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【タイヤの怖い話】ディーラーは顧客の事故を願う?

意外と自動車ディーラーはタイヤについて積極的に交換を勧めてこない。

ここでいうディーラーとは、メーカーの看板を掲げる正規販売代理店のことで、街の中古車屋さんは含まない(街の中古車屋さんはピンキリすぎて一概に言えないからだ)。

車に関わる仕事をしていると、習慣的に人の車の状態を観察してしまう。

車は持ち主の人柄を表す。

車内が汚い人は、きっと自分の部屋も汚い、といった具合だ。

タイヤは安全に直結する重要な部品だし、外から見ることができるので特に気になる。

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( ↑ 空気圧の低下により破裂してしまったタイヤ)


最近たまたま居あわせたマダムと駐車場で立ち話をしていると、やはりタイヤの状態が目に入る。ぱっと見、中央はなんとか溝は残っているが、外側は片摩耗しており山はない。

「どうして子供たちを乗せるのに、こんなにタイヤがつるつるなんですか?(貧乏そうには見えないし)」

「え、まずい? 先月 ディーラーで車検をとった時には何も言われなかったから、気にしてなかったの。」

むむ、、、俺がサービスフロントなら、新品タイヤを買ってくれるまで危なくて顧客には運転させられないけどな、、、

寒気がした。

以前も似たようなことがあったことを思い出した。普段はディーラーで世話になっている人(どちらかというと車に詳しくない普通の人だ)から、冬用タイヤについて相談されたとき、彼はひどく古いスタッドレスタイヤを履いていた。

側面こそ艶出し剤が塗られ、黒く光沢を放っていたが、接地面はボロボロで、とてもじゃないが凍結路で戦えるようなものではなかった。

ここで怖ろしい仮説が立つ。

ディーラーは、ユーザーが事故るの願っている説。

そんな、ディーラーだってタイヤ売上が増えれば、利益につながるじゃないか。それに事故を願うなんてそんな悪人なわけないよ!

という声が聞こえてきそうだが、これはあくまでも私のひねくれた仮説だ。

スタッドレスタイヤは滑りにくいと思われているが、実は雨の日は普通の夏タイヤ以上に滑る。雪や氷では古いものは特に滑る。


仮にユーザーが古いスタッドレスタイヤで事故を起こすとしよう。

当然なら事故の連絡はディーラーにもされ、手厚いケアがされる。事故車の引き上げから、保険金の請求まで、全てやってくれる。ユーザーに寄り添い、パニックに手を差し伸べる。

ひとしきりすると、ディーラーの営業担当者が言う。

「大変な事故でしたね。原因は古いタイヤのせいでした。でもこの安全性の高いメーカーの車だったからこそ、お客様は無事で済んだんですよ。」

「車は全損になってしまいましたが、車両保険金がおります。これでローンを払いきり、残りを頭金にすれば、今までと同じローン月額で、最新モデルに乗り換えることができます。追加の支払いはごくわずかです。」

「今なら、ちょうどお客様の次の車にお似合いの在庫があります。これなら今月にも納車可能です。」

良い話じゃないか。事故を起こしたのに、たった2,3週間も待てば、月額の支払いも変わらず、新車に乗れるのか。

間違い、ではない。しかしワナ、でもある。

まず、毎月のローンは変わらないが、支払期間が延びている。さらに、保険を使うことで等級がダウンし、翌年以降の保険料が上がる。だが、これはすぐにはキャッシュアウトしない未来の支出なので、ユーザーへの印象は薄い。

ディーラーにとっては、タイヤ売上を控える代わりに新車売上を稼ぐ。ついでに販売台数とローン契約数の実績ノルマも稼ぐ。さらに言うと、翌年以降に上昇した自動車保険料は、代理店であるディーラーに手数料という形で保険会社からバックされる。

人としてうんぬんは抜きにして、タイヤを売らずに事故を誘発したほうが経営判断としては正しそうだ。

ちょうど買い替えたいと考えていた人にとっては渡りに船かもしれない。最近の車はスリップ事故くらいでは死にはしないかもしれないが、それでも家族を危険にさらす選択などできるだろうか?


では、なぜタイヤメーカーのコマーシャルは危機感に訴えかけるようなパンチがないのか。

「ちゃんと買い」とかふわっとしたことばかりで、「ディーラー任せにするな、これほど危険だ」なんて強いメッセージを出せば、きっと自動車メーカーに怒られてしまう。

自動車メーカーの機嫌を損ねれば、タイヤメーカーは大きな取引先を失うことにつながる。

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( ↑ タイヤ交換は信頼できる専門のショップを見つけよう)


ここでタイヤのことなんて全然わからないひとのために今回は冬のタイヤ選びヒントだ。

濡れた氷はつるつると滑るが、乾いた氷は滑りにくい。スタッドレスタイヤはゴムの柔らかさにより凍結路と接地するタイヤとの間の水分をかき出すことでドライな状態を作り出すことで氷の上でも滑りにくくしている。

そしてタイヤはゴム製品なので、使わなくても自然に硬化していき、排水能力が低下していく。つまりタイヤは賞味期限のあるナマモノなのだ。

その賞味期限は4年が目安だ。これは保管や使用状況により大きく変動する。

さらにスタッドレスはこれを選んでおけば大間違いはしないであろう有力な銘柄を列挙しておく。ブリヂストンのブリザックヨコハマのアイスガードミシュランのX-ice Snow だ。


雪道の運転が大好きな北海道民のハーフとして言っておく。

空気圧をチェックしろ。

タイヤはケチるな。



※本文及び掲載される画像は、特定のメーカーや販売店の推奨及び批判を目的としたものではありません。

(文・稲川大資)



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