AIショッピングアドバイザーの時代

 この記事【セブン、音声AIで弁当注文 グーグルと連携】を一読、いよいよ音声AIによる商品注文(モノ・サービス)という行為が、ごく普通のものになってきた感がありますが、あれこれ考えているうちに、これは想像以上に画期的なことではないかと思えてきました。

 ポイントは、この注文方法が、音声AIとの『会話』による注文だという事です。あくまで一般論ですが、『音声AIとの会話』というUI(ユーザーインターフェース)は、人が機械に一方的に指示するだけでなく、機械の側、AIから提案、アドバイスが出来るという事です。『音声AIとの会話というUI』は、会話を通して顧客のUXを最大化できる可能性を秘めている、という事です。 

 

そして、その効果を最大限発揮できるフィールドが、『リアルでのショッピングで発生するストレス』の回避だと考えられます。まず、考えうる『リアルでのショッピングで発生するストレス』を整理してみると――

①時間のストレス・・・時間がかかる・時間がない……②場所のストレス・・・遠い・面倒な場所にある・交通のアクセスが悪い……③経費のストレス・・・交通費が馬鹿にならない……④労力のストレス・・・重い・暑い・寒い・天気が悪い……⑤混雑のストレス・・・買物が困難・雑踏が苦手……⑥品切れのストレス・・・「品切れしてる!」……⑦欲しいモノが見付からないストレス・・・「う~ん、どうもイメージと違うんだな~」……⑧商品があり過ぎて絞り込めないストレス・・・「何だかいっぱいあり過ぎて、どれを選んでいいか分からない」……⑨押し売りのストレス・・・「何だか、押し付けがましいな~」「ほっといてくれないかな~」……⑩失敗のストレス・・・「う~ん、考え過ぎた。これ買わなきゃよかった」……⑪決済のストレス・・・面倒な会計・混雑するレジ……⑫手続きのストレス・・・注文が完了するまでの手続きが複雑(お歳暮・お中元ギフトなど)……

――考えればきりがありませんが、これらのストレス要素が複数絡み合い、輻輳する事によって、本来楽しいはずのリアルでの買物体験が不愉快なものになってしまうのです。

 ある意味、人は、このような『リアルでのショッピングで発生するストレス』を回避するために、オンライン店舗を選択する訳ですが、従来のオンラインショッピングでは、ここに挙げたストレスをすべて回避することはできないのは明らかです。一部ファッションECでコーディネート提案のサービスが始まるなど様々な企業努力がなされてきていますが、『音声AIとの会話というUI』こそは、切り札となるテクノロジーだと考えられます。

例えば、お中元というオフラインショッピングでは、うっかり空いている早い時期に出かけられなかったりして、早期割引の最終日に行ったりしようものなら、少なくとも④⑤⑥⑧⑪⑫といったストレスが襲いかかってきます。もしこれが、『音声AIとの会話』でオンラインショッピングできたなら、ほぼ全てのストレスが回避でき、快適なUXを得ることが出来るでしょう。顧客のその店に対する感謝、信頼、ロイヤリティは著しく向上しそうです。お中元やお歳暮といったギフト商品は、短冊をはじめとした熨斗(のし)の種類や、内のし・外のしの違い、表書き、包装形態、配達時期など多数の確認項目があり、もしAIが会話を通して一つずつチェックしながら接客してくれたら(アドバイスしてくれたら)、オンラインショッピングであっても不安なく注文が出来そうです(もちろん、これは、思考実験での話で、実際にシステム化できるかは別です)。

また、上に挙げたストレス項目の中で、私が一番気になるものを上げるとするなら、『⑧商品があり過ぎて絞り込めないストレス』でしょうか。こういったストレスは、多くの人が経験するものだと思います。サクッと直感で買い物したいのに、余りにも品数が多すぎて選択に困る……。つい先日も、マウスの状態が悪くなって、某家電量販店に出掛けたところ、たかがマウスを選ぶのに30分位かかりました!軽い気持ちで行ったのが間違いで、通路2本にまたがる膨大な品揃えは、恐ろしいくらいです。しかも、単価が安いせいか、相談しようにも近くに店員さんはゼロ……。将来、AIの精度が上がって、個々の商品に関するアドバイスを受けられるようになったら、どれだけ助かるか分かりません。

 このように考えてきて、私は、『音声AIとの会話というUI』は、リアルどころかオンラインショッピングでのストレスも解消しうる、画期的なテクノロジーであり、ショッピングシーンにイノベーションを起こすアクセラレータであると確信するに至りました。買物シーンで起きる様々なストレスのソリューションとなるのは、ユーザーに寄り添う事の出来るアドバイザー、学習によって顧客情報と商品情報に精通した『AIショッピングアドバイザー』なのです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31872380W8A610C1MM8000/

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