セールスフォース・ドットコムで講演。オーディオブックサービスのきっかけは祖父の存在

弊社会長の上田がセールスフォース・ドットコムにて講演を行いました。

セールスフォース・ドットコムは能力の異なるさまざまな人材を受け入れており、そのうちの一環として「Abilityforce」という取り組みをされています。

Abilityforce は障がいのある人々、障がいのある家族を持つ従業員、そしてその支援者をつないでいます。 Abilityforce は、お客様や従業員のニーズに応える革新的な手法を見出し、導入することによって、すべての人にとって利用しやすく働きやすい職場環境を作っています。 Abilityforce の目標は、すべての従業員が自身の能力や才能を存分に発揮できるような企業文化を育むことです。社内のアクセシビリティや設備に対する従業員の意識を変えるべく、私たちはさまざまな取り組みを行っています
引用:https://www.salesforce.com/jp/company/equality/ohanas/

今回は、Abilityforce Japanのイベントとして、耳で聴ける本オーディオブックによる読書のバリアフリー化についてお話する機会をいただきました。当日は、セールスフォース・ドットコムの約100名が集まってくださいました。

下記に、当日お話しした内容を少しご紹介させていただきます。

尊敬していた祖父の姿

オトバンクを立ち上げようと思ったのは、幼い頃の祖父の記憶がきっかけです。尊敬していた祖父が緑内障で失明していて、物心ついたときには視覚がない状態でした。

印象的なのは居間のテレビの真横に座って、マラソンや野球のスポーツ中継をずっと耳で聴いていたこと。そして学者だった祖父の書斎には本がたくさんあって、難しそうな本からきれいな本までたくさんあったが、もう何年も読まれていなかったり、虫メガネがあったりしたこと

祖父が目が見えなくなることと格闘してきた形跡が残されていたんです。

この祖父の記憶がずっと心に引っかかっていて、大学3年の就職活動中に自己分析をした際ふと思い出しました。

そこで、目が見えない方のために何かできないか、という主軸で就活をスタートさせました。

目指したのはオーディオブックの一般化

出版社への就職も検討しましたが、やりたいことがオーディオブックとなるとうまくいかず。

NPOも検討しましたが、私が想像しているよりも対象を狭める必要がありそうでした。視覚障がい者として認定されて文字が読めないという方は、3万人ほどいます。でも緑内障、ディスレクシア、老眼、文字が苦手な人を含めて広くとらえると3000万人くらいになります。

また祖父も障害者手帳を持っていましたが、当時から今も各都道府県に1つ以上ある点字図書館で朗読サービスが受けられることを知りませんでした。

点字図書館ではボランティアの方が朗読したCDを視覚障害者手帳があれば無料で借りられます。素晴らしい活動なのですがしかしまだまだ存在が知られてなく、結構調べないと辿り着かないんですよね。

本当に困っている人にサービスを届けたいのであれば、身の回りの人がそのサービスを常識・当たり前だと思っている必要があると僕は思います。

つまり、オーディオブックの一般化です。

オーディオブックの会社を立ち上げることについて、100人に聞いたら100人とも無理だと言われましたけど、難しいチャレンジだからこそやりたいと思ったので起業しました。

創業から14年。現在のオトバンク

自社にスタジオを作り、製作から販売まで一貫して行うことでクオリティが高い音声コンテンツの作り方を試行錯誤してきました。当初は、オーディオブックによって本を買わなくなるのではないかとの懸念もありました。

しかしオーディオブックの場合、本を読む人はオーディオブックと本の両方を買うケースが大半です。本を読まない・読めない人は、聞いてみて面白いと思った作品の原作を買うこともあるみたいです。ですから本の売り上げには影響せず、むしろ微増するとデータが出ています。

私たちが目指すのは、紙の本になりかわることでも市場を独占することでもありません。私たちのゴールは、目が見えない方にとっても、そうではない方にとってもオーディオブックが一般常識となることです。創業当初からずっとそれを目指してきているので、今はまだまだ過渡期という気持ちです。

オーディオブックの聴き方

ビジネス書だと僕は2.5~3倍速で聴きます。新書一冊は約10万字なので、等倍速だいたい5時間くらい。ですが2.5倍速くらいになると2時間で聞き終わって、読むより早いこともあるんです。

速読という方法もありますが、目の筋肉を酷使するから疲労もあります。

は筋肉ではないので、肉体的には疲労しにくい。聞き取りづらくても脳が補完してくれるので内容は分かりますし、2.5倍速なら5分、3倍速なら10分くらい聴く練習をすれば大丈夫ですよ。

文芸作品は声優さんの演技を楽しむために等倍速がおすすめです。1人が何役もやることもあれば、「海賊と呼ばれた男」は100人くらいの声優・俳優さんが参加していて、中村雅俊さんや國村隼さんも参加しています。

テクノロジーとアクセシビリティ

スマートスピーカーの登場でアメリカのオーディオブックシーンが変わってきています。これまでは車で聴く人が60%だったのに、家で聴くのにシフトしてきて70%まで上昇しています。

アメリカでは家の全部の家電が連携して各部屋に1台スマートスピーカーの時代がやってきています。これが当たり前になれば視覚障がいをお持ちの方にとって生活の負担がぐっと楽になると思います。

国の施策とオーディオブック

2016年から施行された障害者差別解消法に加え、2018年だと視覚障害者らが著作物を利用することを促すマラケシュ条約が日本で批准することがほぼ決まりました。そのため、これから情報のアクセシビリティがもっと向上していくのではないかと思っています。


広く、誰でも使えるサービスの提供へ

日本では私たちも頑張っていますが現在25,000点くらい。アメリカは数十万レベルなので早く追いつきたいと思っています。またデバイスに関しても急速に普及したスマートフォンは視覚障がいの方にとっては操作しづらいものです。スマートスピーカーがもっと広まればと思います。

そしてオーディオブックを一般化するために、まずは使ってもらいたいですね。試してもらうためのキッカケづくりとして月額聴き放題サービスを提供開始しました。最初の30日間は無料で楽しめるのでぜひオーディオブックを聴いてみていただけたらうれしいです。


質問コーナー

Q:ご家族の原体験からサービスをつくるために起業したというエネルギッシュさがすごいと思いました。また障害者だけでなく、健常者も楽しめるサービスをということで、サービスの対象を限定しないというのがポイントなのかなと思いました。

A:色々な原体験をされた方がいると思います。ですが大学入学前に祖父は亡くなっていて、生きていたころに何もできなかったという後悔があります。生きていれば「おじいちゃん本を読むね」とできて満たされたかもしれません。ですが、現実は祖父と似た状態の方を救うことが限界なので完全に満たされることなく、常に乾いた状態なんです。だから頑張れるのかもしれないですね。

参加者からの感想
参加された方からの感想もいただきましたので、一部ご紹介します!

・オーディオブックに対する知見が深まり、単に「誰かの朗読を耳から聞く」という以前の認識がより意味のあるものに変わった。

・「オーディオブックを一般常識にしていく」という考え方が、非常に心に刺さりました。今は当たり前ではないものを「当たり前にしていく」ということが、世の中を変える、ということだと改めて気づかされました。

・オーディオブックの存在を初めて知ったが、正直ニーズに関して立ち上げ初期の企業の方同様「日本では難しい」という印象だったが「難しい」は決してNoではないということが学びになった。

◆◆◆

今後も、「本を耳で聴く文化」づくりを目指し取り組みを続けてまいりますので、応援していただけたら幸いです!!

※「ここでも話してほしい」などありましたら、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:https://www.otobank.co.jp/contact/form/

編集:高村美里、SAEKI

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