情報の収集と評価~決定の成否を分けるもの~
日経電子版の記事【行動経済学で考える「非合理な投資」(投信観測所)】は、改めて、心理的なものが決定の成否を左右している事を考えさせてくれます。
この記事を読んでつくづく思うのは、決定の材料となる情報の収集と評価がいかに重要であるかという事です。つまり、『収集できた情報の質と量の評価』と『収集できなかった情報の質と量の重要度』によって、決定の成否が決まってしまうのです。
▶決定の成否
『収集できた情報の質と量の評価』
⇩ ⇩ ⇩
過大評価 正当評価 過小評価
⇩ ⇩ ⇩
『収集できな ⇨大・・・・・・・①失敗 ②失敗 ③失敗
かった情報の ⇨中・・・・・・・④失敗 ⑤ボーダーライン ⑥失敗
質と量の重要度』⇨小・・・・・・・⑦失敗 ⑧成功 ⑨失敗
(註1)①③④⑥⑦⑨のケースでも、推論の過程が間違っていても、偶然に
成功する場合はある。
(註2)②⑤⑧のケースでも、偶発的・突発的な事態の発生で成功したり、
失敗したりする場合がある。
上記の『決定の成否』表は、いくぶん模式的で例外的なケースもあると考えられますが、考えを整理するのには使えそうです。ポイントは――
▶成否のポイント
(1)『正しい評価の重要性』・・・収集できた情報の量が十分で正当に評価
できた時だけ、成功の可能性が高まる。
(2)『情報の質・量の重要性』・・・収集できなかった情報の質または量が
大きいと、成功の可能性は低まる。
(3)『過大評価・過小評価のリスク』・・・どんなに良質な情報を収集でき
ても、それを正当に評価できず、過大または過小に評価してしまうと、
失敗のリスクが高まる。
(4)『成功の条件』・・・十分な質・量の情報を収集でき、その情報を正当
に評価できた時、成功の最低条件が整う。
ここで問題となる『過大評価』と『過小評価』こそが、今回の記事で指摘されている心理的要因と繋がってきます。そして、過大評価や過小評価が発生する原因としては、この『心理的要因』と理論的な筋道が間違っていた、考え方が間違っていたことが原因の『論理的要因』が考えられます。
▶評価の心理的要因と論理的要因
心理的要因
⇩ ⇩ ⇩
過大評価 正当評価 過小評価
⇩ ⇩ ⇩
⇨過大評価・・・「超積極的」 「論理的過誤」「心理的抑制」
論理的要因⇨正当評価・・・「心理的促進」「正当評価」 「心理的抑制」
⇨過小評価・・・「心理的促進」「論理的過誤」「超消極的」
このような状況から浮かび上がってくる心理的要因の影響は――
▶心理的要因の影響
(1)『心理的バイアス』・・・論理的に評価されたものは、心理的な
フィルターにかかって、過大評価され決定が促進されたり、過小評価
され決定が抑制されたりする。心理的バイアスをコントロールできない
と、正しい決断が下せない。
(2)『偶然と必然』・・・論理的な過誤によって過大評価されたり過小評価
されたりしても、そこに心理的バイアスが逆に働けば、決定が成功に
終わる場合がある。例えば、論理的に過大評価されたものが、心理的に
過小評価されて中立となれば、誤った決定を回避でき、論理的な過誤を
正すことができるかも知れない。心理的なバイアスは、見方を変えれば
『直感』とも捉えられ、論理的過誤による破綻を回避するブレーキとも
なりうる。よって、心理的なバイアスは必ずしも悪いものではない。
(3)『最悪のケース』・・・心理的要因と論理的要因の最悪の組み合わせは
過大評価・過小評価のベクトルが同じ方向に働いた『超積極的』状況
と『超消極的』状況と考えられる。大きなロス、大きなチャンスロス
に繋がりそうだ。
こうしてみると、改めて、投資はもとより、仕事上の決断から日常的な判断に至るまで、正しい評価を下すことの難しさを感じます。自分の下す評価の論理的な正しさ、そして、心理的に『自信過剰』から過大評価していないか、『リスク回避心理』から過小評価していないか、時には身の助けにもなる心理的要因とうまく付き合いながら研鑽を積む必要がありそうです。
▶ 正しい評価(決定)
=十分な質・量の情報+論理的な正しさ+心理的な
安定
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?