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スマホで原稿なぜ捗るか

MacBook Airのキーボードがぶっ壊れたので仕方なくここ数日スマホで原稿を書いている。すると意外にもPCでペコペコとキーボードを叩いていた時よりも原稿が捗る。実は以前にもこういう体験をしたことがあった。一見すると非効率的にも思えるスマホ原稿はなぜ捗るのか。その理由を考えてみた。

1. スマホを見ないで済む

意味不明に聞こえるかもしれないが読んで字の如し。スマホを見ずに済む。

現代のぼくらの生活はスマホに支配されている。PCで原稿をしている間もひっきりなしに通知が来て、そのたびにスマホの画面を覗いてしまって集中力が削がれる。通知なんか来なくてもすぐにTwitterやらFacebookやらInstagramの画面を開いてしまう。そして「還らずの人」となる。

最初からスマホのメモ帳で原稿をしているとマルチディスプレイでもないからほかのアプリを起動せずに済む。結果、原稿に集中できる。

もちろんあらゆる通知は切っておいたほうが良い。これはいまさら言うまでもない仕事の基本。

2.いい具合に遅い入力速度

PCで原稿していると一文一文の表現やリズムにこだわり過ぎてしまって前に進まないことがよくある。もう1時間も原稿と向き合っているのにいまだに最初の一文をこねくりまわしている自分に気づいて絶望する。

本来はそういうディテールは後回しにしてとりあえず最後まで書く、書きたいことをすべて可視化することを優先したほうが成果につながりやすい。まず大まかな形を作ってそのあと整形する彫刻のイメージ。

そうわかっていても細かい表現にこだわってしまって前に進めないのが悲しい性。だがスマホで原稿するとこの問題が少し解消する。

個人差はあるだろうがこれはPCでキーボードを叩くよりもスマホで文字を入力するスピードのほうが遅いことに起因するのではないか(その辺の事情はデジタルネイティブだと違うのだろう)。PCだと頭に浮かんだ文章を可視化するスピードが速すぎて、その文章を書き終わった時点で次の文章がまだ頭に浮かんでいない。だから筆が止まり、可視化された一つ前の文章にこだわってしまう。

スマホだと入力速度がいい具合に遅いので脳のスピードが追いつく。ゆえに文章が途切れない。だから最後まで完走できる、という感じ。当然だが手書きならなおスムーズにいくだろう。

3.その他のメリット

書き出すまではもっといろいろあるかと思ったがこの2点で言いたいことはだいたい言えてしまった。ちなみに理由の2つめを教えてくれたのはメコン川に浮かぶ中洲の島でたまたま出会ったフランス人だった。彼もまた文章を書くことを生業にしていた。

ぼくが「手書きだとノンストップで書けるのにPCだとどうしても手が止まっちゃうんだよね」と悩みを吐露したら、すかさず「それは脳で文章を作るよりも速くタイピングしちゃうからじゃない?」とクリティカルな回答をくれた。フランス人と話すのはいつも楽しい。

スマホで原稿を書くと捗る以外にもいいことがある。世の中の多くの人はいまやスマホで文章を読む。PCに最適化された文章はスマホで見ると文字の壁のように見えてしまうことがあり、読む気を削ぐ。スマホでストレスなく読める文章の量や改行を自然と意識できるのは、スマホで原稿をすることのいい点と感じる。

あとは電車に乗ってる移動中でも原稿ができるとか、移動中にスマホで作ったメモをそのまま発展させて原稿化できるといったメリットもある。

4.仕上げはPCで

大まかな原稿はスマホで書きつつも仕上げはPCで行うようにしている。さらにそれを再びスマホで通読したり印刷して紙でも通読したりして気になる点を修正してから納品するようにしている。

同じインターフェースで作業を続けていると飽きが来て集中力が低下するように感じる。異なるインターフェースで見ることによって初めて気づくこともあるように思う。

PCで書いた文章とスマホで書いた文章とでは同じ人間の手によるものでもまったく異なるものが出来上がる気がする。ほかにもたとえばインタビューを元にした記事を作るのにテープ起こしをするのとしないのとでも違うものができるからおもしろい。

このへんのスタイルを意識して切り替えてアウトプットしている書き手は世の中にどれくらいいるのだろうか。同業者とつるむのはあまり好きではないが、一度いろいろと話してみたいテーマではある。


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