ラダー図からペルソナ

前回、レパートリーグリッド発展法、評価グリッド法、ラダリングの考え方と使い方を述べた。
今回はラダリングのラダー図の使い方を詳しく述べる。前回同様、ライトウェイトスポーツカーの開発プロセスをとりあげる。
<開発プロジェクト>
ベストセラーのユーノスロードスターとCRXデルソルの比較価値分析することでスポーツカーの新ブランドを開発したい。(30年前)
そのための調査として両車10人ずつ20人のオーナードライバーに1on1インタビューを行い報告した。
この調査を含め膨大な予算と時間をかけた「次世代ライトウェイトスポーツカーのコンセプト」をマーケティング部門が全社にプレゼンした。
その席で、現場のデザイン、エンジン、シャーシの技術担当が「理解できない、納得できない、これでは設計作業に入れない」とクレームの嵐でプロジェクトが暗礁に乗り上げてしまった。そこで、調査の再設計を求められた。
<マーケは相関関係で満足、現場は因果関係を要求>
その後、マーケ部門、技術部門と何回か打ち合わせをするとマーケ部門はデータの相関関係にしか興味がなく、それ以上は現場で考えて欲しいとの姿勢であり、技術・設計部門は相関関係だけでは設計の方向性が複数になり決められない、リサーチ結果と関係なく我々が決めていいのか。
この姿勢の違いは組織固有のものだが、プロジェクト完遂には、あらゆる具体作業(原因)がコンセプト(結果)と1本の因果関係で結ばれる必要がある。マーケ・調査部門が相関関係だけでなく、因果関係まで提案する必要がある。となった。
<ラダー図は因果関係を示す>
前回、下位概念から上位概念に張るリンクは1本に限定する、というラダー図作成の原則を述べた。
下図で説明すると、「ハイブリッド」ー「燃費のよさ」のリンクは、「ハイブリッド」ー「静粛なエンジン音」にもリンクが張れそうであり、実際のインタビューでもそういう発言はあった。
ただ、そのリンクを許すと「静粛なエンジン音」という上位概念が、ハイブリッドと電気モーターという2つのスペックに落ちることになり、設計部門は手が止まってしまう。(どっちにするんだよ!)
リサーチ的考えでは相関係数が大きい方を採用することになるが、ラダリングは定性的方法である。
どのリンクを採用するかは、モデレーターの判断とクライアントの意見で決めていく。
ラダー図は定性的に因果関係を決める。完成したラダー図は現場の迷いをなくす効果がある。

<ラダー図はペルソナ作りに役立つ>
ラダー図はパーソナルコンストラクト理論に基づいているので集団ではなく個人の認知構造を表現している。
評価グリッドでロードスターとデルソルを比較させるので対象の所有車の嗜好が大きく表現され、個性的なラダー図が出来上がる。
20人の評価グリッドからは20枚のラダー図が上がってくるし、それを「集計」したラダー図は作れない。
そこで、ラダー図を使うときに「最も使えそうな」1人のラダー図を選ぶことになる。プロジェクトチーム全員の参加で1枚(1人)を選ぶ。
実際にやってみると、メンバー間の意見の相違は大きくなく決定は早い。選ばれたラダー図はペルソナとして使える。


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