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ナイキ「House Of Innovation 000」に見るリアル店舗の未来像

 日経電子版の記事【レジ待ちなし、試着も楽々 ナイキが変える店舗体験】でリポートされているニューヨーク5番街に2018年11月にオープンしたナイキの「House Of Innovation 000」は、リアル店舗の未来像として、とても参考になる事例だと思います。



 記事からは、「House Of Innovation 000」が、(1)デジタル化による面倒な買物プロセスの簡略化、(2)リアル店舗にしかできないコトへの注力、そして、(3)購買情報に基づく品揃えの個店対応という3つの施策により買物体験の最大化を実現しようとしている事が分かります。

▶買物体験の最大化

(1)デジタル化による面倒な買物プロセスの簡略化~「NIKEアプリ」~
  ① アプリでチェックインすることで、様々なサービスが受けられる。
  ② アプリで試着したい商品の値札のバーコードやQRコードを
   スキャン⇨アプリ上にその商品が表示⇨試着希望のボタンを押す⇨
   スタッフが試着室まで持ってきてくれる
  ③ 商品のバーコードをスキャン⇨「すぐに買う」ボタンを押す⇨決済
   完了
⇨自分でハンガーを外して袋に入れ持ち帰る。
  ④ マネキンのコーディネート一式をQRコードで一括スキャン可。

(2)リアル店舗にしかできないコトへの注力
  
① シューズ・アパレルのカスタマイズができるフロア。
  ② スポーツに関する相談にアドバイスをもらえる。
  ③ 試着室で「ヨガスタジオ」、「インドアジム」、「ナイトラン」
   などのシチュエーションに合わせたライティングを試せる。
  ④ スタッフのフレンドリー(おもてなし)。

(3)購買情報に基づく品揃えの個店対応~「スピードショップ」
    地域の消費者が買いそうな商品だけを集めた売場。



 リアル店舗の弱点である試着依頼や決済などの『面倒なプロセス』をデジタル化によってストレスレスなものに変え、逆に、カスタマイズやアドバイス・試着・接客といった『リアル店舗にしかできないコト』を磨き上げることで、買物体験の最大化を図っている、ある意味とても分かり易い、スポーツブランドらしい明快な施策だと思います。

 そして、このようにリアル店舗における買物環境を整えた上で、顧客と商品が紐付けされた購買情報に基づく品揃えをすることで、最も肝心な、地域に根差して、顧客が自分に合った商品が買える店作りをしている点が、『個店対応』というもう一つのポイントではないでしょうか。

 『面倒なプロセスのデジタル化』、『リアル店舗にしかできないコトへの注力』、そして『購買情報に基づく個店対応』の3つの施策は、輝きを失わないリアル店舗の未来像へと続く道標だと思います。



(追記:購買情報、ID-POSデータの重要性、特に販売数量が少なくてもリピート率の高い商品の重要性については、下記の拙稿で考察しています。)


 



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