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来るべくして来たマスカスタマイゼーションの時代~UXの最・最大化~

 日経電子版の記事【生産性と個別ニーズを両立 マス×カスタムの時代
マス×カスタムの最適解(中)】や【マス×カスタム、設計・生産に新技術が登場 マス×カスタムの最適解(下)】を読むと、コスト面での制約があったカスタマイゼーション(個別生産)が、テクノロジーの進歩によって、マスプロダクション(大量生産)との親和性を獲得しつつあることが分かります。


 UX(ユーザーエクスペリエンス)の最大化が求められる第4次産業革命の時代に、究極のUXがカスタマイゼーションによって達成されることは間違いありません。ただ、今までは、作る側にとっても、買う側にとっても、コストが高くつきすぎたのです。それが、記事にある『GD ジェネレーティブデザイン』(ICTによって、効率的に、顧客のニーズを、諸条件を満たした形状データに設計)と『AM アディティブ・マニュファクチャリング/3Dプリンティング』(複雑形状の部品を1つで造れる)などのテクノロジーによって、(比較的)低コスト・短納期で実現できるようになることで、マスプロダクションのあり方が劇的に変化する可能性があるのです。

 何と言っても、生産性の高いマスカスタマイゼーションの仕組みを構築できた企業は、自社の商品のコモディティ化を回避して、顧客のニーズを掘り起こしながら、成長軌道に乗ることが出来ると考えられます――


(1)カスタマイズが生むイノベーション

 遠い将来かも知れませんが、商品のカスタマイズが当たり前の事になると、顧客からのカスタマイズの要望が、予め設定してあったカスタマイズの範囲を越えた所で、イノベーションのアイデアが浮かんでくると考えられます。作り手と使い手が、カスタマイズというコ・クリエーションによって、新しいものを作り出す過程で、今までにない全く新しいアイデアが生まれる可能性があるのです。

 したがって、カスタマイズというインタラクションは、予め設定した範囲を越えたカスタマイズの要望をスムーズに吸収できる=顧客のニーズを吸い上げられる仕組みになっていることが必須であると考えられます。言わば『カスタマイズのカスタマイズ』という事に寛容なシステムであることが最も重要だと思います。


(2)ソフトのカスタマイゼーション

 商品を『顧客のニーズに対するソリューション』と捉えると、商品というのは、ハードとソフトから構成されていますので、当然、ソフトの部分のカスタマイズという顧客の要望に対しても、真摯に応えていく必要があるのは明らかです。その中で、組込みソフトからクラウド上のソフトへのシフトという事が起きるかも知れません。

 いずれにしても、メーカーがマスカスタマイゼーションによって第4次産業革命の時代を生き抜いていくためには、ソフトの開発力が不可欠な要素になってくる、と考えられます。


(3)オプション方式からプログラミングレスへ

 顧客のカスタマイズの要望に迅速に応えるためには、いずれオプション、BTO(ビルド・トゥ・オーダー)、テンプレート式の対応では追い付かなくなると考えられます。かと言ってプログラムにかけるコストにも限界があり、プログラミングレスな商品開発の需要が増大するのではないでしょうか。


(4)受注生産と部品在庫など

 マスカスタマイゼーションの体制においては、受注生産の納期短縮が顧客満足に直結しており、カスタマイズに必要な部品・素材の欠品などは、決定的なマイナス要素です。マスカスタマイゼーションに必要な材料の管理は困難なものになると予想され、人工知能AIなども含めた精度の高い在庫管理のシステムなどはもとより、マスカスタマイゼーション導入に伴って起きてくるであろう様々な課題をクリアできる仕組み作りが準備されているかどうかが、利益率に直結してくると考えられます。


 大きな可能性を秘めつつも、実際に導入するとなると数々の課題もありそうなマスカスタマイゼーションは、第4次産業革命の時代に今とは比べものにならない大きな位置を占めるものになると考えられ、その軌道に乗る事は、製造業活性化の一つの道筋でもあると考えられます。マスカスタマイゼーションによってユーザーの体験、UX(ユーザーエクスペリエンス)を『最・最大化』することは、企業にとって大きな差別化に繋がると思われます。

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