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デジタルトランスフォーメーションの要点とは何か?

 消費の対象がモノからコトへと比重を移していく、商品(モノ・サービス)に今までにない全く新しい価値が求められる、現在進行形の第4次産業革命の時代に、最終的な商品のユーザーの体験=UX(ユーザーエクスペリエンス)を見極め(最大化)、価値創出(イノベーション)を達成するには、AIとデータを車の両輪としたデジタルトランスフォーメーション(DX)が不可欠な事は言うまでもありません。

 ……ですが、実際には、どうやってDXを推進していけばいいのか、逆に、ある企業がどの程度DXにアプローチできているか見定めるにはどこを見ればいいのか?『DXの要点とは何なのか』自社に置き換えて考えるヒントがこの記事【チェーン店の時代、終結 ファストリ柳井氏が語る未来】にはあります。このインタビューは、文字通り『デジタルトランスフォーメーションの提要』になっていると思います。


 特にこのインタビューの冒頭部分は、DXの核心を突いていると考えられ、この部分だけでも要点が目白押しです――

「これからは情報産業とサービス業だけになる。小売業もなくなる。すでに製造から小売りまで一体化したがそれでは足りない。デジタル化は消費者個々人の嗜好を生産に直結できる可能性を持つ。製造から顧客まで、川上から川下までをつなぐエンドtoエンドの姿に変わる必要がある。電子商取引(EC)と小売業が融合し、存在意義のある企業だけが生き残ることになる」
「顧客のためになっていない企業は淘汰される。それが世界レベルで進む。その中心概念になるのがグローバル化とデジタル化だ。ECと小売りがすべて融合したような企業体を目指す」

 

 上記の部分も含めて、DXの要点と思われるものを私なりに抽出してみると――


▶DXの要点①~情報とサービスを押さえる~

 今の時代に商品が売れるためには、その商品が、単なるモノではなくて、コトを実現するものであることが求められます。つまり、モノを提供するという事は、限りなくそのモノによって体現できるサービスを提供する事に近付いていくと思われます。

 そのようなサービス、消費者の潜在的なニーズを捉えた、今までにない全く新しい価値を創出するイノベーションが重要だとしたら、イノベーションの入口である『情報』と出口である『サービス』を押さえる事は極めて重要です。

 この場合の『情報』は、今までにない価値の創出が目的ですから、消費データ・生活データなどの過去データから『そこにはないコト』=『消費者が不満に思っているコト』=『消費者が潜在的に求めているコト』を想像しなくてはならず、消費者との双方向での情報交換なども必須だと考えられます(ユーザーコミュニティーなど)。

 企業の組織をDXするに当たっては、情報の収集と最終的なサービスの提供のあり方に力点を置く必要がありそうです。


▶DXの要点②~パーソナライゼーション~

 UX(ユーザーエクスペリエンス)の最大化の究極の形は、ユーザーが欲しいと思った商品(モノ・サービス)が、ユーザー一人ひとりの嗜好などに合わせてパーソナライズされる事ではないでしょうか。例えば、ユーザーが自分でデザインした服が商品として届いたり、自分の肌環境・肌質にぴったりのスキンケア商品などです。それを実現できるのがデジタル化、ICT(情報通信技術)だと考えられます。


▶DXの要点③~End-to-End~

 真にユーザーに寄り添い、UXの最大化を図るのであれば、製造から顧客まで、川上から川下までをつなぐようなEnd-to-Endをデジタル化によって実現し、顧客接点の密度を高める必要があると考えられます。


▶DXの要点④~ネットとリアルの融合~

 『デジタル』なものと『アナログ』なものは、ユーザーを出発点とする多様なドリブン(使いやすさ・楽しさ・面白さetc.)によって、社会のあらゆるフィールド(分野)の、あらゆるレイヤー(階層)に渡って融合が進行していくと考えられます。そもそも、ユーザーにとって、ネット(EC)とリアル(店舗)は対立するものではなく、使い分けたり、使い合わせたりするものです。

 ネットとリアルの関係をデジタルによって最適化し、ネットとリアルにまたがったUXを提供できる企業が求められていると考えられます。


▶DXの要点⑤~リアル店舗はパーソナライズされた情報を売る~

 リアル店舗の最大の強みは、コミュニケーション・スキルのある販売員の専門知識という信頼感だと思います。あまりに品揃えの豊富なECサイトではどの商品を選んでいいか分からなくなることもあり、自分にぴったりの商品というパーソナライズされた情報を提供してくれるリアル店舗は、パーソナライズされた情報を売っていると言って過言ではありません。

 お客との会話を通して収集される情報は、イノベーションにとってきわめて貴重なデータとなると考えられます。


▶DXの要点⑥~ピラミッドではなくフラットな組織~

 イノベーティブなアイデアが決裁ルートの途中で消えてしまわないようなフラットな組織にしないと、DXは進まないと考えられます。


 DXの要点という事では、上記以外にもAIとの協働のあり方など様々な要素があると思いますが、このインタビュー記事で特に印象に残ったことを記しました。いつも感じる事ですが、各界のリーダーのインタビュー記事には、ほとんど無駄な所がなく、貴重なビジネスのエッセンスがたっぷり詰まっていると思います。



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