「心霊現象」と世界の解釈

金縛りのこと

高校時代は、よく金縛りに遭っていた。

身体を動かそうとしても動かすことができない。
なにかが自分に覆いかぶさっている。
胸を上から強くグッと押さえつけられる。
身体は動かせないが、なぜか目をあけることだけはできる。
恐る恐る目をあけると、そこには異形の化け物が…!

ただ、金縛りに遭うようになる前から、金縛りのメカニズムはテレビで見たことがあった。
それによれば、特に疲れている時は、睡眠時、身体は眠っているが(だから身体は動かない)、脳が起きているという状態になることがある。
その状態になると、脳が身体が動かないことを合理化しようとして、幻覚を見ることがある、というものだった。

昔にテレビで見た知識で、記憶も不確か、正確性も保証できない。
ただ、高校時代は、この知識があったおかげで、金縛りに遭っても、「脳が合理化しようとしているんだ。これは合理化による幻覚だ」と思えて、過度に怖がらずに金縛りが解けるまでやり過ごすことができた。

大学時代の出来事

高校を卒業した後は、金縛りに遭うことも滅多になくなった。
だが、大学3年生の時、実家で寝ていたら、久しぶりに金縛りに遭った。

この時も、「久しぶりに脳の合理化きたな。」と思い、やり過ごそうとしたのだが、どうもこれまで体験した金縛りとは雰囲気が違う。
えもいえぬ、異様な切迫感がある。
怖くて目をあけられないが、なにか荒い息遣いが聞こえる。
いやな汗がでてくる。

次の瞬間、足をグッと天井の方向に強く引っ張り上げられた。
これは、いよいよこれまで体験した金縛りとは違う。
「ヤバい」と直感し、「やめてくれ」と叫んだ(実際に叫べたのか、心の中だけかはわからない)。
すると、こちらの想いが通じたのか、足を引っ張り上げられる感覚もなくなり、金縛りも解けた。

その後、また浅い眠りについたのだと思うが、部屋が強くノックされ、母が部屋に入ってきた。
そして、母は、「おばあちゃんが亡くなったから、急いで病院に行こう」と言った。

「心霊現象」の解釈

個人的には、基本的に幽霊や心霊現象の類は信じていない。
ただ、大学時代の「心霊現象」は、祖母が亡くなる直前(又は直後)に体験した出来事ということもあり、祖母の死と関係している気がしてならない。

足を強く引っ張り上げられるという体験が強烈だったし、「祖母は自分のことを道連れにしようとしたのではないか」と割と本気で思っていた。
祖母にはすごくかわいがってもらっていたので、そういうこともあるかな、と思っていた。
ただ、祖母は聡明で合理的な人だったし、僕の可能性を応援してくれる人でもあった。
そのため、「祖母が自分のことを道連れにしようとした」という解釈には、どこか強い違和感もあった。

そのような中で、最近、この出来事を他愛ない雑談の中で人に話した。
その人は、僕の話を聞いた後、「おばあちゃんが最期につきものを一緒に持って行ってくれたのかもね」と言ってくれた。

この解釈にはすごく納得感があったし、なにより、優しい解釈だと思った。
「祖母が自分を道連れにしようとしたのではないか」という疑惑は、やはり言いしれない不気味さがあったので、すごく救われた気持ちになった。

世界の解釈のこと

僕は仮にも法律家であるし、誰かになにかを説明・主張するときは、論理的・科学的でありたいと思っている。

他方、僕たちは、世界を自分なりに解釈しながら生きている。
たとえば、信仰している宗教が違えば、同じ世界をみているようで、まったく違う形で世界を理解しているはずだ。

自分なりの世界の解釈については、人の納得感を得る必要は必ずしもないし、よりよく生きるためには、世界をいかに解釈し、世界とどのように良い関係を築くかという方が重要に思える。
そして、その方が世界をより好ましく理解できるのであれば、便宜的に、非科学的・非論理的な解釈を用いてもいいのではないか。
迷信・まじないの類というのも、これはこれで生きる知恵だなと思う。

祖母が亡くなった時のことを考えると、そのようなことを思う。
近々、墓参りに行こう。

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