9年生きていた祖母
ある人が映画のポスターを何枚も持ってきた。
ジブリというアニメを作っているところの作品で、まだまだ知られていないけれどきっと人気になるはずだと、熱をもって口から唾を飛ばしながらまくしたてる。
楽しそうに興奮するその人の熱に私達も心が騒ぎ、あちこちの映画館にポスターを配ってまわることにする。
テアトル、ピカデリー。なかなか担当者には会えないが、きっとこの熱意を伝えるのだという使命感に、胸は高鳴っていた。
そんな忙しなくも楽しい日々が続いていた最中、亡くなったはずの祖母が生きていたことがわかった。
ある一室の、布団を収納するようなジッパー付きで透明な袋の中に祖母が寝ている。祖母は薄く眼を開けて、弱々しく指を折り「9年」と私に伝える。祖母は生きていた。この袋の中に9年眠っていた。死を乗り越えた祖母の肌はもう黒みがかっていて、また死が近いのかもしれない。母に連絡し、医師を呼びに山を駆け下りる。
祖母は生きていた。今の仕事を辞めて祖母の側にいる、と私は誓った。介護をしたこともないのに、祖母はおトイレの介護を受けるのが嫌いだということが私の脳に伝わってきた。私もきっとそんな老人になるだろう、とも感じた。
目が覚めた。
今日は2019/08/15だ。少し、パニックになる。祖母が亡くなって8年経っている。お盆だ、帰ってきてくれたんだ、と気付いたが、祖母はもう亡くなっていることにも気付いた。
泣きたくなったので、泣くことにした。
塩分で、肌が痛む。
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