フランスで(多分)コロナウィルスに感染した話(2)

フランスで(多分)コロナウィルスに感染した話の追記です。

発症から一週間目くらいに一度平熱になり、それでてっきり治ったと思ったのですが、このころから胸部に若干の痛みが現れました。熱はさがったのになぜ胸部に違和感があるのだろうと不思議に思いましたが、その日はそのまま放置して寝ました。すると翌日、再び体調が悪化しており、体温を測ると38度あります。全然治っていませんでした。しかもあくまで軽いものですが息苦しさが新たな症状として追加されています。最悪なのはこの日オンラインで大学の試験があり、3時間で小論文を提出しなければならないことでした。試験は受けなければならないので熱でぼんやりした頭の中がんばって小論文を仕上げたのですが、これが悪かったのか、午後には39度を超える熱が出てしまいました。熱が39度を超えると本当にしんどいです。眠ることができれば楽なのでしょうが、苦しくて眠ることすらもできません。巨大な芋虫のように布団に転がってぼんやりと時が過ぎるのを待つことしかできません。息苦しさもあるので、やはり死ぬのかなという感じがありました。息苦しさは、僕の場合は、例えば人と話すとき、言葉を一つとか二つ言うたびに、ひと呼吸しなくてはならない、くらいの感じです(説明がわかりにくくてすみません)。呼吸しているとかすかではありますが「ひゅー、ひゅー」という音が咽頭を通ります。眠ると、じっとしているのにまるでマラソンを走り終えたかのように異常に汗をかきます。どのくらい発汗するかというと、汗が体をだらだら伝う感触で夜中に目が覚めるほどです。一度自分の寝ていたシーツを見てみると、文字通り水たまりのようになっていて自分でドン引きしました。

幸い翌日になると熱は再び38度台に落ち着いていました。前の週には39度を超える熱が何日か続いていたので、38度台が「微熱」に感じます。39度を超えると動くのもしんどいですが、38度台だととりあえず動くことができます。この日は大学の医師に遠隔診療で診てもらいました。前のときに診てもらっていた医師と言われたことはほぼ同じです。「あなたは軽症なので、とりあえず経過観察ということにしましょう。ただ、じっとしているのに激しく息切れをするようなことがあればすぐに15(フランスの救急車の番号)にかけてください」と言われました。こんなに高熱が続いても「軽症」なんだな、とわかってはいても多少驚かずにはいられません。ただウィルス殺し薬はないのだし、僕の住んでいるGrand-Est県はフランスで二番目にコロナウィルスの被害が大きく、また僕はまだ20代の非喫煙者で持病等もないため、自宅療養が最適、というか消去法でそれしかないというのはまあ理解できます。その一方このまま重症化して人工呼吸器がなければ最悪の場合・・・ということもありえるのだなということが容易に想像できてしまい戦慄しました。医師によると大体7日から10日で症状が改善する人と逆に悪化する人に分かれるとのことでした。

翌日には熱が37度台になりました。38度台が「微熱」に感じるので37度台は「平熱」に感じます。

そのまた翌日には36度台になり、胸の痛みがなくなったことに気づきました。これまでは悪寒がひどかったので毛布を何枚もかけてぶるぶる震えながら寝ていましたが、悪寒がなくなり布団を一枚かけて寝ました。一度36度台になった後で熱がぶり返しているので警戒していましたが、それから二日たった今に至るまで平熱が続いています。

今日、医師と再度遠隔診療をしたのですが、症状はよくなっているもののまた熱が上がる可能性があるので最低でも一週間は注意してください、とのことでした。また当然ですが、ほかの人にうつす危険があるため、治ったと思っても8日間は外に出ないようとのことでした。

具合が悪い間にインターネットで他のコロナウィルスに感染した人の体験記をいくつか読みましたが、僕の症状とほぼ同じでした。一番の共通点ははじめは微熱なのがすぐに39度、40度まで上がり、高熱がおよそ一週間かそれ以上続くことでした。

コロナウィルスはインフルエンザのようなものだと言う人がいますが、あくまで個人的意見ではあるものの、このような体験をした後ではそれは全くの間違いだと言わざるを得ません。単純に僕の感じたしんどさで言えば、インフルエンザとコロナウィルスはヤムチャと完全体セルくらい違います。もちろんインフルエンザがヤムチャです。

さんざんメディアで目にしていてみなさんも耳にタコができるくらい聞いた言葉かもしれませんが、コロナウィルスは恐ろしい病気です。完全体セルくらい恐ろしいです。あるいはもっと恐ろしいかもしれません。気を付けすぎるということはないと思います。フランスはウィルスが拡がり始めてから比較的はやくロックダウンしましたが、それでも被害が抑えられているとは言い難い状況です。僕はフランスでコロナウィルスの被害が拡大していった経過をよく覚えています。初めはテレビで中国から帰国したフランス人を、フランスのとある街で二週間隔離するという内容のニュースをみて、このときフランスはちゃんとやっているんだなぁと思いました。その後僕の住んでいるストラスブールでは、イタリア旅行から帰ってきた家族がコロナウィルスに感染し、軽症ではあるものの病院で治療を受けているというニュースを見ました。僕の記憶ではこれがストラスブールで初めてのコロナウィルス罹患者でしたが、このときは感染経路をたどることができていたと思います。Grand-Est県で感染が拡大したのは、教会の集まりで集団感染がおこったためです。それでもストラスブールでは感染者は初め50人程度でした。それがだんだん数百人になり、気づいたらフランス全土で毎日1000人以上が感染するというような状況になっていました。このスピードは圧倒的でした。前述した通り、フランスでは外出禁止令とロックダウンを比較的早めに行っています。それでも被害はここまで拡大しました。日本は外出自粛要請(つまり法的拘束力はほとんどなく、外に出ないでねというお願い)のみと聞きましたが、フランスの感染の拡大の仕方を知っていると、これで大丈夫なのかな、と日本の皆さんを心配せざるを得ません。亡くなるのは確かにお年寄りが多いですが、持病・喫煙・飲酒歴のない若者でも感染すればこのような状態になります。僕の体験が何かの参考になるかはわかりませんが、皆さんも手洗い・うがい・自粛を徹底してご自愛ください。

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