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カブトムシ

夜は日中からうって変わって涼しいので最近出歩くことが多い。昨日も近くのコンビニまで行って、ガリガリ君梨味を買いに出かけた。

どんな音楽を聴きながらコンビニに向かおうか携帯を漁っていたその時。私の足元に感じる黒光りに一瞬ゴキブリかと思って身をよじらせた。

しかしよくよく見るとなんか違う。カブトムシだ。しかもなかなか立派なオスだ。しっかりとした一角を尖らせ、6本の強靭な足でコンクリートの上を闊歩していた。

こんな街中にいるのも珍しい。誰かが飼育しているものが逃げ出したのだろうか。最近は大人でも熱狂的なファンがいて、希少な種類で行くとなかなかの金額で取引されるらしい。

私は福岡の中でも自然があまり多いとは言えない場所に住んでいたのであまり昆虫と触れ合う機会が少なかった。というより昆虫があまり得意ではないので意図的に出会いを避けていたという方が正しい。

しかし昨日出会ったカブトムシには、むしろ愛嬌があってなぜか目が離せなかった。慣れない環境で一人戦っているようにも見えて、少し自分と重なった。



山口県に移住して約2年。仕事を通して学生の時には分からなかった社会のことを少し学んだ。経理とか経営とかハード面の部分は全然分からないけれど、「会社」というものについては色々感じることが多かった。

自分を取り巻く環境、つまりどんな場所でどんな人と一緒に何の仕事をするか。これがとても大事。当たり前だけど、ちゃんと自分の意思で環境を選んでいる人って少ない。今の私もそのうちの一人だ。

「環境のせいで会社を辞めるのは逃げだ」と言う人もいる。けれどそれは自分の環境をあるべき場所に変えていきたいという人間が本来持って当たり前の意思の現れなのではと感じる。

今は当たり前のように存在している仕事がなくなり、代わりに今まで想像もしなかった職業が生まれる。人類の発展とともに私たちが生きる環境は今も目まぐるしく変化をしている。

そんな時代の流れや自分の意思と孤立して、私は今を生きている。

自分の意思を貫く時期は近い。変に焦らず、確実に今よりステージアップできるように、前に進むだけだ。



カブトムシの写真を記念に数枚撮り、その場を後にした。

コンビニから帰る頃にはカブトムシの姿はなかった。ガリガリ君梨味を頬張りながらカブトムシと自分の行く末を妄想しながら帰った。




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