見出し画像

高額商品のオンライン販売は定着する!~試乗・試用がコト消費の一部となる時代~

 日経電子版の記事【テスラ、オンライン販売に全面移行 EV普及へ大量閉店】を読んだ第一印象は、率直に言って「自動車を売ろうってのに、販売店を止めちゃって、全部オンライン販売なんて、無謀じゃないか!?」というものでした。

 ですが、よくよく考えてみると、イーロン・マスク氏ともあろうものが、単なるコストカット目的で全面オンライン販売に踏み切ったとも思えません。その背後には、マスク氏らしい未来像の見極めがあって、『高額商品のオンライン販売』という市場に何らかの必然性を見い出しているのではなかろうか?――そう考えた私は、もう一度原点に立ち返って考えてみることにしました。



 そもそも、現在進行形の第4次産業革命の時代は、消費の比重が、モノそのものではなく、そのモノによって得られる体験=コトへと移っていく時代です。そして、これが決定的なのですが、『コト消費』には、原理的に試乗も試用もありえないのです。『体験』を試すことなど出来ません。試すこと自体が『体験』です。

 つまり、試乗にしろ試用にしろ、試すことそのものが『コト消費』の一部である、と捉えた方がはるかに合理的なのです。

 


 第4次産業革命の時代の消費者にとって、モノを買うとは、イコールそのモノによって得られる体験=コトを買うことです。モノを買うのも、サービスを買うのも全て『コト消費』として捉えた方が、消費者心理に寄り添っていると言えるでしょう。そして、消費者の立場に立つなら、モノであれサービスであれ、買った後で「この商品では自分のイメージしていたコトが実現できない」と分かった時に、返品したり中止したりできる事(消耗品など例外はあり)が重要なポイントになってくるはずです。

 したがって、途中で止めた場合に、それまでの分としてどれほどの対価をいただくか(それとも全くの無料にするか)は別として(手続き上の問題でしかない)――

 『コト消費』は返品・中止を前提にしないといけないはずです。その理由は明確で、消費者に納得のいかない体験を強制し続ける事などあってはならない事だからです。


 
 このような『返品可能なコト消費の理論』を第4次産業革命の時代の消費のあり方として位置付けるなら、自動車販売にあっても、試乗を含めたコト(体験)を販売するのに、オンライン販売を躊躇する理由は何もない、という事になります。

 消費者にとっては、オンラインで買った車が、ある日自宅に届いて、しばらく乗って気に入らなかったら返品、気に入ったらそのまま乗り続ける、という消費プロセスの方が、はるかにストレスレスで、満足のいくものとなるでしょう。逆に言うと、そのような販売方法を採用した自動車メーカーは、顧客の支持を得て、買い替えの時も有利になるはずです。


 このように見てくると、たとえ高額な商品であっても、『返品可能なコト消費の理論』の下では、フィンテックなども活用したオンライン販売が定着してくる、と考えられます。試用・試乗と返品・中止は、コト消費の不可分の構成要素なのです。

 よって、私は、イーロン・マスク氏の「オンライン販売に全面移行」の決定を、(その具体的な実行方法は別として)考え方として、極めて現代的な施策であると考えます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?