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伊坂幸太郎氏のお陰で萩の月をもらった話

タイトルに出しておいてなんだが私は氏の作品を「陽気なギャングが地球を回す」以外読んでいない。「マリアビートル」を原作にした映画「ブレットトレイン」は観たが原作を買おうと思ってそのままになっている。どうにも本邦の作家が苦手なのだ。しかし彼の作品のタイトルはよく知っているつもりである。電車の中吊り広告などでよくお名前をお見掛けするし、母は映画化した作品をよく観ている。そして何より彼が宮城県は仙台市に住んでいるからだ。

私自身と仙台市の関係は薄葉紙並みに薄い。母方の実家が青森にあるため夜中に東北自動車道を北上していくと墨を流したような真っ暗な世界で一際煌々と輝く東北唯一の光景にあの光っているところはどこなのと聞いて仙台と返ってきてああ仙台とは凄いところなのだと思ったのが始まりである。
その後小学生になって昼に通りかかった時に丁度七夕祭りの時期であったので寄った。私は彼の祭りの日である八月七日の生まれなので自分の誕生日にこんな華やかな祭りがあるのはなんと素晴らしい事であろうと思った。その後は旅行で二回行った。一度目はただ観光に、二度目はむすび丸ルームに泊まりに。

このむすび丸こそが私の心を仙台に縛り付けた張本人である。仙台・宮城県観光PRキャラクターであるこの可愛いおむすびは最初の頃子どもの小さな掌にすら収まりそうなサイズでそっと売られており、それから宮城県一の有名人伊達政宗公の陣羽織を羽織れるまでに大きくなった。お陰でホテルメトロポリタン仙台にむすび丸ルームというむすび丸一色の幸せ空間が誕生したのだ。この世の天国とはあの部屋の事である。因みにむすび丸は観光課課長であるので普段私は課長と呼んでいる。最初は係長だったのに出世したのだ。
頑張って仙台の事を宣伝しているのでこちらも仙台に詳しくなる。伊坂幸太郎氏が現在仙台市に住んで同市を舞台にした作品を書いている事を知ったのもこのタイミングだ。
むすび丸はコロナ禍以前は県外にもちょくちょく遊びに来てくれていたので都合をつけて会いに行った。池袋で行われた観光イベントに行ったのもこの可愛いおむすびの写真を撮るためである。同じむすび丸ファンの同行者と宮城県ブースに向かうとクイズコーナーが始まったところだった。正解者には萩の月がもらえる。萩の月、あのカスタードクリームを内包した丸い美味しいお菓子。私と同行者は色めき立った。美味しい萩の月を可愛いむすび丸から手渡される可能性。クイズに勝つしかない。
最初のクイズは「ホヤはその形から『海の〇〇』と呼ばれているがその〇〇とは何か」という宮城県ブースに来ている人間なら誰でもわかるもので、その場に集まっていた全員手を上げていた。私達とは全然違う方向にいた人が指名され、無事「パイナップル」と答えてむすび丸から萩の月をもらった。羨ましい。私達も次の問題はどちらかが当てるぞ!と気合十分の中出題者が出した問題が下記である。
「『アヒルと鴨のコインロッカー』『グラスホッパー』などを執筆した仙台市在住の作家の名前は?」
先程のホヤの件があったので手を挙げていいタイミングで即動いた。あの速さは再現出来ない。とにかく誰より先に挙げなければという危機感がもうないからだ。無事出題者の目に留まり、むすび丸ではなく当時のミス仙台から萩の月をいただいた。むすび丸もちょっと近かった、可愛い。無事もらってきたからもう最後のクイズには答えなくていいね、とほくほく同行者の元へ戻ると彼女は割と引いていた。曰く。
「手を挙げている人間が誰もおらず『あっヤバい』という顔した出題者がこっち向いたから視線を追ったら隣にハーマイオニー並みの勢いで手を挙げてる女がいた」からだそうだ。

私にはむすび丸しか見えていなかったし読書の秋の内にマリアビートルを読みたいと思う。

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