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「なにこれ」から始まった逆転サヨナラ勝ち

私は今朝、7時40分ごろ神宮球場に着きました。

実は私は昨日から少し心配をしていました。

昨日の早慶戦準備日は、3シーズンぶりに東都大学野球の試合が無い日の準備日になったため、長時間の準備と合わせ練習で部員はへとへとになっているのではないか、と思っていたのです。
(そのためTwitterに早く横になれ~と何度か書きました)

しかし。


外野のアーケードをゆるやかに曲がってライト側に入ろうとすると、学生服を来た部員が歩みを止めて「おはようございます!」と大きな声で挨拶してくれました。

顔を見ると、晴れやかでした。今朝の青空みたいに。

すると、周りにいた数人の部員も私に気づいて、挨拶してくれました。みんな笑顔でした。

今年の吹奏楽団の目標は「笑源(えみ)」だったと思います。私は「この大一番で、セルフで目標達成してるってすごいな」と思って見ていました。

そしてしばらく歩くと、チアの部員たちがいました。こちらもみんなはれやかな表情です。少し進むと、今日のダンス曲の練習をしている部員がいて、真剣そのものでした。

さらに行くと、リーダーの新人がいました。こちらもみんないい顔です。


「すごいな、みんな疲れてないのか」


私は感心しながら用事を済ませ、正面の本部から出ました。


すると、楽団の部員数人がカメラマンさんと記念撮影をしていました。これこれ、やっぱり秋の早慶戦だなあと思いました。


ほどなくして撮影は終わると、まもなくみんなが私に気づきました。こちらもみんないい表情です。何か、吹っ切れたような。

私は
「みんな大丈夫だから」
「頑張って」
というような話をしたあと
「これから明治神宮に行って必勝祈願してくるからね」
「100人分祈ってくるから」
と言いました。

するとみんなはパッと顔を輝かせて、さらにいい表情になりました。

なんかもう勝ったような気分です。

すごいな、もうだいぶ疲れているはずなのに…と思い、私は明治神宮に行くため、外苑前駅に向かいました。


途中、駅から球場に向かう部員数人にすれ違ったため「なんで逆方向?」と思われたかも知れません。また、慶応の部長先生と私のネクタイが似ているらしいためか、慶応の塾生からも何人か挨拶をいただき、ちょっと不思議な空間の中、外苑前駅に着きました。

そして銀座線から千代田線に乗り換え、神宮内苑に着きました。

土曜の朝8時台なのでもうだいぶ参拝客がいました。

しかし、一列だけ賽銭箱の前がぽっかりと空いていました。私は出勤のたびに参拝に来ていますが、あまり見ない光景です。

私はそこに引き寄せられるように行き、今日の必勝を祈願しました。

私がいなくなったあと、その賽銭箱の前にはまた人がぞろぞろと来ました。これも少し不思議でした。


その後球場に戻り、午前10時15分開門。


試合前企画についても熱く語りたいところですが、明日が迫ってきているため、割愛します。

試合についても熱く語りたいところですが、明日が迫ってきているため、これも泣く泣くかなり割愛します。



いきなり9回表です。

早稲田はここまで1対0とリードしていてこの回を抑えれば完封勝ちでした。私は気の早いことに「早慶戦で早稲田が1対0で勝つのはいつ以来か」をデータベースで調べていました。

すると「平成30年春以来、5年ぶり」。秋に限ってみると「平成12年秋以来、23年ぶり」ということがわかりました。

このときは今回と同じ「勝ち点を獲得した方が優勝した早慶戦」です。お、縁起がいいなと思いました。


しかし、そうはうまくいきませんでした。さすが慶応です。

早稲田は送球ミスが3つ重なり、慶応に同点だけでなく、逆転を許しました。1対2です。


私はここで2階席から早稲田の応援席を見ました。ダイナマイトマーチでした。


しかし、よく聞くと少し様子が違います。何か違和感を覚えました。

最初は何なのかわからなかったのですが、周りの様子をよく見ると、慶応の攻撃応援より早稲田の守備応援のダイナマイトマーチの音量、そして圧が強くなっていたのです。

「なにこれ」


私はあっけにとられました。どちらが攻撃しているのか、わからない応援です。

チアの声援も聞こえました。席からもいろんな声が出ています。



ここで私は水曜日のことを思い出しました。

水曜日の夜、稲穂祭があって、応援部員に「頑張って」と言ったときに、何人かに「ここぞというときに、リミッターを吹っ飛ばしたみたいな応援をしてください」とお願いしました。

「リミッターを吹っ飛ばした」という応援は、3年前の秋の早慶2回戦で早稲田があと1人まで追い込まれたときに聞こえた魂の応援のことです。

この応援の中、早稲田は奇跡の逆転ホームランが出て、優勝を果たしました。


いま、部員がそのリミッターを吹っ飛ばした応援をして、慶応の攻撃応援に勝っている。

私はびっくりすると同時に、感動もしましたし、同時に、

「もう満足」
「すごいよ、みんな」

と思いました。

応援部員は、私の言ったことを1回戦でもうやってのけてくれたのです。そして楽器の制限がある守備応援なのに攻撃応援に勝っている。え、守備中応援でリミッター外しに成功した?それって私、想定外なんですけど。


もう、なにか突き抜けたような感覚でした。今の早稲田の応援部員は私の期待以上のことをやってのけてくれます。


すると、その気迫の応援に投手の伊藤樹も気づいたのか、思い直したようにストライクが決まるようになりました。

一死一・三塁のピンチが続いていましたが、三振と投ゴロで切り抜け、1点差で踏みとどまりました。

早稲田の応援席を見ると、主将が必死の学生注目をしています。

そんな中、慶応のマウンドに谷村が出てきました。

谷村は少しきょろきょろしながらマウンドへ。少し異様な雰囲気を感じ取ったのかもしれません。

9回裏、早稲田の先頭は田村。狙いすましたようにショートの頭上を越える安打。早稲田の応援席はさらに盛り上がります。

そして次の島川はバントの構えでしたが、一塁走者がするするっと塁を離れ、慶応のショートが盗塁に備えて二塁へのカバーに行こうとした瞬間、ヒッティングに切り替えて三遊間を抜けるヒットを打ちました。

技ありの一打です。

早稲田の応援席はさらに盛り上がりました。


と同時に、慶応の谷村は「早稲田はバントの構えをしていてもわからない」と思ったようで、次打者でバントの構えをした茅野に、ストライクが入らなくなり、結局ストレートの四球を出してしまいました。

もうこの段階になると、早稲田の応援席は沸騰状態でした。

まだ1点負けていましたが「ああ、これで勝てるな」と思いました。


思った通り、その後早稲田は連続タイムリーヒットであっという間の逆転サヨナラ勝ち。



9回表裏に2点ずつ取り合って逆転サヨナラという、思いもよらない展開になりました。


私は試合後、複数の部員に次のようなことを言いました。

◎今日は応援が勝利を大きく手繰り寄せた

◎9回に逆転されて苦境になってもみんなの熱量は変わらなかったし、雰囲気が悪くならなかった

◎ダイナマイトマーチが功を奏して、みんな集中して、ついには慶応の攻撃応援に勝った

◎それで雰囲気がよくなり、野球部も思い直したように踏ん張った

◎その雰囲気で9回裏に入れて、球場全体が早稲田の雰囲気になっていった


すごい応援でした。

これぞ早稲田です。

見事にリミッターを吹っ飛ばして、しかも逆転サヨナラ勝ち…

もう何も言うことはありません。



試合後、少し暗くなった中、私がアーケードを歩いていると、カメラマンさんに会いました。

すると「お参りの効果が、ありましたね」と言われ、びっくりしました。

「え、なんで私がお参りに行ったこと知ってるんですか?」と聞くと「後ろで聞いてましたよ」と言って笑っていました。さすがNさん…


さあ、早稲田は「まず1勝」というミッションを1日で突破し、次は「あと1勝」というミッションにチャレンジします。

ただ、慶応も簡単には勝たせてくれません。だってさすが慶応ですから。

どうやったら「あと1勝」になるのか…まずは点をとることです。そのためには今日のように慶応が点を与えるような展開に持っていくことです。そのためにはどうしたらいいかというと…と考えていくといいと思います。

私は今日「今の応援部員と一緒に神宮大会で応援したい」という気持ちを強く持ちました。「あと1勝」です。明日も部員の皆さんと一緒に応援したいと思います。

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