐ろしくて鵜呑みになんかできないはずだ。
 
 じゃ、たくさんの患者さんが感謝する「おかげさまで元気になった」と合唱するなら信じていいのかといえば、それはもっと信用できない。ましてや、それがサプリや何かを売りつける番組の中での紹介映像であれば、絶対に信じてはいけないし、有名なタレントが「10年飲み続けています」などと言ってもそれは信じちゃいけない、あれはお金をもらっている仕事なのだから。嘘ではなく、台詞なのだ。

 わかりやすいのは、ついついクリックしたくなるタイトルが過激な釣り記事ニュース、嘘だと思ってもつい押してしまい、本当かな、とか思ってしまうのは弱い人間のサガだ。
誰でもワンクリックでフェイクニュースの加害者になれるのだ。もちろん悪いのはフェイクニュースを作ったやつだ。でも、確かめもしないでフェイクニュースかもしれないことを広めることも罪は重い。

ここからは事実ではなく、私が信じたい、信じてもいいかも、いや気に入っている研究報告がある、と言うより通説になっている話がある。私には事実かどうかを確認しようがないがもっともらしいなと思っている話だ。

人間は進化の過程で、人を信じるようになった、

と言うものだ。1人ではいきていけない人類は集団で暮らすようになって生き延びる環境・方法を見つけたわけだが、その際に人を信じる傾向が強いほど集団における仲間との関係性を良くして絆を深める。それが結果として誰かが見つけた生きる知恵を信じて集団はより生き残るように進化した。だから、人を信じやすい人たちが生き残っている。あくまで仮説だが、私にはしっくりくる。

誰かがある魚を食べたら苦しみ出して死んでしまった。

それを実際に目の当たりにした人しか信じない、としたらどうだろう。あの美味しい魚を独り占めしようとして嘘を言っていると疑って、自分も食べてしまったら毒に当たって死んでしまい、そうした生死を分ける「人を信じる」と言う行動様式を遺伝子に持つ人だけが生き残ることになって今に至るのだ。つまり我々は太古の昔から人を信じることで生き残り進化してきた、それが人類なのだ、と言う仮説。信じてあげたい私には都合のいい仮説だ。

じゃ、現代の私たちは、何を誰を信じればいいのか?

ニュースではないもの
メーカーの製品発表プレスリリースなど
誰かの意見ではないもの
あなたが信用する人のご意見やご助言
今、あなたの眼の前で起きていること
あなたが信じたいことすべて

 
あなた自身が被害者になるだけで、加害者にならないのであれば、正直に言って何を信じようと構わないと思う。信じて幸せになれるなら、占いでもおみくじでも、誰かのお告げでもなんでも信じればいい。それが一番だ。
 
さて、ここまでは前振りで、ここからが本題(笑)

「ビジネスマンの基本スキル 事実と意見を切り分ける」

お待たせしました。

後編に続く
#どんどんどんどこシェアして
#スキして


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