ネット動画CMの描くUX~考えて買うか、共感して買うか~
日経電子版の記事【ネットCM止めさせるな! 冒頭でつかめ】によれば、右肩上がりに市場の拡大しているインターネット広告の中でも、特に視聴型広告であるネット動画CMの伸びが著しいとあります――
電通などが18年3月に発表した調査によると、17年のインターネット広告費のうち動画広告は全体の約1割を占め1155億円。18年は17年比約40%増の1612億円に拡大すると予測していた。
そのような躍進のキーとなったネット動画CMの強みとは何なのか、記事などから整理すると――
① 出稿が低コストである。
② ①ゆえに、制作に凝る余地がある。
③ スマホの普及、そして、SNSの隆盛によって、
ネット上で即座に話題化しうる。
――手軽で、効果も大きいネット動画CMですが、TVCMと決定的に違うのは、ネット動画CMにはスキップボタンの機能があって、スキップボタンが表示されていれば、ユーザーはCMを止めて見ないで済ませられる事です。したがって、ユーザーがCMを止めないで最後まで見続けるようにするためには、そのCMがユーザーにとって価値あるものである事を納得させる必要があります。
いくら長尺化しているとは言え、短い時間にCMの価値をユーザーに納得させるには、どうしたらいいのでしょう――
① まず、記事にもあるように、スキップボタンが押せるようになる
までの出だしのほんの数秒間に、ユーザーの心をキャッチする
インパクトが必要だと考えられます。そのインパクトによって、
スキップボタンの存在を忘れさせるのです。【キャッチ】
② 次に、最後までユーザーがスキップボタンを押さないで見続ける
ためには、最初のインパクトで始まったCMのストーリーに
ユーザーを引き込むだけの物語性、ストーリーテリングが
必要です。ネット動画CMには、消費を促すという目的いかんに
かかわらず、それ単独でのエンターテインメント性が求められ
そうです。【ホールド】
③ しかし、それだけでは、単なる寸劇で、消費を促すことには
繋がりません。CMの対象である商品(モノ・サービス)への共感を
獲得できる内容が盛り込まれてなくてはならず、それには、その商品
によってもたらされるであろうUX(ユーザーエクスペリエンス)を
見極め、巧みに描き込む必要がありそうです。【エクスペリエンス】
潜在的に話題化しうるポテンシャルを持ったネット動画CMが、実際に話題化するためには、そこで描かれるUXがどれだけユーザーの共感を得られるかにかかっていると考えられます。その商品を使う事によって得られる体験のイメージがユーザーの心に響いて、『気付き』(=こんなのがあったんだ、=探していたのはこれだ、=これがあれば解決できる、等々)となることが必要です。
このようなCMのあり方は、『商品の特徴』を売り込むのではなく、『商品の体験』を見せるのだと言えます。『商品の特徴』を売り込まれたユーザーは、『考えて購入』となりますが、『商品の体験』を見たユーザーは、『感じて購入』することになります。共感さえ得られれば、後者の方が『購入』に直結していると言えるでしょう。このようなCMは、作り手自身が、ユーザーに寄り添い(ユーザーの立場で考える)、ユーザーに成り切らないと(ユーザーの立場で感じる)、生まれてこないのかも知れません。
【ネット動画CM】
キャッチ
⇓
ホールド
⇓
商品の体験(UX)を見せる 商品の特徴を売り込む
⇓ ⇓
気付く(共感する)ユーザー 考えるユーザー
⇓ ⇓
購入までの距離が近い ⇓ 購入までの距離が遠い
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?