見出し画像

技術は『筋トレ』しないと貧弱になる

僕の趣味は釣り。
一時期は、Googleマップで検索した主要なポイントをスクリーンショットして、それを複数枚に出力し、それぞれの用紙をつなぎ合わせA1サイズくらいの『釣り場マップ』を作成して、仕事中でもポイント確認がすぐにできるように自分のデスクの横に貼り付けていたくらいハマっていた。
僕が嗜んでいる釣りのシーズンは、大まかに春〜秋なので、最近では釣具をタンスの奥に仕舞い込み、ひたすら春の訪れを待っていた。

そして先週、桜のつぼみも膨らみはじめ、日中の気温も上がって来たので約半年ぶりの釣行に出かけることにした。
昼前くらいに釣り場に到着した。焦る気持ちを抑えながら準備を整え、去年までの自分のフォームをイメージしながらキャストする。気づけば日が暮れる時間までブンブン竿をふっていた。残念ながら魚を釣ることはできなかったけれど、とても充実した一日になった。釣りは釣れなくても楽しい。

その翌朝、歯を磨こうと腕をあげたら、胸筋と上腕二頭筋に激しい痛みが走った。このエモい痛み。筋肉痛だ。

たったの半年、釣りで使う筋肉を休ませていただけなのにこの始末。
半年前の自分だったら、釣りをした翌日は逆に体の調子がいいくらいだったのに情けない。そんな自分に憤慨しながら仕事に向かう電車の中で、最近同じような感傷に浸ったことを思い出した。

僕はもともとグラフィックデザイナーだったんだけど、最近ではWebデザインの案件が8割くらいで、なおかつディレクション周りの調整なども担当することが多くなり、グラフィックデザインに接する機会が減っていた。
そんなときに、自社パンフレットのリニューアルの話が降りてきたので、「久しぶりにグラフィックデザインができる!」と喜んで打ち合わせに参加し、コンセプトからツールの役割、使い方などをメンバーとすり合わせながら設計し、ラフを作成し、いざデザインのディテールをつめてくぞ!というとき、自分に幻滅した。

……文字ヅメめっちゃ下手になってる。

Web案件では、タイトルなどのテキストを画像文字にしたいときに手ヅメをすることはあっても、本文などのデバイスfontは、letter-spacingの数値を設定するくらいのことしかやらない。

グラフィックデザインだけをやっていた頃、タイポグラフィやスペーシングについてを知るために、ヤン・チヒョルトやエミール・ルーダーの書籍などを読み漁って、1文字がデザインを構成するオブジェクトの最小値だということを学び、タイトルだろうと、本文だろうと、キャプションだろうと、読んだときに気持ちのいいリズムになるまで文字間を手ヅメで調整していた。知識はあるのに、何度文字間を調整しても文章にリズムが出てこない。

好きで没頭して学んで得た技術だったからこそ本当にがっかりした。

自分のスキルセットを広げていくことも大事だけど、自分が大切にしたい技術は日々筋トレしとかないと、簡単に筋肉が落ちて、そのうちでっぷりとした脂肪をつけ、昔の自分を思い出し憂うようなかっこ悪いおじさん技術になってしまう

「おじさんになりたくないなあ」と会社に向かう電車の中で、僕は痛めた上腕二頭筋をモニュモニュした。

いただいたサポートは、有料noteを購入するのに使わせてもらおうと思っています。