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スモールマスという名のブルーオーシャン

 日経電子版の記事【黒にんにくメーカー、自宅で手軽に熟成 臭いも軽減】に登場する「黒にんにくメーカー」は、どの位の大きさの需要があるか、その市場規模は別として、黒にんにくファンにとっては、そのニーズにささるような注目のプロダクトであるに違いありません。この記事は、改めてニーズと市場との関係について考えさせてくれます。

  


 そもそも、ユーザー一人ひとりの細分化された体験の中にニーズを見い出さなくてはならないコト消費の時代、第4次産業革命の時代にあって、『ニーズ』のあり方そのものが大きく変わってきているのではないでしょうか?

 一人ひとりのユーザーに焦点を当ててきめ細かに対応していこうとするメソッドは、最初から量産型の『マス市場』に繋がるようなニーズを模索するメソッドとは根本的に異なっています。そして、従来は、そのような細分化されたニーズから導き出される市場を『ニッチな市場』、隙間として捉えていた訳ですが、むしろ、現在は、『マス市場』そのものが希薄化して来ているとも考えられます――『マス市場』と『マス市場』の隙間に『ニッチな市場』があるという構造ではなくて、多数の『スモールマス市場』(=マスではないものの一定の規模の見込める市場)が並び立っているような構造です――。

▶『ニーズ』のあり方
(従来)マス市場+ニッチな市場+マス市場
   ⇩
(現在)スモールマス市場+スモールマス市場+
    スモールマス市場+・・・



 ニーズがこのようなスモールマスに細分化されていくという事は、一方で、その為のマーケティング、商品開発、生産体制などがきめ細かな対応に即したシステム(効率化・自動化など)になっていることが要求されている、という事です。そして、そのようなシステム、プロセスは、昨今の技術革新のもたらしたイノベーション・アクセラレータによって、少なくとも技術的にはコストに見合ったものとして構築されうる段階に達しつつあるのではないでしょうか――

▶プロダクトが誕生する過程の効率化・自動化

①『ニーズの把握』・・・ビッグデータ解析など・・・SNS・IoT・AI

②『研究』・・・AIによる研究の自動化・・・AI

③『設計』・・・コンピュテーショナル・デザインなど・・・AI

④『生産』・・・3Dプリンティング・スマート工場・コボットなど
               ・・・AI・IoT・ロボティクス・センシング

⑤『広告』・・・SNS情報発信・比較的低コストのネット広告・・・AI
      ・動画広告のAI自動作成など

(付記:AIによる研究の自動化については、日経電子版の下記の記事が参考になります。)



 コト消費が主導する第4次産業革命の時代にあって、ユーザーのニーズにきめ細かに対応していく革新的なテクノロジーをいち早く導入し、スモールマスなニーズにささるプロダクトを生み出し続けることは、きわめて重要だと考えられます。

 何故なら、コト消費の核をなす『体験』は、SNSなどを通して拡散し、共感の輪が広がることで、いつ何時、そのニーズがスモールマスからマスなものへと拡大、ヒットするとも限らないからです。コト消費の時代のヒットとは、最初は一部のスモールマスなニーズにささる所から始まるものなのかも知れません。スモールマスこそがブルーオーシャンなのです。



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