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パーソナライズされるコンビニ~コンビニ再成長のカギは何か?~

 日経電子版の記事【老いるコンビニ 新たな成長握るデータ力】、【新宿に「エスニック」ローソン 在住外国人狙う】は、成長に陰りの見えてきたコンビニの苦闘と課題が整理された好リポートだと感じました。



 コンビニと言えば『近くて便利』というキャッチフレーズ、コンセプトが有名ですが、2018年まで3年連続で客数の減少するコンビニの現状は、『近くて便利』というコンセプトが他の業態によって浸食されている状況を表している、と考えられます。


カスタマー(顧客)の大移動

『便利』
スーパー・銀行など

『近くて便利』
コンビニ
 ⇓         ⇓          ⇓
『近くて便利』+医薬品   ⇓       『届いて便利』
食品の取り扱いを拡大   ⇓        ネット通販
  するドラッグストア    ⇓      外食の配達サービス

『多少遠くても良いもの、話題のもの』
専門店など


 かつて、それなりに『便利』だったスーパー・銀行などから、『近くて便利』なコンビニに移動したカスタマーが、今度は、医薬品という品揃えでコンビニと差別化するドラッグストアが、食品の取り扱いを拡大してコンビニのお株を奪うや、そちらに流れ、また、『近くて便利』のさらに先を行く『届いて便利』なネット通販などへと流出していったと考えられます。さらには、SNSで日々話題が作られる現在、『多少遠くても良いもの、話題のもの』へと回帰していくカスタマーの流れもあるかも知れません。

 『近くて便利』というコンセプトが、それに対抗するコンセプトによって徐々にカスタマーを引き寄せる力を失いつつあるのが現状と言えそうです。そして、流出するカスタマーの大きな部分を若者層が占めるとするならば、それによって客層の高齢化が加速し、売場の品揃えが高齢者向きになる事で、さらに若者のコンビニ離れが加速するという悪循環が起きているのかも知れません。


 このような状況を打破して、コンビニの再成長を促すにはどうしたらいいのか?移動しさすらうカスタマーの流れを再びコンビニへと還流させるには、コンビニ・ユーザーの買物体験を今までにない全く新しいUX(ユーザーエクスペリエンス)へとデザインし直すイノベーションが必要なはずです。

 その際外してならないのは、『近くて便利』というメインテーマから決してブレないことではないでしょうか。コンビニは、あくまで近所に立地する小規模店舗であり、『近くて便利』であることは、コンビニがコンビニである限り外すことの出来ない永遠のテーマです。したがって、活路は『近くて便利』というコンセプトの進化にあります。

 ここでとても参考になるのが、過去の記事や発表会などからうかがえるセブンイレブンの考え方です――


『近くて便利』の本質とは

『近くて』=心理的な近さ
=必要な時に、必要なモノを買える

『便利』=上質な商品が上質なサービスで提供される
=常に頼りにできる店


 ――『近くて便利』の本質をこのように捉えるなら、そこから浮かび上がってくるのは、『パーソナライゼーション』と『信頼』というキーワードではないでしょうか。


 『近い』という概念を、距離的なものから心理的なものへと徹底的に追求していくなら、究極的には、「自分の欲しいものが常にそろう店」、「自分専用の店」という事になります。そして、そのようなパーソナライズは、現代のIT、情報技術をもってすれば実現可能と考えられます。

 これは全くの私見ですが、例えば、『仮想自分専用店舗』(バーチャル・パーソナライズド・ショップ)のようなサービスが考えられます。パーソナライズド検索が可能なら、パーソナライズド店舗も可能でしょう。ただ、現実にパーソナライズされた店舗を作ることは出来ませんから、スマホアプリ上にバーチャルに作るのです。

 『バーチャル・パーソナライズド・ショップ』のサービスにおいては、ユーザーは、まずバーチャル店舗で欲しい商品を予約します。商品には、その時々の流通上の難易度(ユーザーの行きつけの店にある、近くの店にある、グループ内の他業態の店から持ってくる、問屋から仕入れる、等々)に応じて店着日時、お引渡し日時が表示されます。引渡し日時に支障がなければ、ユーザーは予約を確定、同時に決済が完了、後は行きつけの店で会社帰りなどに受け取るだけです(このシステムにおいては、自宅までお届けするコストはかけない)。

 このシステムにおいては、利用回数が増えるほど、AIの精度がアップし、お引渡しまでのリードタイムはどんどん短縮し、ストレスレスなものへと成長していくと考えられます。(そのデータは、当然リアル店舗の品揃えにも反映できます。)ユーザーは、もはや、「〇〇が欲しいんだけど、コンビニにはないよな……」などと悩む必要がなくなります。このシステムに専門店なども参加してもらえば、事実上品揃えの幅は無限に広がっていきます……


 ネットとリアルの融合した『バーチャル・パーソナライズド・ショップ』の最大の特徴は、商品の発注を、店員ではなく、お客様にしていただく、コ・クリエーション(共創)にあります。発注精度は、買ってくださるお客様の発注ですから、限りなく100%に近く、原則的にチャンスロスも現物ロスもありません。別の言い方をするなら、『バーチャル・パーソナライズド・ショップ』のシステムは、必要な時に、必要なモノを買える『現代版御用聞き』と言っても良いでしょう。

 一方、便利=上質な商品が上質なサービスで提供される=常に頼りにできる店、というコンセプトについては、ストレスフリーな決済プロセス、安心安全など、追求すべき切り口はまだまだありそうです。『パーソナライゼーション』と『信頼』というキーワードでコンビニの再成長を促す施策は、考えればきっと見つかるはずで、困難ではあっても、決して難攻不落ではないと考えます。


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