ヘビーユーザーとアディクション

マーケティングリサーチの企画書や報告書に使う用語を再考するシリーズ第二弾はユーザー特性を取り上げる。
ヘビーユーザー、ロイヤルユーザー、エクストリームユーザー、などのセグメント基準をアディクションの視点を入れて再考する。
もちろん、極私的見解である。
<ヘビーユーザー分析の重要性>
ヘビーユーザーとは購入頻度の高い製品ジャンルでの大量購入者のことを言う。だから、住宅に大量購入者は存在しない。
また、ユーザーと購入者が違う製品ジャンル(ベビーフード)はあるが、購入と利用を特に区別しないでヘビーユーザーと言う。
ヘビーユーザーに注目する理由は、マーケティング効率がよい層だからである。パレートの法則が成立した市場では2割のユーザーで売上(市場)の8割を占めるのであるから、2割のヘビーユーザーにマーケティング資源を集中させた方が効率が良いのは自明である。
<ロイヤルユーザーからエクストリームユーザー>
製品ジャンルではなく、個別ブランドの大量購入者はヘビーユーザーと言わずロイヤルユーザーと言う。
ロイヤルユーザーは購入行動と心理(情緒)でセグメントする。
自社ブランドだけを連続的に買う行動、何故か分からないが好きという心理状態をブランドロイヤルティがあるという。
ロイヤルユーザーは、ヘビーユーザーの部分集合といえる。
何故か分からないが好きとの心理状態がロイヤルティだが、このことは、そのブランドに差別的に優位な「知覚品質」を認識していると言い換えられる。通常、一般ユーザーはこの知覚品質の言語表現ができないし、表現するインセンティブもない。極めてわずかだが、言語表現できるユーザーがいて、これをエクストリームユーザーと言う。
メーカーの経験者ではないのに、機能・性能、デザイン、使用感などの知覚品質を具体的に言語表現できる一般消費者がいるのである。
エクストリームユーザーのインタビューは作り手の思惑を超えたインサイトの発見があるが、リクルーティングが難しい。
<ロヤルティとバイラエティシーキング>
マーケティングのロイヤルティの対概念はスイッチャーになる。
スイッチャーにはランダムウオーキングと、バラエティシーキングがある。前者はその名の通り、ランダムにブランド選択するのでブランドスイッチしているとの認識もないことが多い。後者は目的志向であり、そのジャンルでのアソート感覚を楽しんでいる。スイッチャーに2種類があるとの認識は分析上、重要である。
<ロイヤルティと認知的不協和>
認知的不協和が起こりやすい商品ジャンルでのロイヤルティは購買行動に直結しないことが多い。
住宅、車、家具が最たるもので購入意思決定後に必ず認知的不協和が発生する。認知的不協和とはある意思決定をした瞬間、その意思決定で排除した選択肢の方が良かったのではないか、という不協和が発生することをいう。
その解消のために購入ブランドの肯定的情報(CMなど)に積極的に接触する行動が生まれる。この認知的不協和解消行動は当然、でロイヤルティを形成する。
耐久財だけでなく、ユース(使用)で消えてなくならないもの、洗剤、化粧品、ゲームソフト、スマホなどにも認知的不協和があるので、これらのロイヤルティ分析には注意が必要である。
<嗜好性とアディクション>
「なぜかわからないがこっちが好き(選ぶ)、嫌い(避ける)」という心理状態を嗜好性という。嗜好性は甘味嗜好のように進化的に組み込まれたものと成長期に学習する(苦味許容)ものとがある。
アディクション(依存症)は「身体や心によくない、社会的に問題であるとわかっていながら使用・摂取を止められない行動を言う。
麻薬は別として、タバコ、アルコール飲料、甘味食品、ゲームソフトなどがマーケティングのアディクション問題といえる。
マーケティング活動は消費者の嗜好性に働きかける作業と言える。
その嗜好性が高じると依存性を持つようになる。
身体や心、社会性に大きな問題がなければアディクションをめざすのが究極のマーケティングかもしれない。
この考えはポリコレ的にたたかれる可能性がある。

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