AIリクルーターのUX(ユーザーエクスペリエンス)~AIとの会話に張り合いありますか?~
日経電子版の記事【日航、AI先輩社員がOB・OG訪問に応対】を読んだ第一印象は、「AIと会話しても張り合いなさそうだな~。まして、就活だし……」というものでした。しかし、AI化は時代の潮流でもあり、『AIリクルーター』のシステムには、意外なポテンシャルがあるのかも知れません。
まず、『AIリクルーター・システム』を採用する企業にとってのメリット・デメリットを思い付く限り列挙してみると――
▶企業にとってのメリット
①『接点拡大』・・・『AIリクルーター』を活用する事で、就活生との
接点が(時間的・場所的・人員的に)大幅に拡大し、
優秀な人材の獲得に繋がる。
②『情報発信力強化』・・・採用サイト・SNSに加え、新たな情報発信源
となる。
③『双方向コミュニケーション』・・・双方向コミュニケーションなので、
就活生の情報を収集でき、発信する情報の精度を
向上できる。
④『見える化』・・・人間のリクルーターからリポートを受けるのと違い、
AIであるから、瞬時にデータの見える化・解析も可能。
⑤『生産性向上』・・・全てを人手で賄うのと違い、より絞り込んだ採用
活動が出来るようになる。
⑥『イメージの統一』・・・人間のリクルーターだと、個性や考え方の
微妙な違いなどから、人によって違った会社
イメージが伝達されてしまうリスクがある。
▶企業にとってのデメリット
①『誤解』・・・AIの精度が十分でないと、誤った情報発信・ピントの
外れた情報発信などが発生して、就活生に誤った会社の
イメージを植え付けてしまうかも知れない。
②『敬遠』・・・AIで会話すること、AIを採用に活用する事に抵抗のある
就活生、会話がデータとして残ることを嫌う就活生からは
敬遠されるリスクあり。
それでは、就活生にとって、『AIリクルーター・システム』のUX(ユーザーエクスペリエンス)には、どのようなメリット、デメリットがあるでしょうか(企業にとってのメリット、デメリットの裏返しとも言える)――
▶就活生にとってのメリット
①『気軽さ』・・・いつでも、どこでも、相手の予定を気にせずに、質問・
会話できる。
②『双方向性のある情報源』・・・新たに、疑問点や悩みをぶつけられる
情報源ができた。
③『公式見解』・・・人間のリクルーターの場合と違って、相手の言う事を
個人的な見解の混ざらない会社の考えと受け止め
られる。
▶就活生にとってのデメリット
①『疑念』・・・AIの発言を真に受けていいのか、誤作動ではないのか、
どうしても疑念が残る。
②『敬遠』・・・AIとのチャットボットは記録が残るので、本音の質問が
しづらい。質問内容が評価対象になるのでは、との懸念も。
③『誤解』・・・AIに自分の発言が誤解され、会話が変な方向に流れて
しまう可能性。しかも、それがデータとして残る。
④『阿吽の呼吸』・・・人間のリクルーター、OB・OGなら聞きにくい事も
質問でき、しかも、その事を会社に報告しないで
くれる場合もあり得る(OB・OGが、率直に会社の
抱えている課題、マイナス面を話してくれる)。
このように見てくると、何よりも肝心な事は――
AIリクルーター≠OB・OG
――『AIリクルーター』はOB・OGとはノットイコール、決して同じ存在にはなれない、という事です。この点を誤解すると、会社にとっても、就活生にとってもいい結果は得られそうもありません。『AIリクルーター』と割り切って、その範囲で活用する、賢い使い方が必要そうです。
その上で、『AIリクルーター・システム』の課題、可能性、ポテンシャルを探ってみると――
(1)IDを入力しなくてもシステムを利用できる機能
データは残るにしても、個人が特定されなければ使ってみよう、という就活生は多いかも知れません。なりすましのリスクがないとは言えませんが、検討する価値はありそうです。
(2)キャラクターを選択できる機能
AIが演じる仮想先輩社員は、一つの統一イメージで一つのキャラクターにするよりも、最低でも、『男子・女子』、できれば『年配社員・若手社員』、『職種別』、さらには経営トップ本人のキャラクターなどがあると、さらに豊かな情報発信・情報収集が出来ると考えられます。女子は女子にしか、男子は男子にしか聞けない事、聞きにくい事もあります、たとえ相手がAIでも。
(3)次のステップへの予約機能
せっかくチャットボットを用意しても、次のステップ(例えばリアルのOB・OGとの面会予約)への導線が組み込まれていないと、その場限りで終わってしまう可能性があります。顔採用やビデオ面接など最新の動向との接続も考えられます。
(4)アンケート機能
チャットの終わりに、『AIリクルーター・システム』に関するアンケートを挿入すれば、AIとの会話に不安を持っている就活生のストレスを軽減できるのではないでしょうか?AIに誤解されたと思った就活生は、「このシステムはあまり上手く機能していない」と意思表示することができます。
(5)簡易判定機能
チャット終了後に、就活生の『熱意』等をAIがどう受け止めたか判定を表示する事で、逆に『AIリクルーター・システム』の信頼度を担保できるのではないでしょうか?会話の評価を提示しないよりもクリアなイメージになります。あるいは、チャットの内容は評価に影響しない、と謳うかです。
(6)心理分析機能
会話は心理(感情)です。チャットボットが高い精度で機能し、正しく就活生を判断できるためには、会話分析などによる心理の解析が高い精度で実行されなければならないはずです。感情を認識するエモーションAIなどの精度向上が期待されます。
――まだまだあるかも知れませんが、以上のようなことから、『AIリクルーター・システム』は、就活生の心理に寄り添い、その心理を高い精度で把握できるようなシステムに育てられれば、採用活動の強力なツールになることは間違いないと思われます。
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