薬局にて学んだこと32 同調する

 同調するとは、同じような経験をしたものが相手の気持ちをわかること。稀に、同じような経験をした記憶がなくても相手の気持ちがわかる。あるいは、記憶がないだけで、どこかで疑似体験をしているのかもしれない。

 ある女性が、体に痛みを感じているのですが検査をしてもどこにも異常がない。そんな時ある人に「あなたの水子が障っている。着物を欲しがっているから作ってあげなさい。」と言われたそうです。私はたまたまその場に居合わせましたが、彼女は自分の苦痛ばかりを訴えて、自分の水子の気持ちをまるで考えようとしない方に見えました。
 
 でも、その赤い着物を見せられた時に、私ははっとして涙がこぼれそうになりました。なんてきれいな赤い着物、忘れ去られていた水子はどんなにうれしいだろう。彼女が、こんなにきれいな着物を持ってきたことが意外でした。少なくともこの時、彼女はわが子を愛おしく思うように、水子に同じ思いを抱いて着物を作ったのだと思います。

 私たちは、絶えず自分の気持ちをわかってもらいたいと思っています。それは、この世で体を持たなくても、です。そして、動物との間に心が通い合うものがあることは皆さんご存知のことと思います。

 うちのミルクという雄猫の話しです。

 ボランティアから譲り受けた、ひどく臆病で全く私たちになつかず、でも幸いなことに先住猫と相性が良くて、彼女が良く面倒をみていました。月日が経ち先住猫は死に、彼はようやく私になついてきたところでしたが、主人の「ミルでは癒やしにならない、新しい子が欲しい」のひとこと。そう言うと、新しい子がみつかるものです。今度の子は、人なつっこい恐いものなしの男の子、平気でミルに寄っていくので、彼は「ウーウー、シャーシャー」うなり、2か月の間ミルは元気がなくなり毛艶は悪くなり、ご飯の食べも半分くらい、片目も腫れてました。
 いきなり来て、私たちに平気で寄り可愛がられる子を、彼は嫌だったのでしょう。「ミルちゃんかわいそうに」とずっと思っていました。

 ある時、旅行に行く前に、一晩留守するからと言い聞かせをしていて、「この子は、私の言うことがわかってるんだろうか?」とふと思ったその時に、「この子はすべてわかってる、私がかわいそうにとずっと思っていたことも知っている」と、不思議な感覚で心がわかった一瞬がありました。

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