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ブルーを笑えるその日まで


渡邉心結と角心菜

もしくは「8月31日の夜に」

 アン/安藤絢子(渡邉心結)は中学生。クラスでは友達となじめず、家族ともうまく行っていない。とある日、鶴亀商店で、店主の「ババ」(片岡富枝)に万華鏡をもらう。

キラキラ、クルクル

すると、いつも一人でお弁当を食べている立入禁止の場所でアイナ/佐田愛菜(角心菜)と出逢う。次第に心を通わせ、互いにかけがえのない存在になってゆく。永遠に続くかと思われた夏休みも終わりが近づき、8月31日の夜、アンとアイナはある事を実行するために学校に忍び込む。

嫌な天気

 アンは「青」を憎む。ダサいこの学校の制服、青春、こんな日なのに晴れている青い空…。
 きっかけは金魚の死。飼育をサボる男子、離れてゆく友達。

 水槽には藻が生えていた。生きているときは誰も見向きもしないのに、死んだら花を供えてもらえる。ここでは死なないと優しくしてもらえないのか。

 心と身体の「ゆらぎ」が目立ちはじめたアンをアイナがやさしくつつみこむ。
 アンとアイナの川からのジャンプは映画的跳躍だ。水に漬かりながら、アンは言葉にならぬ思いを吐露する。アイナはアンを抱きしめる。

アンタの穴はどこ? アタシがそれをふさいであげるから大丈夫

 アイナはアンにしか見えていない。彼女は昔学校の屋上から飛び降りた女子生徒なのか?
 アイナの不在時は図書館の司書の女性(夏目志乃)がアンを受け止める。彼女の正体は?
 
 8月31日の夜、RCサクセションの『君が僕を知ってる』が流れる中、二人が校舎で遊び回る場面はひたすらポップで美しい。やがて、「ダイナマイト」は爆発(?)し、アンはまたひとりぼっちになる。ジョバンニ(宮沢賢治『銀河鉄道の夜』)のように。
 9月1日、始業式の日に登校したアンは友達に

アタシ、逃げるから

 と言い残し、立ち去る。今まではアイナに連れ出されていたアンが、今度は自分がアイナを教室から連れ出す。

 また、友達に逢うにはどうしたらいいかと問うアンに鶴亀商店のババはこう言う。

 生きてりゃいいんだよ。見たくないものは見なくていいの。今は夢を見てればいいの。


起きなければ夢は醒めない。
終わらせなければ夏休みは終わらない。
なると思わなければ大人にはなれない。

キラキラ、クルクル。

ババ役の片岡富枝と監督の武田かりん




 


 



 

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