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司法試験受験時代の憲法ノートから①

Twitter上で、司法試験の憲法はコスパがよいか悪いかという議論(?)があり、興味深く、また、受験時代をなつかしみつつ拝見していたのですが、個人的には、憲法が難しいことはたしかであるものの、事案分析の勘所を押さえられると、点数がグンと伸びやすい科目ではないかと思っています。

私は、受験時代は憲法は好きな科目で、おかげさまで、司法試験でも公法系が一番順位がよかったのですが(たしか9位だったはず)、自分自身大いに悩みながら勉強した感覚がありますので、今まさに悩んでいる受験生の参考になればと思い、その当時の勉強ノートをnoteに投稿してみます!
しょせん一受験生の勉強ノートにすぎませんが(それも平成24年司法試験受験時のもの)、下記免責事項もご参照頂きつつ、ご笑覧頂けますと幸いです!

けっこう分量ありまして、5部構成となります!はじまりはじまり~!

【目次】
第1 憲法上の権利・人権
 
 1.総論
 2.各論(憲法上の権利の保障根拠)
第2 防御権制限
 1.序論
 2.「制限」の規定
 3.審査基準の設定
 4.目的・手段審査
第3 作為請求権
第4 平等権

第1 憲法上の権利・人権

第1-1 総論

(1)「憲法上の権利」とは何か?

①主観的権利/客観法規範
 まず、人権条項から国家権力に対して一定の作為・不作為を義務付ける客観法規範が導かれる。例えば、政教分離規定は、国家権力に対して「政教分離に違反してはならない」と義務付ける。
 人権条項から、国民の国家に対する「憲法上の権利」が導かれる場合がある。例えば、20条1項は、国家権力に対し「何人の自由な宗教的活動を妨げてはならない」と義務付ける一方で、個人Xが、自己の自由な宗教的活動を妨げるような国家の活動をX自らの意思で排除することを認める。他方、政教分離は「間接的に信教の自由を確保しようとする」客観法規範にとどまり、Xの自由権を認めるものではない(反対説もある)。

②「憲法上の権利」
 日本国憲法が13条で国民の自由の尊重を宣言するにとどまらず、21条や22条のような個別の規定を置いたのは、自由一般から「表現」や「職業選択」を個別化して括り出し、それを「憲法上の権利」としての強い保障を享受させる趣旨である。つまり、自由一般と区別された「憲法上の権利」が観念できるのである。
 なぜ「憲法上の権利」としての強い保障を享受させるべきか=各自由の価値や各規定の趣旨は、「憲法上の権利」の保護範囲などを論ずる前提となるので、必ず押さえておく。

③「新しい人権」
 日本国憲法は、人権のカタログに列挙された個別的人権類型のみならず、時代の変化に応じて生ずる個人の新しい利益が具体的人権として個別化されることを認めているものと解され、そして、幸福追求権(憲法13条)が、個別人権を基礎づける根拠規定であるものと解されている。

④人格的利益説と一般的自由権説
 一般的自由権説は、他者の利益を害しないあらゆる行為の自由が幸福追求権の保護対象となるものと解する。
 しかし、日本国憲法は、自由一般から「表現」や「職業選択」等を個別化して括り出し、「憲法上の権利」としての強い保障を享受させている。
 とすると、「新しい人権」は、人格価値に関連付けられ、個別化されるものに限り、「憲法上の権利」として保障されるというべきである。
 そこで、「新しい人権」は、個人の人格的生存に不可欠な利益に限り、「憲法上の権利」として保護されるものと解する(人格的利益説)。

⑤私生活上の自由の制限
 判例は、「憲法上の権利」として個別化できない利益の総体として、「私生活上の自由」一般を観念し、「私生活上の自由」一般から、「個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由」など具体的な自由を引き出して、その自由を制限する国家行為の合憲性を論じている。
 憲法13条は、憲法上の権利として「新しい人権」を保障するとともに、「私生活上の自由」一般について、一定の憲法的保護を受けるべきことを保障しており、「私生活上の自由」一般から引き出された自由を制限するには、もとより実質的な合理的理由がなければならず、例えば、平等原則や比例原則に違反する制限は、違憲であるものと評価される。

(2)「憲法上の権利」の類型

①防御権
 国家の不作為を請求する権利である。
 違憲を主張する場合には、国家行為が防御権を制限したことを認定した上で、その制限が「公共の福祉」の見地から正当化されないことを論証することになる。

②請求権
 国家の作為を請求する権利である。
 違憲を主張する場合には、請求権の行使要件が充たされているにもかかわらず、国家が義務を履行していないことを論証することになる。

③平等権
 国家に対し平等に取り扱うことを請求する権利である。事案によって不作為請求権でもありうるし、作為請求権でもありうる。
 違憲を主張する場合には、他者との間で異別取扱いが生じていることを認定した上で、その異別取扱いが合理的区別として正当化されないことを論証することになる。

④補足―特定の人権条項から防御権と作為請求権の双方が導かれる場合
ア、自由権的規定から作為請求が導かれる場合 例えば、21条1項を根拠に、国民は表現を妨害する国家行為の違憲無効を主張できる。他方、国民は、同条項を根拠に、国家に対して情報の開示を請求する「知る権利」を主張できる。このように、自由権的規定から作為請求が導かれる場合もある。

イ、法律による制度形成に依拠する権利 財産権や選挙権など、その内容が法律による制度形成によってはじめて定まる憲法上の権利については、制度形成を請求する請求権と、制度を前提に取得した権利の行使の妨害を排除する防御権の双方を保障する。

(つづく)

【免責事項】
・平成24年司法試験の受験対策のために作成したものであり、当時は正確な理解に努めましたが、一受験生が作成した論証集にすぎず、誤りが含まれている可能性があることにはご留意ください。
・また、作成後の判例・学説のアップデートをしておりませんので、ご留意ください。
・その他、事実上・法律上のいかなる保証もいたしかねますので、ご自身の責任と判断でご活用ください。
・営利目的での利用は禁止させていただきます。 

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