見出し画像

弁護士がスタートアップにジョインした理由

今年の7月から、森・濱田松本法律事務所(以下「モリハマ」)を辞めて、クラウドファンディングサービスを提供しているREADYFORにジョインしました。
ジョインから3か月が経ち、また、秋が深まってきて内省的な季節になってきたので(?)、ここでひとつ、初心を忘れないためにも、どういう想いでREADYFORに移籍したかを書いてみたいと思います。

僕は、もっともっとリーガルマインドを持った人がスタートアップの世界に飛び込んでいった方がいいと思っているので、特に、弁護士や法務担当者の方などに読んで頂ければ幸いです。

――――――――――――――――――――――――――――――――
1.前職のこと

前職のモリハマは、国内外に10か所以上の拠点を持ち、弁護士が400人以上所属している四大法律事務所のひとつとされている大規模事務所だ。そんなモリハマで4年半ぐらい働いた。

「モリハマって激務なんでしょ?9時~(午前)5時まで働くんでしょ?」と揶揄されることもあり、実際めちゃくちゃ働いた自信はあるが、モリハマの執務環境はめちゃくちゃ恵まれていたし、おもしろい案件を通じて日々成長できていると感じられたので純粋に楽しかった。
特にモリハマは人が良かった。今思い返しても、気さくで面倒見がよい人ばかりだったし、各分野の一流の弁護士が「ここまでやるか」ってぐらいストイックに案件に取り組む姿には感銘を受けた。また、「合議」を重んじるカルチャーがあり、若手の意見も尊重してくれて、納得いくまで議論に付き合ってもらえた。
恵まれた環境で働く分には、人は意外とストレスを感じにくいのである。

モリハマでは、後述するスタートアップ法務のほか、株主総会・コーポレート・ガバナンス、会社訴訟・非訟、組織再編・M&Aなどの案件に主に取り組んだ。
また、「クライアントに近い距離で仕事をしたい」という思いから、複数の顧問先の窓口をやらせてもらったので、人事労務、IP(知的財産権)、個人情報保護、交渉・紛争、規制庁対応なども含め、幅広く企業法務一般の案件に取り組むことができた。
土地勘のない分野だと何が問題かも気づけないので、幅広い案件に取り組むことができて本当によかったと思っている。
窓口業務を通じてクライアントの担当者と仲良くなって飲みに行けたことも楽しかった。

2.スタートアップ法務への思い

モリハマでは、スタートアップ支援に積極的に取り組んでいる増島雅和弁護士と同部屋だった縁で、スタートアップの案件に取り組む機会に恵まれた。
スタートアップの法務は、事業の新規性から前例がなかったり、非定型的だったりして頭を使う業務が多いし、前提知識としてベンチャーファイナンスやIPOなどの実務を知っておく必要もある。
資金調達、M&A、新規事業の適法性検討、規約・契約書の作成・審査などのさまざまな案件があったが、どの案件も難しく、また、それだけにおもしろかった。

また、スタートアップだと法務専門のメンバーがいない場合も多いし、法務機能が十分でない会社も多い。そういう事情もあいまって、緊密に法律相談をしてくれるスタートアップも少なくなかった。
緊密に相談してもらえたことは、自分のことを信頼してくれて、事業に深く関与させてもらえている気がして、すごくうれしかった。
しかも、スタートアップの案件だと、自ら意思決定ができる経営層から直接相談を受けることも多い。
だから、スピード感もあるし、自分の助言が経営判断に直結する感覚があって、なおさらやりがいも感じられた。

なにより、スタートアップの案件を通じて、スタートアップの世界には、ビジョンやミッションを達成するために熱量をもって事業に取り組み、本気で社会・世界を変えようとしている人たちがいることを知った。
その中には、同世代の人たちもたくさんいる。同世代の優秀な人たちがスタートアップの世界で大きなチャレンジに取り組んでいることは、けっこう衝撃的だった。
スタートアップに関連する本を読んだり、起業家のインタビューを読んだりするようになって、スタートアップの世界に惹かれていった。

3.戦略法務への思い

また、弁護士として案件に取り組む中で、「リーガルマインドにはすごく価値があり、まだまだポテンシャルを秘めているのではないか」と感じたことも、スタートアップへの移籍の大きな動機となった。

情報技術の革新が起こり、ビジネスモデルは刻一刻と変革し、既存の法令が想定していない新しいビジネスも生まれている。
そして、想定していないからこそ、既存の法令が新しいビジネスを必要以上に規制してイノベーションを阻害する「法の遅れ」も生じている。
このような「法の遅れ」を解決するためには事業サイドでリーガルマインドを駆使する必要があり、裏から言えば、法務はそのような突破力を秘めている。
法務といえば、「事業にブレーキをかける保守的な事務屋さん」という印象も根強いかもしれないが、そのような考え方は法務の価値を矮小化していると思う。

このような思いを抱いたのは、モリハマでのさまざまな案件を通じて、適切な法務戦略を立案し、遂行することの重要性を肌で感じたことが大きい。
また、水野祐先生の「法のデザイン 」や経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」にも大きな刺激を受けた。法務にはイノベーションを加速させるポテンシャルを秘めていると確信できた。

「戦略法務」の観点から、ビジョンの実現に向けて、既存のルールを柔軟に解釈したり、あるべきルールを示して政策提言を行うなど、「法の遅れ」の解決に取り組むこと。
このような取組みは法律家としてすごくエキサイティングだと思ったし、まさにイノベーションを起こそうとしているスタートアップの中で「戦略法務」に取り組むことができればめちゃくちゃおもしろいのではないかという思いが強くなった。

4.移籍先をREADYFORに決めた理由

僕が今年7月からジョインしたREADYFORは、日本最初のクラウドファンディングサービスである「Readyfor」の運営会社で、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」ことをビジョンに掲げているスタートアップだ。
クラウドファンディングは、インターネットを通じてプロジェクトに共感する人から広く金銭的な支援を集めるしくみのことをいうけど、READYFORは、共感や応援をかけ合わせた金融の仕組みを提供することで、お金の流れを変革しようとしている。

弁護士のミッションも、リーガルマインドを駆使してクライアントの課題を解決し、クライアントが実現したい状態に少しでも近づけることだと思っている。
「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というREADYFORのビジョンは、なんだか弁護士のミッションにも近い感じがして、とても共感を覚えた。
ビジョンに共感できたことは、移籍先をREADYFORに決めた最大の理由だ。

また、READYFORは、「シェアリングエコノミー」×「金融」という、法的には未解明の部分も多い領域で事業を行っている。
資金決済法、金融商品取引法などの金融レギュレーションのほか、税制などともかかわり、事業における法務の重要性が高い。
実際、READYFORの経営陣も社内に強い法務を持つことの必要性をよく理解していて、「戦略法務」をやりたいという僕の思いを深いレベルで理解してくれた。
法務が重要な事業の構成要素で、経営陣が戦略法務の重要性を理解していたことも、READYFORを移籍先として決めるうえでとても大きかった。

5.結び

そして、READYFORに移籍して3か月。毎日のように新しいことが起こって、めちゃくちゃ忙しいけど、すごく楽しくて充実した日々を送っている。

READYFORは、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンを掲げてチャレンジを続けている。
そんなREADYFORが「やりたいことを実現できる」ための適切な法務戦略を立て、事業を加速させることが自分のミッションだと思っているし、そのためのチャレンジを続けていきたいと思う。

――――――――――――――――――――――――――――――――
長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?