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女性客獲得に見る『ベネフィットの方程式』

 日経電子版の記事【QBハウスに女性客 「ちょいカット」の新市場】は、『男性客向けと考えられてきた特徴=低価格+短時間+(立地などの)利便性+ヘアカットのみ+予約不要』のQBハウスが、新規に女性客の獲得へと動いているというリポートです。そこでは、一体何が起きているのでしょうか?


 まず、『人手不足』の深刻化という大きな課題があります。記事にあるように、QBハウスのような『薄利多売』のビジネスモデルにあっては、『人手不足』という環境が業績を直撃します。『欠員によるチャンスロス』によって『多売』が困難となり、『賃金上昇によるコスト高』によってますます『薄利』となってしまうのです。

▶『人手不足』の方程式

 『薄利多売』のビジネスモデル✖『人手不足』の環境
=『欠員によるチャンスロス』+『賃金上昇によるコスト高』
=『売上』にブレーキ+『経費』の上昇
=業績に極めて大きなマイナス要因


 つまり、『人手不足』の解消が喫緊の課題であり、その為には『賃金UP』などの待遇改善が必要です。問題は、その原資をどこに求めるかであり、それは、『値上げ』と『売上UP』ということになります。特に『売上UP』については、「鶏と卵」ではありませんが、確保した人員によって確実に売上が伸長するような新市場が必要です。値上げして人手を確保したものの売上が伸びなければ、経費倒れに終わってしまいます。

 QBハウスの場合は、『値上げ』については、競合の少ないビジネスモデルなため代替が低く抑えられ、『売上UP』については、女性客の開拓に活路を見い出そうとしています。

▶『人手不足解消』の方程式

 『人手不足』の解消
=『賃金UP』
=『値上げ』+『売上UP』
=『値上げ』による客数減は低いレベルに抑えられるか
+女性客の獲得による『売上』UP


 ここで問題になるのが、『女性客の獲得』であり、『女性客のニーズ』と『サービスのメリット』をどう繋げるかという課題です。『女性客のニーズ』を見極め、自社の『サービスのメリット』がそれに応えられるなら、女性客に来店を躊躇させるような『デメリット』を取り除いていくのです。

 ここで見い出された『女性客のニーズ』が、高額な美容室に行くほどではない、次に美容室に行くまでの間の微調整、『ちょいカット』というニーズでした。QBハウスのサービスが持つ『低価格+短時間+(立地などの)利便性+ヘアカットのみ+予約不要』というメリットは、見事にこれに応えています。

▶『ニーズ』と『メリット』のマッチング

 『ニーズ』=『ちょいカット』
≒『メリット』=『低価格+短時間+(立地などの)利便性+
        ヘアカットのみ+予約不要』


 顧客のニーズとサービスのメリットが繋がったので、後は、女性客に来店を躊躇させるような『デメリット』の除去です。記事からは、女性客が敬遠するような要素を取り除き、逆にストレスフリーに来店できるような店作りの施策・要素として、大きく3つの点が指摘できます――

▶女性客がストレスフリーに来店できる店作り

① 女性が入りやすい木目調のおしゃれな内外装

② 採用するスタイリストは半数以上を女性に。

③(店の施策ではないですが)『ちょいカット』などの口コミ
 ⇨一般的にはSNSによる情報発信の重要性。


 このようにして達成されたのは、次に美容室に行くまでの微調整としての『ちょいカット』が『低予算』+『時短』で実現する満足感、という大きなベネフィット(顧客の得る本質的な利益)です。

 そして、満足感、ベネフィットが大きければ大きいほど、その新市場は、大きなブルーオーシャンという事になります。

▶『ベネフィット』の方程式

 『ベネフィット』=『ちょいカットの満足感』⇨『新市場』
=『デフォルトの体験』+『メリット体験』ー『デメリット体験』
=『髪のカット』
+『低価格+短時間+利便性+ヘアカットのみ+予約不要』
ー『男性的なイメージの内外装』ー『男性ばかりのスタッフ』

 

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