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【Appleの特許から想像する未来 第3回】AirPodsで健康状態をモニタリングする時代が来るかも!

iPhoneやApple Watchには、自動車での重大な衝突事故や室内での転倒事故を自動的に検出し、緊急電話をかけたり転倒者の位置情報を緊急連絡先にメッセージする機能が搭載されています。

「転倒検知の精度向上」についてのAppleの特許について、Techチームマネージャーの早川 輝が考察します。


今回取り上げる特許:
米国特許商標庁(USPTO)で2023年9月7日に公開された「転倒検知の精度向上」に関する特許
※本記事で取り上げるAppleの特許は公開情報に基づいていますが、実際の製品に搭載されることを保証するものではありません。技術的な可能性を検討するための参考情報としてお役立てください。

AirPodsを組み合わせて転倒検出の精度を高める

最新のApple Watchには転倒や衝突事故を検知する機能が搭載されており、この検知機能によって命を救われた事例も数多く報告されています。

この転倒や衝突の検出は、Apple Watchに搭載された加速度センサーなどの情報を機械学習によって解析していると推測されます(衝突の検知はiPhone内のセンサーデータも利用されているとされています)。

これは、Apple Watchを装着した人に転倒や衝突があったことを、なるべく確実に検知できるように精度や計測方法を設定していると考えられます。

実際に、Apple Watchが転倒や衝突を検知した場合、Apple Watchの画面には下の画面のように確認のメッセージが自動で表示されるようになっています。

AppleWatchで転倒を検知

しかし、人間の腕や手指の動きは複雑で、最新のAI技術を使ってもその多様な動きを解析することは難しいとされており、手首に装着したApple Watchのセンサー情報だけでは、転倒や衝突検知の精度をさらに高めることは困難だと考えられています。

一方で、AppleはApple WatchだけでなくAirPodsというイヤフォンを販売しており、こちらも世界中で人気のデバイスとなっています。

AirPods

AirPodsには「空間オーディオ」機能が搭載されており、装着した人の頭の角度や向きに応じて音の向きや大きさを変更することで、立体的で臨場感のある視聴体験を実現しています。

iOS14からは、AirPodsのモーションセンサーの情報を取得して、頭部の動きを追跡できる独自のアプリケーション開発も可能となっています。

今回紹介する特許は、このAirPodsのモーションセンサー情報も利用して、転倒や衝突の検知精度を向上させることを目的としています。頭部の動きは、腕や手指ほどは大きく複雑ではないため、AIを用いた転倒や衝突の検知精度の向上に寄与できるとされています。

利用者と設備の安心・安全を高める可能性

今回の記事では取り上げませんが、AirPodsに健康状態をモニタリングできるセンサーを取り付けるための特許が出願されています。

Apple Watchを普段のヘルスケアデータの管理や緊急時の転倒検知の目的でご利用されている方にとって、日常生活でAirPodsも装着する機会が増える可能性がありそうです。

私たちの考えとしては、今後精度が向上した転倒検出機能から得られる情報をアプリと連携することで、将来的により実用的なデータ解析の応用に活用できることを期待しています。

特にその効果が期待されるのが、「Personal Aile」への導入です。

個人型ウェルネスアプリ「Personal Aile」

Personal Aileではすでに介護施設でのご利用ケースも多く、ヘルスケアアプリに記録された転倒回数の情報を解析して、管理画面からご利用者様ごとの転倒の傾向を表示したり、必要に応じて警告を表示しています。

Apple Watchによる転倒検出とヘルスケアアプリに記録される転倒回数の情報は、「転倒」という事象を客観的に分析するのに重要です。

例えば、介護施設内で転倒が発生しやすい時間帯や、利用者の日常生活から転倒に繋がりやすい行動を解析する手がかりになると考えています。

今回の特許によって転倒検知の精度が向上すれば、このようなデータ解析の重要性と品質がさらに高まることが予想できます。Appleデバイスを身につけると利用者の安全・安心が守れるだけでなく、安全・安心な施設づくりにも活用できる世界に近づけることを期待しています。