コンセプト受容性調査の進め方

新製品のコンセプト開発の次は想定ターゲットにコンセプトの受容性調査を行う。この時の受容性の構造を考える。
<受容性とは何か>
開発したコンセプト(文章表現)をターゲット消費者に提示し、受け入れるか拒否するかの程度が受容性である。
拒否・無視をゼロとし、受容を1とすると、受容性はこのゼロから1の間に分布する。閾値を作れば、販売する・しないの判断にも使える。
ただ、閾値は製品ジャンル、市場状況、社内状況の影響が強く、判断基準より参考データ扱いのことが多い。
<コンセプト受容性から購入意向まで>
コンセプトの受容性調査はまず、定性調査(FGI)で行う。
ここで、読解→理解・納得→共感→関心(ニーズ)をチェックする。
一定程度以上の受容性があると判断されたら定量的な裏付けのための調査に進む。
コンセプト受容性調査では、受容性を超えて購入意向の程度まで明らかにしろと要求される。以下のモデルを完成させることになる。
読解→理解・納得→共感→関心(ニーズ)→検討→購入意向。
要するに購入(意向)に至らない受容性はどんなに精度高く測定されてもマーケティング的に無意味、無駄なのである。
コンセプト受容という心理過程とコンセプトの具体化、製品化とそれの購入という行動過程の間にはそれぞれ大きなギャップがある。
<コンセプト受容性調査の進め方>
コンセプトの受容性から購入意向の把握までの留意点を3点上げる。
①コンセプトとして成立しているか、読みやすいコンセプトシートになっているか?
単なる製品特徴説明、概念が高度すぎる、詰め込み過ぎた長い文章、などをチェックし、インタビュー場面で初めて見た対象者が容易に理解出来るシートになっているか。
「我社の独自技術でおいしく仕上げた」、「SDGsに貢献する製品」、「箇条書きが5(3)本以上あるシート」などは再検討すべきである。
最初の例は、製造技術の説明にしかなっておらずコンセプトとは言えない。
真ん中の例はコンセプチュアル過ぎて、日常品のコンセプトとしてエッジが立っていない(インパクトがない)。3番目の例は、言いたいことをたくさん詰め込んだものになり、対象者の理解を妨げる。
②対象者のコンセプト理解の深度はどれくらいか、こちらの意図に沿った理解かどうか。
すべての対象者はディスレクシア傾向があると考えてコンセプトシートは必ずモデレーターが読み上げる。当然、主文は5(3)行くらいが限度。
現実感のある理解か、いわゆる「自分ごと」として理解しているか。
既存ブランドとの差別性を持った理解か、当のジャンルの既存トップブランドとの混同があると共感・納得性が高くなるが、エッジが立たない。
③購入意向は将来の生活場面での行動予測をインタビュー会場でしてもらうので信頼度は低い。購入意向は価格でチェックする。
購入意向そのものより、コンセプトの理解・共感の現実性(自分ごと)の評価に使うつもりでインタビューする。
全員が買いたいという時は、ポリコレ的正しさ要素、がないかチェックする。環境に優しいなどは「逆らえない」要素でインパクトはない。
「買いたい」の発言は「買う人もいるだろう」の意味であると疑う。「あなたがお金を払って買いますか」とプローブする。
現在の購入ブランドとスイッチするのか、付加して(バラエティーシーキング)買うのかのチェックも行う。
試し買いか、継続購入かの購入意向はあまり信用しない方が安全である。(将来の行動が習慣化するかは普通、想定できない)
購入意向そのものより、価格を提示することで現実感(自分ごと)のあるコンセプト受容性だったかどうかをチェックする。
<コンセプト受容性調査に臨むときのモデレーターのポジション>
以上あげた項目を真剣にチェックしていくとほとんどのコンセプトは否定的になってしまう。そこで、モデレーターは冷静・客観的にチェックするが、決して審判員ではない。心理・心情的にはコンセプトを成功商品・サービスに仕上げるチームの一員という立場で調査・分析にあたる。


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