計算式の裏を見通す逆転の発想
日経電子版の記事【恵那川上屋の栗きんとん、農家潤う逆転の価格】は、デフレの時代に利益確保を名目に原価低減を図ることなく、逆転の発想を貫いた企業に関するリポートです。
デフレの時代に、価格競争を勝ち抜くには、中途半端は許されず、徹底してその道を突き進むか、価格競争を超越したビジネスモデルを築くしかなさそうです。
前者の場合、単純に計算式の上からは、原価を低減するような施策を採る事が常道のようにも思えますが、実際に原価を低減しようとしても、製造工程の効率化や、テクノロジーのコモディティ化を上回るスピードで価格の下押し圧力がかかり、プロダクトの品質の悪化を招いて、元も子もなくなる蟻地獄のようなリスクを抱えている事も否めません。
記事のケーススタディーでは、後者の価格競争を超越したビジネスモデルを築く道を選択し、逆転の発想で、仕入原価を上げる=農家からの買取価格を上げることによって⇨地元農家と一緒になって研鑽を積み⇨農家のモチベーションを向上させることで⇨原料の品質を向上させ⇨そこから様々な好循環を生起せしめて⇨価格競争から差別化された商品(20年以上小売価格はほとんど変えていない)を生み出しているのです――
▶2つの選択肢
デフレの時代
⇩ ⇩
【選択1】 【選択2】
価格競争を超越する 価格競争を突き進む
⇩ ⇩
【逆転の発想】 【オーソドックスな発想】
☆原料の買取価格を上げる ★原価低減の施策を打つ
⇩ (価格交渉・取引先変更・製造工程の
取引先と協働で研鑽・ 効率化、など)
モチベーション向上 ⇩
⇩ 加速するコモディティ化
原料の品質向上 ⇩
⇩ プロダクトの質の悪化リスク
歩留まりの向上 ⇩
⇩ 【数多の類似商品に埋もれてしまう商品】
粗利の改善
⇩
【差別化商品】⇦*廃棄されていた栗を甘露煮にして大きな利益
を出すリデュースの取り組みも後押し。
デフレなどの苦境に陥った時、コモディティ化の罠にはまるか、差別化に成功するかの分かれ目は、単なる数字合わせに近い施策を打つのではなく、利益を導き出す計算式の裏側を見通して、人的リソースの力を最大限引き出し、プロダクトの質を高める、という基本中の基本でした。一見『逆転の発想』に見えるものが、実は『王道』だったのです。
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