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1月14日(日)鈴座Lisa cafe〜杮落としの会〜新ツルノヒトコエ

 住吉駅にほど近く、あそか病院の目の前に鈴座Lisa cafeがオープンした。そのオープン日に林家つる子さんが独演会を行った。

つる子  お菊の皿
 
「芸が化ける」と言う事で幽霊やお化けの噺は縁起がいいとされている。このカフェやつる子さん自身が「化ける」事を願っての一席。
 
いい女なら死んでてもいい

 
物見高くて、野次馬根性の江戸っ子のなんともあさましい了見に呆れるのを通り越して笑ってしまう。
 彼らの前に初めて姿を現したお菊のおそろしいばかりの凄まじさ。つる子さんの美しいご尊顔にふるえる。
 お菊人気がバズり、10日の興行を打つようになった後のお菊の演技?!はクサくなり、オーバアクション気味となってゆく。酒気帯びのやさぐれたお菊を、つる子さんがあざとく演じた。

つる子  反対俥
 
先程の『お菊の皿』では、『反対俥』ができるかどうか試したのだという。いくら飛んでも大丈夫。
 通常は俥(人力車)屋が二人登場する。年老いた俥夫と若い元気な俥夫。彼女は後者のみにクローズアップし、爆笑を呼び込んだ。
 俥がドラム缶を飛び越える度に巻き起こる拍手と歓声。挙句の果てには川に飛び込もうとする。俥夫は入念にウォーミングアップをした後に、頭上高く手を叩く。期せずしてお客様も手を叩く。誰一人傍観者にはせず、全員が当事者だ!
 とうとうつる子さんはくるりと背を向け、私達を俥に乗せてしまう。みんなで高崎に着いた後で、つる子さんは思わぬ「おみやげ」を用意していた。

ー仲入りー

つる子  おかみさん目線の芝浜 
 勝五郎が芝の浜で五十両の入った財布を拾うはるか以前、お光と勝五郎が出逢う場面から物語は始まる。勝五郎が商うアジの眼と勝五郎自身の眼の綺麗さ。ここにお光は惚れたのだ。これ以降、眼が物を言う。
 所帯を持ってからしばらくして、勝五郎の怠け癖が出始める。その眼は濁りだす。
 勝五郎が財布を拾い、お光は大家のもとに相談に訪れる。

 こんな人とはもう一緒にいたくない。
 財布など拾って来なければ良かったのに。

 お光は勝五郎の眼の濁りを感じていたのだ。
 
 もういっその事、夢だったら良かったのに。

 大家はお光のこの発言を重く見て、「夢にしちまえ」とけしかける。

 浜で財布を拾ったと思い込んだバカな亭主は酒をやめて商いに精を出す。やがて棒手振りから一軒の店を持つ主人となる。彼が取り戻した眼の輝きを見て、お光は本当の事を打ち明ける決心をする。
 
 あなたが喜んで仕事をしてくれればいい。
 アタシお金なんか要らない。
 
 
胸のうちを打ち明ける女房を演じるつる子さんの眼に光が浮かぶ。やがてそれは綺麗な水となり、彼女の頬に轍を描く。つる子さんは涙を拭おうともせず、物語を進める。告白を終えて、夫婦もつる子さんもお客様も泣いていた。
 この「つる子の芝浜」は大晦日を越え、お正月に幸せな結末を迎える。つる子さんの眼と心の綺麗さに涙を止められない、新春の午後。





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