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”考えすぎ”だった少女を変えたのは読書だった。傳谷英里香さんに聞いた、本とオーディオブックの話

「オーディオブック×〇〇」と題して、オーディオブックユーザーさんをご紹介するこちらの企画。

今回は、2018年9月に解散したアイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」の元リーダーで、現在は舞台「熱血硬派くにおくん」に出演するなどモデル・女優として幅広く活躍する傳谷英里香さんにお話を伺いました。

完ぺき主義で悩んだときに、読書に救われた

──傳谷さんは読書が好きとうかがっています。本を好きになったきっかけは何だったんですか?

本が好きになったきっかけは、小さい頃から親がよく絵本を読み聞かせしてくれていたことですね。家には難しそうな本や歴史の本などがずらっと並んでいる本棚があったりして、子どもの頃から本に親しむ環境がありました。

それで、年齢を重ねていくにつれて小説なども読むようになっていき、中学生のときには、哲学書や自己啓発書をよく読んでいました。

──中学生から哲学書や自己啓発書を読んでたんですか…すごい!

当時、いろいろなことが重なって悩んでしまい、自分では抱えきれなくなったんです。

そんなときにふと本屋さんによったら、哲学書のコーナーが目に入って。そこでパラパラっと本を読んでみたら、「哲学にはこんな考えがある」「こんなものの見方がある」といろんな考え方に触れられることに感動したんです。

こうじゃなきゃダメという風に考え方を強要されるわけではなく、本のなかで示されている考えにただ触れられるのがうれしくて。そこから、たくさん本を読んで、新しい考えを知っていって、考え方がすごく柔軟になっていったとおもいます。

──傳谷さんはいろいろ受け止めがちだったり、自分で考え込んでしまうタイプなんですか?

すっごく考え込むタイプです。

今は変わったと思うのですが、昔は一度考え込んでから動いていたので、アクション起こすのにも時間がかかったし、人とお話するときも、なんて答えるかを一度しっかり考えて、すごく丁寧な言葉で返していました。

当時は、完ぺきにしようとしすぎて「ロボットみたいで怖い」というイメージを持たれていました。(笑)

──いま、こうしてお話されている印象はすごく柔らかいイメージです。でも昔はそんな時代もあったんですね。完ぺき主義じゃないとダメという時代が。

中学生時代はよく悩んでいましたが、特に3年生のときは完ぺきに振る舞おうとしていました。

負の感情を表に出さないとか、具体的に人を傷つける言葉を言わないとか、それこそ姿勢を正すとか。何から何まで自分の形を作っている時期がありました。

──そうした抱え込んでいた時期を本で乗り越えました。読書を通してどんなところが変わりましたか?

自分の引き出しが増えたきっかけになったのは、本だと思います。考え方もそうですし、感情面もですね。

小説の世界に私は登場してないので、私が体験できるのはその物語の世界のなかの登場する「彼女」の世界。その「彼女」の立場になって、「こういう場に置かれたら、こういう子はこんな感情になってこういう行動をするんだ」と自分とは違う世界を覗き見できるのがとても好きなんです。

そうやっていろんな世界や価値観に触れられたおかげで、「こうじゃなきゃダメ」という考え方も少し変わったのかなと思います。

──ときどき登場人物で、ありえないくらいいいかげんな人物や、とんでもなく悪いことを考える人物もいますよね。それに対するショックはありませんでしたか?

ありました!読んだあとに心が少しザラザラするというか、「え、そんなことするの…」みたいなショッキングさはあります。物語のなかでそこが消化されないと読み終わったあともモヤモヤしたまま過ごしていました。(笑)

でも、そんな自分にとっては驚くような、思いつかない世界を知られるのも読書ならではだなとも思います。

読書は忙しさも忘れさせてくれる存在

──小学生、中学生の頃にはバスケットボールをしていましたよね。バスケにも没頭する一方で、読書もお好きだったんですか?

小学校・中学校では、部活動のバスケの合間に、水泳・陸上をやったり、ピアノも11年やってましたし、英語も6年やっていたんです。

なので、今となっては「いつ休んでたんだろう…」と思いますけど、その頃はそれが当たり前だったのでフラストレーションは無かったです。読書は学校の休憩時間にしていたりしましたよ。

──一方で、芸能界デビューをされ、さらに忙しくなったと思いますが、それでも読書はつづけられましたか?

つづけてましたね。本の世界に入るということは(今置かれている自分の環境ではない)別のことに集中することなので、むしろ忙しさを忘れられます。

でも、逆に本の世界に入り過ぎてしまうこともあります。たとえば、取材の前に『君の膵臓をたべたい』を読んでいて、そのまま小説の世界に入ったままになってしまって、取材中も続きが気になってしょうがなくてポヤーっとしてまったこともありました。(笑)

本を読むと時間を忘れて何時間でものめり込んじゃいます。

みんなが何を読んでいるのか知るのが好き

──小説も自己啓発書もよく読まれるんですね。

はい。移動時間、新幹線とか飛行機だとだいたい本1冊持っていきますね。新幹線の中で本を読みながら泣いてる人がいたら私です。(笑)

『君の膵臓をたべたい』は、高見(元ベイビーレイズJAPAN)に貸したら読んでくれて…帰り道に読んでクライマックスで号泣してて、「泣くよねーそこ!」って共感しました。嬉しかったです。最近は、特に自己啓発の本を読むのが増えたなって思います。

──最近印象に残っている本はありますか?

最近だと、『潜在意識の書きかえ方』ですかね。先日自己啓発本を何冊か買った中のうちの1冊なんです。

書店のランキングを見るのが大好きで、「みんなどんな本を読んでいるんだろう」と眺めてみて、小説だったら冒頭を読んでその世界に入れるかどうかで買うかどうかを決めます。

自己啓発だったら、ざっと読めんでみて「これは情報量がすごい」「これは手元に置いておかないと」と思ったら買っています。

──本の選び方が確立されていますね。書店にはよく行くんですか?

よく行きます。書店の独特な雰囲気も、並んでいる表紙を見るのも、気になって悩むのも好きですね。何時間でもいられちゃいます。友達と待ち合わせしていて、「ごめん遅れる」って連絡が来たら「ヨッシャ!」って思って書店に直行します。(笑)

──他に自分にとって大事な1冊、何かのきっかけになった1冊はありますか?

ある意味ショッキングだった1冊は、川村元気さんの「四月になれば彼女は」ですね。

なんだかずっと切ないというか、ずっと白いところに閉じ込められているような感覚があって。現実的で寂しいなと思いながら読んでいました。普段はあったかい本を読むことが多いので、ドライなところに「うわ、たしかに、まさに…」ってショックを受けつつ、うなずける部分もあったのでびっくりした作品でした。

ツアーで全国まわりながらオーディオブックで読書

──2年前に『君の膵臓をたべたい』のオーディオブックのことをツイートしていましたが、原作もすごく読んでいらしたんですよね。音声でも聴いてみたくなったのでしょうか?

読みましたし、オーディオブックも聴きました。

小説が発売されてから、映画や漫画よりも先にオーディオブックが発売しましたよね。小説が読み終わってももう興奮が冷めなくて。自分の考え方に主人公の咲良ちゃんが似ていて自分と共通する部分が結構あって、「大好き咲良ちゃん!!」って思ってました。

※▲このツイートのあと、無事に作品をお聞きいただけました…!

──咲良ちゃんに共感しながら読んでいたんですね。

そうですね。でも咲良ちゃんに影響される”ボク”も、なんだかもどかしいけどちょっとずつ変わっていく。この世界観が大好きで。温度的にも暑すぎず寒過ぎず心地よい温度で、2人の会話のテンポもいい。

読んでいながら「すごい!すごい!!」って興奮しているときに、著者の住野よるさんがオーディオブックのことをTwitterで呟いていて、これは聴くしかないと思って聴きました。

そのころは、たしかツアーで全国を回っていたころだったので、なんて便利なサービスなんだと思いましたよ。移動中に読書ができるし、かさばらないし。一度読んでいるとはいえ、物語の雰囲気が音声で楽しめますし、声優の方々も素晴らしかったので、これを手軽に持ち運べるのは最高だなと思いました。

──移動中、ツアー中に聴くことが多いんですね。

あとは、お風呂や、お風呂上がってからも準備とかストレッチしてるときなど常に流してましたね。

重い言葉だからこそいろんな表現ができる

──例えば、オーディオブックの読み手になったら、ご自身で朗読したい本やフレーズはありますか?

『君の膵臓をたべたい』の「死ぬよ」ですかね。咲良ちゃんがとても魅力的な子でした。当時、ベイビーレイズJAPANのメンバー同士で「死ぬよ」を表現してみるというのも実際にやっていました。

『四月になれば彼女は 』でいうと、「愛を終わらせない方法はひとつしかない。それは手に入れないことだ」っていうのがぐっときましたね。少し寂しいセリフですが、はっとしますよね。

──どちらかというと重めなセリフをチョイスなさるんですね。

確かにそうですね。(笑)

たぶん、陽の言葉であれば、みんなわりと同じイメージを持ちがちだと思うんです。でも、陰の言葉は、その人の過去や経験が影響して見方が変わる気がします。受け取り方が人それぞれ変ってくるので、表現の幅もある分、陰が好きなのかもしれないです。

今は、自分の”素”を磨きたい

──これまでアイドル活動をされてきました。ステージに立っていて、ファンの皆さんがいて、自分がどういうことを求められているのかを考えるのも全部想像力かもしれませんね。

そうですね。お客さんやファンの方々が自分のことをどう見ているのか、はじめて私を見た人がどういう印象を持つのかというのは想像力を働かせなきゃいけないところだし、それをうけてどう表現するのかということもよく考えてました。

──小説にでてくるキャラクターに似せて、自己表現をしようなどは思いませんでしたか?

うーん…。できるだけ素でいたいので、キャラクターは作らないことを心掛けています。素を磨けばキャラクターなんていらないと思いますし、素から滲み出るものが個性だと思っています。

だから、自分で形を決めて「こういうキャラクターになる!」と考えるよりは、自分という存在が先にあって、いろいろ経験したりそのまま表現していくなかで出たものが個性だったり本来のキャラクターだったりするのかなと思っています。

──だから、自分の中に引き出しを増やすのが大事なんですね。

そうですね。今ではいいこともいやなことも、全部いい経験になっていると思いますし、いろんな本を読んでいろんな考え方に触れるのが、私にとってすごく大切です。これからも、素の自分を磨いていけたらなと思います。

編集後記

クールビューティーなイメージでしたが、本や映画など好きなものについての話をとても熱く語ってくださる傳谷さん。2年前にオーディオブックがうまく買えないというツイートをされてましたよね…とお話したら、「その時に公式アカウントさんにすごく丁寧に案内してもらいました!」といまだに覚えていただいていて感動しました…。キャラクターを作るのではなく、素を磨いていきたいとおっしゃるその目はとてもキラキラしていました。今後もご活躍応援しています!

傳谷英里香さん出演中▼


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