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私の弟

私には3つ下の弟がいる。大人になってからの友達はそれを知って驚く。妹の話はしても弟の話をすることはないから。

妹とは二人で会って話すことや父と3人で宴会をすることがあったが、弟とは疎遠だった。弟には私が結婚する時もなにも知らせず、知らせぬまま離婚した。なので、元夫と弟は一度も会ったことがない。仲が良い悪いとかじゃなく、同じ家族で生まれたけど、一緒に住まなくなったら全然関係ない人みたいになってしまった。

お正月に家族が集まったりするような家ではなかったので、会う機会というのが全くなかった。コンビニでバッタリ会ったことがあったが、おうと軽く挨拶するぐらい。

3年前の秋に祖母が亡くなり、その時が大人になってからの弟をちゃんと知る初めての機会やったかもと思う。お通夜の帰り、弟、妹、私の3人で近くのスーパーに寄り、夜食やらを買い、父のいる我が家に帰り4人で宴会をした。
小さい頃の話とか色んな話で盛り上がった。

それから少しの間、連絡をしたりするようになったが、また以前のように遠い人になりつつあった。

そんな時を経て、妹の死でまた近くなった。
弟がいてくれてよかった。

妹が亡くなった翌朝、辛くて弟に電話しようかと考えていた時、玄関のドアがあいた。「全然寝れんかった」と入ってきた弟。それから1週間うちに泊まった。私の部屋は2つの部屋のふすまを取っ払って使っているので広い。私の部屋で寝泊まりした。

弟がいてくれてよかった。
心強かった。
眠れずに過ごす夜もそばに弟がいると安心できた。

葬儀が終わった翌日から私は仕事に行き始めた。いち早く日常に戻りたかった。妹がいるのが普通で、妹のことを特に考えることのない日常に。
弟は逆に仕事に行く気がしないと1週間程休んでいた。

仕事があってくれてよかった。
仕事中は以前と変わらない日常に戻れた。
仕事が終わり時間ができると考えてしまう。

夜、眠れなくなった。
寝てもすぐに目覚めてしまう。

深夜目が覚めてなかなか寝付けない日があった。おなかも空いてきたし、コンビニになんか買いに行こう。寝ている弟に気づかれぬようそっと外へ出た。コンビニでパンとアイスコーヒーを買い、そのまま近くの海に行く。時間は深夜2時過ぎ。真っ暗な海の向こうに空港の灯りが見える。波打ち際近くに座り、サンミーを頬張った。

夜の海は静かで、寄せる波が優しく話しかけてくれた。空や海をいつまでも見ていた。どのくらいたった時か、じゃりを踏む音に振り向くと人の気配にびっくりした。

「起きたらおらんし、ねーちゃんもかと思ったやん」と笑いながら隣に腰をおろす弟。心配してきてきれたんかあ。数日前の夕方に弟と一緒に海まで歩き、よく来るねんと話してたから海やと思ってくれたんかな。

海を前に真っ暗な中、二人で横に並び、それぞれがなにかを思ってる。

サンミー久々に食べて美味しかったこと、高校の学食に売っててよく買ったことなんかを話す。
弟が空港を見ながら、あそこで働いてたことあるわ、おもんなくてすぐ辞めたけどと笑う。ねーちゃんも関空は転々としたけど、色んなとこで働いてたでーと話す。

弟が昔この海にバーベキューしに来たことや、その時一緒やった子の懐かしい名前。
今はもう会わんくなった友達や今も会ってる友達のこと。

そんなこんな今まで知らずにきたお互いのちょっとしたことを話したり、また海を見つめたり。

4時前だったか、そろそろ行こかと海をあとにした。

この1週間で弟との距離がぐっと近づいた。
弟とも話したが、妹のことがなかったら一生こんな風に話すことなかったやろなあって。皮肉な話やけど。ほんまは3人でこんな風に話せたらよかったけどって。

悲しむことも、その悲しい出来事の中に笑いを見つけて笑いあえることも弟とだからできた。

妹が亡くなった1週間後に、弟と一緒に警察に遺品を受け取りに行き、役所の手続きや病院の支払いなども済ませた。車に乗れない私は、弟がいてくれたおかげでほんとに助かった。

妹の荷物と私を送り届けてくれた後、うちには寄らず、明日から仕事行くわと弟はあっさり帰ってしまった。

うちの家族は世間一般の普通と呼ばれるものからはまあまあなのかかなりなのか外れていて、弟も然りなんだが、ピュアでとても心優しいと思う。そうだとは思ってたが、大人になり見た目も変わるし、心の中にあるものまで変わってしまったかのように錯覚していたが、中にあるものはちっとも変わってなかった。

見える部分で世間一般の普通と呼ばれるものから逸脱してる分、ピュアさは世間の普通より逸脱して待ち合わせてると思う。

自慢の弟。

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