『接客』とは何か?
NIKKEI STYLEの記事【顧客連絡「スピード命」 ベンツ販売、5年連続優秀賞 ヤナセ 高津絵美さん】は、改めて『接客』とは何か、その本質的なものを考えさせてくれます。仕事としての『接客』には、提供するサービスの一部としての『接客』(飲食店・ホテルなど)と、販売のための『接客』(小売店・デパートなど)とがありますが、ここでは主に後者の販売のための『接客』について考えてみたいと思います。
そもそも、『接客』とは、広く一般的には「客をもてなす」ことであり、その目的は、歓迎のため、感謝のため、重要な会合のため、会えた嬉しさを伝えるため、等々実に様々です。
それでは、販売のための『接客』の目的は何でしょうか?――文字通り「売るため」なのでしょうか?
『売るための接客』という側面が前面に出てしまうとすれば、それは、顧客第一ではなく、売り手主体の発想ですから、いろいろなひずみが出て来る事は明らかです――
▶『売るための接客』の弊害(極端な場合も含む)
① 押し売り。
② 押し付けがましい。
③ 買うように誘導する。
④ メリットを大げさに言う。
⑤ デメリットに触れない。
⑥ お客の知りたい事に答えていない。など
このような『売るための接客』は、その「売らんかな」の姿勢、販売員が自分に向き合ってくれていないことが、自然とお客に伝わってしまって、お客の信頼を得ることができないというリスクがありそうです。たとえその場は販売することが出来たとしても、後からその商品に対する不満が出てくれば、その顧客は離れていってしまうでしょう。
つまり、『売るための接客』の最大の問題点は、「顧客が完全には納得せずに購入している」という点にありそうです。
『接客』の目的が「売るため」でないとしたら、一体何が目的なのか、ただただ無目的にお客と接していてもトップセールス(社内一の営業成績を上げている営業担当者)にはなれないはずです。ここで改めて、記事の事例を整理してみると――
▶記事の女性営業担当に見る『接客』の流れ
(1)基本的なスタンス
①『会話を成立させる』・・・一方的なセールストークではなく、お客の
考え・思い・悩みを吸い上げて、それに応えられるよう、まずは、
会話として成立させる。
②『相手に合わせる』・・・人によってウマが合う、合わないは千差
万別。相手にとって、お客にとって話しやすいような人間に成り
切って、声のトーンや話し方も変える。
(2)顧客に寄り添う時系列
『スピード感』・・・初来店時・・・翌日までに着くよう手書きでお礼の手紙。
⇩ ⇩
⇩ 2回目以降・・・1週間以内に連絡して反応を探る。
⇩ ⇩
『継続』・・・商談がまとまらなくても・・・年に数回の電話・手紙で車の
⇩ ⇩ 調子などへの心遣い。
⇩ ⇩
『信頼感』・・・・・・・成約
この事例から浮かび上がってくるのは、双方向性のあるコミュニケーションとしての『会話』を、『スピード感』と『継続』で繰り返していく中で、『信頼』が醸成され、『信頼』によって裏打ちされ蓄積された情報によって、お客が、納得して買う決心、何を買うかの決心へと辿り着く、『欲しいモノが明確化』するプロセスです。
この事例を通して、販売のための『接客』の目的とは、お客が『欲しいモノを明確化』するのを手助けすることではないか、と思えてきました。
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