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神経内科/整形外科でよく出会う

1.はじめに 自己紹介と病院の概要

 このnoteは2023年4月に看護師さん向けに薬理学の講義をした時の資料です。私は、薬剤師歴20年ほどのアツナリと申します。当院は神経内科と整形外科の80床ほどのリハビリ病院です。看護師さんは40歳以降のベテランが多く、定着率も急性期病院と比べると高いようです。とは言え、万年スタッフ不足の中、夜勤をこなす看護師さんは、心も身体も日々お疲れでしょう。そんないつもお世話になっている看護師さんに対して少しでも役に立てば良いと思い資料を作りました。

 ガイドラインや専門書を参考に執筆していますが、内容の信憑性に関しては責任を追いません。各自で確認してください。

 それでは、薬理学の楽しい世界へ!

2.貼付剤の注意点

 当院でよく使われる貼付剤の一覧です。貼付部位や注意点が一つずつ異なるので、貼付時には確認してください。
 貼付剤の共通点としては、経皮吸収のためゆっくり安定した効果を期待しているということ。また、製剤には1回分以上の薬剤が入っているという事です。例えばフランドルテープの用法を見てみましょう。

1回1枚。24時間or48時間ごと。

フランドルテープ添付文書

えらく時間に幅があるな・・
つまり、24時間で貼り替えた場合、処分するテープ剤には半分以上の薬剤が残っているという事になります。他の24時間事に貼り替えを推奨しているテープ剤もメーカーに問い合わせると、約70%以上の薬剤が残っているそうです! そうなんです。きっちり24時間で貼り替えなくても、OKなんです。
(でも、忘れるといけないので原則は同じ時間に貼り替えましょう)

2-1.途中で剥がれた時、直ちに貼付する必要があるのか?

途中で剥がれた落ちた場合、直ちに新たな本剤を貼付すること

ニュープロパッチ添付文書

 経皮吸収の場合、調布剤が剥がれても皮膚に薬剤が残っているのでは?と思いつつも、添付文書にはこのように書いてあります。ドパミン濃度を一定に保つためにも、直ぐに貼り替えなくちゃダメだよね・・と貼り替えていましたが、、  メーカーに確認すると、消失半減期(T1/2)=12時間との事。
なんだよ! 直ぐに貼り替えなくても平気じゃ〜ん!となりました。(原則は、添付文書通りです)
 
 以下注意点は下記の通りです。

【貼付剤の共通した特徴】

  • 貼った部位から吸収され、全身に作用する。

  • 長時間安定した血中濃度を維持する。

  • 2回分を一度に貼らない。(2錠飲んだことになるため)

  • 貼付したまま入浴OK! (但し、体温上昇により吸収量が増加するため、熱々のお風呂、サウナはNG。カイロ、直射日光に当てない)

  • 切って使用することは原則禁止。

  • 24時間貼付後も成分が製剤に残っているため、折り畳んで処分する。

【テープかぶれを防ぐために注意すること】

  • 毎日違う場所に貼る。

  • パッチを貼る場所を毎日保湿する。(本日貼付部位以外)

  • 表皮を剥がさないように、ゆっくり剥がす。

 ヒヤリハット報告で一番多いのは、前回の貼付剤が残ったまま、今回貼ってしまった(倍量投与)。こちらが多いと思います。当院ではできるだけ(嚥下機能に問題がなければ) 錠剤になるように医師へ依頼しています。

3-1.コロナ治療薬

 厚生労働省が出している"新型コロナ感染症新涼の手引き第9版"を確認します。この改訂では、オミクロン株による感染拡大により分かった、新たな薬剤の使用方法が記載されています。
 まず、軽症〜中等症Ⅰに対して、中和抗体薬の使用が否定されていること。

【軽症】経過観察のみで自然軽快する場合が多い。


解熱鎮痛剤、鎮咳薬などの対症療法。重症化リスクがある者に対しては、抗ウイルス薬の投与を検討。この時期にウイルス量を減らすことで、中等症への移行を抑えることがポイント

【中等症Ⅰ】入院加療。肺炎所見あり。93%≦SPO2≦96%。


重症化リスクが無くても、レムでシビルの投与を検討する。SPO2を1日3回ほど測定し、酸素投与必要者に早急に対応できるように準備する。細菌感染合併の場合は抗菌薬を併用する。

 当院でできる治療はここまで。中等症Ⅱ以降で必要なステロイド薬は常備していないため、早急に転院させます。コロナ罹患前に、ワクチン接種歴の有無、フレイルなど重症化リスク因子保有者をピックアップしておくといいですね。

3-2.当院で採用しているコロナ治療薬

抗ウイルス薬のみです。何度も言いますが、それ以上の治療が必要な場合、リハビリ病院では対応できないため、至急転院要請してください。

*重症化リスクの減少率の考え方
薬剤が市場に出た際のデータとなります。つまり、現在流行中の株に対する有効性の高さとは異なる事を念頭に入れてから治療選択してください。

当院での治療薬の選択の仕方
まず、入院患者さんは全て重症化リスク因子を有する方ばかりです。そこで、併用薬に問題がなければまずニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)を使用できないか一番に検討します。その理由は、重症化リスクの減少率が高いからです。併用薬のチェックは必ず医師と薬剤師で行います。禁忌薬はなくても、Ca拮抗薬やスタチン薬は血中濃度が上がるので、副作用を確認します。併用薬さえ確認できれば、ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)は副作用も少なく、効果が高く、良い薬だと個人的に考えています。(20症例ほどの経験ですが・・) 

【モルヌピラビル】ラゲブリオカプセル
*妊婦、妊娠している可能性のある女性への投与は禁止。
通常用量:モルヌピラビル800mg(4C)を1日2回 5日間経口投与
副作用:下痢、悪心・嘔吐、頭痛、眩暈、発疹、紅斑(意外と頻発)など

【ニルマトレルビル/リトナビル】 パキロビッドパック
*CYP3A4を強力に阻害するため、CYP3A4を基質に持つ薬剤の血中濃度が上昇する。腎機能30≦eGFR<60に対してニルマトレルビルを半量へ減量する。腎機能30<eGFRへの投与不可
通常用量:ニルマトレルビル/リトナビル300mg/100mg(0.5パック)を1日2回 5日間経口投与
副作用:副作用:下痢、悪心・嘔吐、頭痛、眩暈、発疹、紅斑など

コロナ流行初期に効く?とウワサされていた薬剤のエビデンスが集まり、否定されたという点も大きいですね。

国内外で開発が中止された薬剤
ヒドロキシクロロキン カモスタット ファビピラビル ロピナビル/リトナビル 高度免疫グロブリン製剤

日本国内で開発中の主な薬剤
イベルメクチン

4-1.脳梗塞慢性期の薬物治療

さて、やっと本題に入ってきました。脳梗塞慢性期の薬物治療について話します。脳梗塞を起こした患者さんの治療目的は再発予防と後遺症の軽減です。入院患者さんは、機能回復訓練をしながら病識をつけ、再発予防のために食生活の改善と内服治療を継続します。

4-2. 〜脳梗塞の分類〜             1.血栓性脳梗塞と2.心原性脳梗塞

まずは病態の整理から。3大脳梗塞というと、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症となりますが、リハビリ病院に入院する患者さんは、アテローム血栓性脳梗塞、BAD、心原性脳梗塞の患者さんが多いですね。(ラクナ梗塞の患者さんは軽症のためリハビリ病院入院までに至らない)

1.血栓性脳梗塞

ラクナ梗塞:小さい血管が詰まる
画像では目視できない(小細動脈の虚血に起因する)脳深部の小梗塞。直径1.5cm以内のもの。脳梗塞の範囲は狭く、症状は軽いことが多い。繰り返すことにより、血管性認知症やパーキンソン症候群の原因となることがある。

BAD :ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の中間
発症後に数日かけて徐々に脳梗塞の範囲が広がり、進行する。症状の経過はアテローム血栓性脳梗塞に似ている。

アテローム血栓性脳梗塞:大きい血管が詰まる
動脈硬化により(内頸動脈や中大脳動脈などの)大血管が狭窄し、閉塞する状態。

2.心原性脳塞栓症

心疾患により、心臓内にできた血栓が脳の大きな血管に詰まり、広範囲に脳虚血状態に陥る状態。

4-3血栓性脳梗塞の慢性期の治療薬

血栓性脳梗塞の慢性期の治療は 1.抗血小板薬と 2.動脈硬化危険因子の管理
です。

1.抗血小板薬(常用量)
アスピリン(バイアスピリン錠) 1日1回100mg
クロピドグレル(プラビックス錠) 1日1回75mg
シロスタゾール(プレタール錠) 1回100mg 1日2回
プラスグレル(エフィエント錠) 1日1回3.75mg

2.動脈硬化危険因子の管理
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心疾患、睡眠不足/ストレス解消、禁煙など

4-3-1アテローム血栓性脳梗塞の慢性期の処方

このような薬を飲んでいる患者さんをよく見かけませんか?慢性期では、抗血小板薬が1種類となり、降圧治療が再開となります。(急性期では抗血小板薬2種類、血流維持のため積極的な降圧は控える。)

抗血小板薬

1,バイアスピリン錠100mg 1錠/朝食後   抗血小板薬
2,ランソプラゾールOD錠15mg 1錠/朝食後 消化性潰瘍予防のための胃薬
動脈硬化危険因子の管理
3,アムロジピン錠5mg 1.5錠/朝食後    降圧薬
4,オルメサルタンOD錠20mg 1錠/朝食後  降圧薬
5,ロスバスタチンOD錠2,5mg 4錠/朝食   高脂血症治療薬
6,イコサペント酸エチル900mg 2包/朝夕食後 高脂血症治療薬
7,テネリア錠20mg  1錠/朝食後     糖尿病治療薬
8,デエビゴ錠5mg 1錠/寝る前       睡眠薬

4-3-2抗血小板薬

脳梗塞の急性期にアスピリンとクロピドグレルのDAPTを3週間ほど服薬し、どちらかの抗血小板薬(SAPT)へ減量途中で転院する場合が多いですね。

COX阻害薬
アスピリン(バイアスピリン錠)  
 🙆エビデンスが豊富。安価(5.7円/錠)。脳梗塞発症48時間以内の160~300mg/日投与は再発予防、死亡を有意に減少させる(グレードA)
 🙅出血のリスクが他の抗血小板薬よりも高い。消化性潰瘍の予防のため胃薬を併用する。(PPI併用)

ADP受容体遮断薬
クロピドグレル(プラビックス錠)  
 🙆パナルジン錠の副作用(肝障害)を改良した薬。副作用が少ない。安価(42円/錠)  300mg/日のローディングドーズにより、2時間後から抗血小板作用を発現する。
 🙅遺伝子多型があり、アジア人に効きにくい。(約20%が効かない) 効果発現が遅い。
プラスグレル(エフィエント錠)  虚血性脳血管障害後の再発予防に適応追加。(2021/12適応追加)
 🙆クロピドグレルの遺伝子多型と効果発現を改良。効果発現が早い/安定した血小板凝集作用。20mg/日のローディングドーズにより、投与約35分後から血小板抑制作用を発現する。  
 🙅高価(275円/錠)。空腹時投与により、最高血中濃度が3.3倍に増加するので、食後に投与すること。

PDE阻害薬
シロスタゾール(プレタール錠)  
🙆慢性動脈閉塞症の第一選択薬。血管拡張作用。心拍数増加。心収縮力増加作用あり。  
🙅頭痛、動悸、頻脈が起こりやすい。禁忌:うっ血性心不全。

4−3−3 動脈硬化危険因子の管理

動脈硬化予防の目標管理数値は、ガイドラインによりかなり変わりますね。
どんどん厳しくなるように感じますが、、

高血圧
130mm/80mmHg未満
75歳未満の成人、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者、抗血小板薬服薬中、CKD、DM
140mm/90mmHg未満
75歳以上の高齢者。主幹動脈の閉塞がある脳血管障害

脂質異常症
LDL-C100mg/dL未満
急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞のいずれかを合併する場合70mg/dL未満を目標としたより厳密な脂質管理を考慮する
HDL-C40mg/dL以上
中性脂肪 150mg/dL未満
 

糖尿病
HbA1c7.0%未満 

【生活指導】
減塩(6g/日以下):野菜、果物、豆類、魚類を摂ることで、Naを排泄するK,Mg,Caの摂取を促す。
運動(30分/回以上を2回/週以上):軽めの有酸素運動が適する。散歩、水中ウォーキングなど。
適正体重の維持:BMI値22が適正体重(統計的に最も病気になりにくい)。
BMI値25以下を維持することで、高血圧、高脂血症、高血糖予防につながります。
禁煙:タバコにより活性酸素が増えると、コレステロールが血管内皮に取り込まれ動脈硬化が促進されます。
節酒の指導:ビール中瓶1本 日本酒1合 チュウハイ350ml1本が日本人男性のアルコール代謝能としての節酒基準です。

4−3−3 抗血小板薬を2種類飲んでいる人がいる!

 慢性期において、抗血小板薬を2種類服薬している人って意外と多いですよね。どのような理由があるのでしょうか。

DAPTの考え方1
脳梗塞急性期の治療として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)がグレードBとして勧められている。但し、出血リスクを考慮してより早期に単剤(SAPT)へ切り替えること。
ex.
クロピドグレル(初回投与300mg,2日目から75mg/日)
+アスピリン(初回投与75~300mg/日,2〜21日目まで75mg/日)
アスピリン単剤投与よりも再発率を有意に下げ、出血性リスクを上げていない。

DAPTの考え方2
冠動脈の狭窄があり、PCI(経皮的冠動脈インターベーション)を施工しその後のステント血栓予防に服薬している場合があります。薬剤流出性ステントの進化により併用期間は短縮されましたが、ステント血栓予防のため6~12ヶ月のDAPTが推奨されます。

DAPTの考え方3
アスピリンとクロピドグレルの長期併用療法は、出血性合併症のリスクが高いため、冠動脈ステント留置後や血管内皮治療で併用療法が必要でない限り単独での投与が望まれます。しかし、シロスタゾールとアスピリン、シロスタゾールとクロピドグレルの長期併用は、SAPTに比べて脳梗塞再発予防効果が向上し、かつ安全性についても差が無い事が示された。(CSPS.com試験)
よって、シロスタゾールの副作用が影響を受けないハイリスク脳梗塞患者の再発予防には、シロスタゾールとアスピリン、シロスタゾールとクロピドグレルの長期併用投与を考慮する。

4-4 降圧薬


高血圧に使う薬
正常血圧120/80を超えるほど、脳・心血管病や死亡のリスクは高くなります。とは言え、加齢により血管内皮は硬く弾力性がなくなるため、血圧は上昇します。下記を治療目標に降圧薬を導入していきます。

130mm/80mmHg
未満75歳未満の成人、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者、抗血小板薬服薬中、CKD、DM
140mm/90mmHg
未満75歳以上の高齢者。主幹動脈の閉塞がある脳血管障害

高血圧治療ガイドライン2019

①Ca拮抗薬 血管を広げる薬

:アムロジピン(アムロジン) ニフェジピン(アダラート) シルニジピン(アテロック)
🙆24時間に渡る強力で安定した降圧効果(血管リモデリングが進んでいるタイプ:長年にわたる高血圧により血管壁が分厚く肥厚し伸縮力が乏しい血管にも有効)。冠動脈を含む抹消血管拡張作用。心収縮力の抑制。臓器血流保持効果に優れている。
🙅副作用:(導入時に血管拡張による頭痛、ふらつきはあるが)ほとんどない。 相互作用:グレープフルーツジュース

②ARB 昇圧物質を減らす薬


:カンデサルタン(ブロプレス) テルミサルタン(ミカルディス) オルメサルタン(オルメテック) アジルサルタン(アジルバ)
🙆アンギオテンシンⅡ受容体拮抗作用による降圧効果。臓器保護作用。
🙅副作用:ほとんどない。高K血症 血管浮腫

③ACE阻害薬 昇圧物質を減らす薬


:エナラプリルマレイン酸塩(レニベース) イミダプリル(タナトリル)
🙆アンギオテンシンⅡ産生抑制作用による降圧効果。臓器保護作用。
🙅副作用:空咳 高K血症 血管浮腫

RAA(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン)系阻害薬


強力な昇圧系であるアンギオテンシンⅡの作用を抑制する。
【アンギオテンシンⅡの働き】
1.アルドステロンを分泌する(副腎皮質)
Naと水の再吸収↑ 体液量↑ 心負荷↑:血圧上昇、心不全悪化
2.血管収縮作用(血管平滑筋)
抹消血管抵抗↑ 血圧↑:血圧上昇
3.バソプレシンの分泌促進
4.腎臓の輸出細動脈の収縮
5.組織アンギオテンシン生産系 
細胞増殖/肥大作用による心筋リモデリング、動脈硬化:心不全悪化 腎血流量低下

*ACE阻害薬/ARBは高血圧で使用する場合と、心不全予防の為に使用している場合があります。血圧が高く無いにもかかわらず、少量のACE阻害薬/ARBを使用している場合は慢性心不全予防に使っている場合が多いです。

④利尿薬:サイアザイド系(トリクロルメチアジド)


🙆Naや水の再吸収を抑制して循環血液量を減少させ降圧する。
🙅低Na血症。低K血症。

同一薬剤を増量するよりも、異なる種類を併用する方が降圧効果あり。

ARB/ACE阻害薬+Ca拮抗薬
降圧効果が強い。蛋白尿減少。心血管系イベント抑制
心肥大改善。インスリン感受性改善。抗動脈硬化作用。腎保護作用。
ARB/ACE阻害薬+利尿薬
糖尿病発症抑制。冠動脈イベント。心血管系死亡数を減少。脳卒中再発予防効果
ARB/ACE阻害薬+β遮断薬
血管収縮抑制、交感神経抑制、心臓の肥大/繊維化抑制、アルドステロン分泌を抑制する。
→血管リモデリング抑制作用があるため、若年高血圧に向く。

塩分を減量しても中々血圧が下がらない

食塩感受性高血圧:塩分の排泄が上手く行ってないため、食塩を多く取ると血液中のNa濃度が高くなり、水分とくっついて体液量が増え血圧が上がる。塩分を減らすと血圧が下がる。日本人の4割が該当。
食塩感受性が無い人:塩分をとっても必要量以外は腎臓から排泄されるため、血圧にはあまり影響しない。日本人の6割が該当。


4−5 高脂血圧治療薬

LDL-C100mg/dL
未満急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞のいずれかを合併する場合70mg/dL未満を目標としたより厳密な脂質管理を考慮する
HDL-C40mg/dL以上
中性脂肪 150mg/dL未満
 

動脈硬化予防ガイドライン2020

・ストロングスタチン    同等換算     最大投与量
ロスバスタチン(クレストール) 2.5mg    20mg
アトルバスタチン(リピトール)   10mg            40mg
ピタバスタチン(リバロ)                    2mg              4mg
🙆コレステロールの合成抑制。LDL降下作用が大きい。冠動脈プラーク退縮効果が大きい。
🙅横紋筋融解症、肝機能障害(最大投与量を守ること)

・エゼチミブ(ゼチーア)
🙆小腸でのコレステロール吸収阻害。スタチンでLDLが下がり切らない時に併用を検討する。

・イコサペント酸エチル(EPA n3系脂肪酸)(エパデール)
🙆中性脂肪低下。抗血小板作用。動脈硬化予防効果。
🙅出血傾向

食事のみでコレステロールを下げたい! 薬を飲まなくちゃいけないの?

 このような質問をご家族からされることが多いです。(特に健康意識の高い奥様) 結論から言うと、「食事改善によるLDL-Cho低下作用は限られているため、薬を飲んで厳格にLDL-Choを管理した方が、心血管系のイベントリスクを下げられるため服薬しましょう」です。
 コレステロールの生成は食事由来によるものが2割、体内で生合成されるものが8割のため、食事療法も大切ですが、体質が関与する割合が高いのです。もちろん、食生活の改善も大切です。特に動脈硬化抑制効果のあるn-3系不飽和脂肪酸(DHA/EPAなど)の摂取を心がけましょう。

4-5 糖尿病治療薬

①DPP4阻害薬
:テネリア(テネリグリプチン) トラゼンタ(リナグリプチン)
🙆血糖上昇時にインスリン分泌促進、グルカゴン抑制による血糖改善効果 低血糖を起こしにくい

②ビグアナイド系
:メトグルコ(メトホルミン)
🙆肝で糖新生抑制 脂肪分解促進(過体重/肥満2型糖尿病の第一選択薬) 消化管からの糖吸収抑制 インスリン抵抗性改善薬 
🙅乳酸アシドーシス 下痢(15%)

③SGLT2阻害薬
:カナグル(カナグリフロジン) フォシーガ(ダパグリフロジン)
🙆尿細管での糖の再吸収抑制、尿への糖排出促進作用。体重減少 空腹時/食後血糖改善 HbA1c低下 虚血性心疾患 心不全/腎障害の進行抑制 
🙅尿路感染 脱水症 性器感染

④速効型インスリン分泌促進薬
:レパグリニド(シュアポスト)
🙆インスリン分泌を促進し、食後高血糖を抑制する。食直前5〜10分以内に服薬 
🙅低血糖 体重増加     

5−1 心原性脳塞栓症

5-1-1 心原性脳塞栓症

1.抗凝固薬(常用量)


【DOAC】年齢、体重、腎機能により細かく投与量を調節する必要あり
・ダビガトラン(プラザキサ錠)1回150mg,1日2回
・エドキサバン(リクシアナ錠)1日1回60mg
・リバーロキサバン(イグザレルト錠)1日1回15mg
・アピキサバン(エリキュース錠)1回5mg,1日2回
【ワルファリンNa(ワーファリン錠)】→INR1.6〜2.6になるように調節

2,原疾患の治療

・非弁膜症性心房細動(70%以上)
・洞不全症候群
・拡張型心筋症
・感染性心内膜炎など

5-1-2  抗凝固薬

【DOAC】


🙆頻回の血液検査不要。薬物や食品との相互作用が少ない。脳卒中/全身性塞栓症の再発を有意に抑制。出血性合併症のリスクはワルファリンと同じか低い。
🙅高価 適応疾患が少ない。重度の腎機能障害は禁忌。
・ダビガトラン(プラザキサ錠)75mg 138円/錠
・エドキサバン(リクシアナ錠)60mg 555円/錠
・リバーロキサバン(イグザレルト錠)15mg 520円/錠
・アピキサバン(エリキュース錠)5mg248円/錠

【ワルファリンNa(ワーファリン錠)】

🙆DOACが使用できない場合に使用。エビデンスが豊富。安価(9.8円/錠)。 非弁膜症性心房細動の二次予防(70歳以上)の目標値PT-INR1.6〜2.6。
🙅頻回の血液検査が必要。薬物や食品との相互作用が多い。出血のリスクが高い。

5-1-2 DOAC減量基準早見表

ダビガトラン(プラザキサ錠)  1回110mg 1日2回
・腎機能Ccr30~50ml/min  Ccr30未満は禁忌
・P糖タンパク阻害薬併用時
・70歳以上
・消化管出血の既往

エドキサバン(リクシアナ錠)  1回30mg 1日1回
・体重60kg以下
・腎機能Ccr30~50ml/min

エドキサバン(リクシアナ錠)  1回15mg1日1回
高齢(80歳以上)で出血リスクの高い非弁膜性心房細動患者における虚血性脳卒中、全身塞栓症の発症予防に対して、以下のうち一つ以上を有し、他の抗凝固薬では出血のリスクが懸念される場合に使用。
・出血の既往(頭蓋内、眼内、消化管など)
・体重45kg以下
・15≦Ccr<30
・NSAIDsの常用
・抗血小板薬の使用

リバーロキサバン(イグザレルト錠) 1回10mg1日1回
・腎機能Ccr30~49ml/min Ccr15~29ml/minでは投与の可否を慎重に検討。 Ccr15未満は禁忌

アピキサバン(エリキュース錠) 1回2,5mg 1日2回
以下基準の2つ以上が当てはまる場合
・80歳以上
・体重60kg以下
・血清Cr1.5mg/dl以上

6−1骨粗鬆症の病態

骨粗鬆症;骨強度*の低下により、骨が脆くなり骨折しやすくなる骨疾患。
骨強度*=骨密度(骨内のミネラル量)+骨質(骨の新陳代謝)

60歳女性の2人に1人、70歳女性では10人に7人、男性も10人に4人が骨粗鬆症である。

骨吸収:破骨細胞により、古くなった骨を分解・吸収する。
骨形成:骨芽細胞により、骨吸収が起こった部位に骨基質を産生・分泌しながら埋入していく。

閉経後の女性はエストロゲンの減少により骨吸収が亢進する。また、加齢により骨形成が低下するため、骨粗鬆症となりやすい。
YAM:20〜44歳までの平均骨量 70%以下になると骨折のリスクが高くなる。

6−2骨粗鬆症治療薬

骨粗鬆症は、大きく分けると以下の3つに分けられる。
①骨吸収を抑制する薬
②骨形成を促進する薬
③骨代謝を促進する薬

6−2−1 ①骨吸収を抑制する薬

ビスホスホネート(BP)製剤:骨粗鬆症の第一選択薬


リセドロン酸(ベネット錠 週に1回) ミノドロン酸(リカルボン錠 月に1回) イバンドロン酸(ボンビバ注 月に1回)
腸からの吸収が数%しかないため、空腹時を避けて200mlの水で服薬する。その後30分は横にならない。但し、吸収されると骨芽細胞に取り込まれ長期間に渡り骨吸収を抑制する。
🙆強力な骨吸収抑制作用
🙅長期間(5年以上)の使用により、大腿骨の非定型骨折リスクが高くなる。顎骨壊死。胃腸障害。

ビスホスホネート製剤服用時における抜歯の時の注意点
顎骨壊死、顎骨骨髄炎は、抜歯などの侵襲的措置や局所感染がある場合に発現する。→口腔内を清潔に保ち、歯科を定期受診するように。ビスホスホネート製剤の服薬を歯科医師に必ず報告すること。

4年以上ビスホスホネート製剤を服薬している場合、2ヶ月の休薬を推奨している。

米国FDA

SERM:閉経後骨粗鬆症の第一選択薬


ラロキシフェン(エビスタ錠)、バゼドキシフェン(ビビアント錠)
骨組織に対しては、エストロゲン作用として骨吸収抑制し、子宮内膜や乳腺組織に対しては抗エストロゲン作用を示す。
🙆乳癌のリスク低減。子宮体癌のリスク低減。
🙅深部静脈血栓症(500人に1人)。

抗RANKL抗体;


デノスマブ(プラリア注 6ヶ月に1回)
🙆強力な骨吸収抑制作用
🙅低Ca血症→VD Ca製剤(デノタス等)を併用すること

6−2−2 骨形成を促進する薬

PTH(服甲状腺ホルモン)製剤テリパラチド:生涯投与期間は24ヶ月まで


テリパラチド酢酸塩(フォルテオ皮下注 毎日投与)
テリパラチド(テリボン注週に1回 テリボンオートインジェクター週に2回)
🙆強力な骨形成促進・骨量増加作用。きわめて骨折リスクの高い方が適応。
🙅一過性の血圧低下 高Ca血症

抗スクレロスチン抗体(ロモスズマブ):生涯投与期間は12ヶ月まで

イベニティ注(月1回皮下注)
🙆骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を有する。骨折危険性の高い骨粗鬆症に適応。
🙅心血管系事象

7 睡眠薬

睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体を介さない方向へ

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の常用量依存 
承認用量の範囲でも長期間服薬により身体依存が形成され、減量や中止時に離脱症状*が現れる。離脱症状*:不眠、不安、焦燥感、頭痛、せん妄など

2017年PMDA

当院採用のベンゾジアゼピン受容体作動薬
ゾルピデム(マイスリー錠)、エスゾピクロン(ルネスタ錠)、エチゾラム(デパス錠)、ブロチゾラム(レンドルミン錠)など。
→奇異反応、依存、耐性、筋弛緩(ふらつき、転倒)、過沈静がない睡眠薬へ

オレキシン受容体拮抗薬

ズボレキサント(ベルソムラ錠) レンボレキサント(デエビゴ錠)
🙆覚醒系を抑制し、睡眠状態へ。服薬開始初期から睡眠改善。レム睡眠出現増加効果。せん妄予防効果あり。
🙅翌日日中への持ち越し(半減期12時間)、めまい、悪夢

メラトニン受容体作動薬

ラメルテオン(ロゼレム錠)
🙆体内時計を調節し、眠りを誘発する。せん妄予防効果。覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘発する。
🙅睡眠効果が弱い。効果発現までに1週間以上必要。

抗うつ薬

トラゾドン(レスリン錠)
🙆入眠困難、熟眠困難改善。睡眠維持作用、睡眠の深度維持作用。半減期が短いため持ち越し効果ナシ。
🙅脱力感あり。不眠症に保険適応ナシ。             

以上、1時間の講義で終わる内容ではありませんが張り切って話してきます!  

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