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大英博物館マンガ展 レポート

ヨーロッパにいると
日本と言えば「MANGA・ANIME大好きだよ!」と返って来るほど
今や世界的に人気となった日本の漫画・アニメーション。

ついに…イギリス・大英博物館で
The Citi exhibition Manga 展が催されましたね!


海外展示では過去最大と言われるこの展示を
6月初旬に観てきたので、レポートしたいと思います。

大英博物館には無料で入館できますが、
マンガ展はエキシビジョン展示となっており
時間入場制のチケット(大人 £19.50  /約2700円)を購入する必要があります。

マンガ展は本当に、マジで、大人気の展示らしく
ふらっと当日券を買いに行くと売り切れになっている場合がありまして…!!!

ええ、私が昼頃訪れた時にはもう完売していたので翌日出直しました…。


時間的にタイトな旅程の中、ご覧になる方がいらっしゃいましたら
事前にチケットを購入しておくことをお勧めします!

英語の案内のみですが、オンラインでの購入もできるようです。
https://www.britishmuseum.org/whats_on/exhibitions/manga.aspx



さて、展示の方に行きましょう〜


「マンガ」の認知度が上がったとは言え、
アジアの一国で盛り上がってる大衆画…くらいの認識しかない方も
来館されているので。

日本のマンガの前知識がないイギリスの方にも
より身近に感じてもらえるように、

まず導入で
イギリスでお馴染みの作品「アリスの不思議な国」が
日本の漫画でも数多くの作品にモチーフとして描かれていることが
紹介されています。

アリスと一緒にうさぎの穴を抜けて、マンガの世界へご招待…なんて
訪れた人みんなを主人公にしてくれる、心ときめく演出ですね。

エントランスには
アリスモチーフの作品の原稿が数点展示されていて、
様々なジャンルで、多様な描かれ方をされていることが伝わります。

そして、このイギリス版では「文章と挿絵」だったアリスが、
日本のマンガ版では「白黒で、分割された連続イラストと台詞」という
独特の画面でストーリーを伝えようとしてくる。

これが、「マンガ」という表現方法。

既知の作品との比較によって、ひと目見ただけで
マンガというものの本質が伝わるように置かれています。


さて。

ラビットをナビゲーターに奥へ進むと…

近代の浮世絵から現代にかけて急激に発展していった日本のマンガの歴史、
手塚治虫先生のインタビューによる
鳥獣戯画から学んだキャラクター表現など、
マンガ表現のバックボーンについて触れられています。

ラビットが時空を越えて…鳥獣戯画の兎に替わっちゃいましたね
…かわいい…

また、本の閉じ側が日本と西欧では逆になるため、
コマ割りによる読み方のルールや
記号などによる感情表現の解説など…
私たち日本人には慣習として馴れ親しんでいる表現が
丁寧に説明され、
より展示されている原稿への理解ができるように工夫されています。

マンガを描く道具なんかも展示されている…

こちらは東村アキコ先生のかくかくしかじか。
日本語そのままの原稿の上にアクリルボードをかぶせ、
英訳がつけられています。

一作ごと、展示がオシャレだし見せ方が素敵ですね!

でもそれだけじゃないんですよ。
ジャンプ(集英社)とマガジン(講談社)の編集部の様子が
映像展示されている…!!!

ただの…
…むしろ…ごちゃついてて汚い系のオフィス映像だけど

いやしかし、これぞマンガの編集部、デスヨネー!!

マンガが世に出るまでの一連の制作風景という点において
編集部まで展示してしまおうっていう発想、

すごい。

ていうか、
ライバル社のライバル誌の編集部を展示するなんて。

すご豪華すぎー!


そう多分、国外の、大英博物館だったからこそできたこと。

出版社・ジャンル・年代・カテゴリーを越えた
様々な作品の原稿が

次の展示エリアに並んでいるのです!!

手塚治虫先生の鉄腕アトム。
アニメの映像も一緒に展示されています。

萩尾望都先生 ポーの一族。

アニメを通して日本のマンガを世界的ブレイクに繋げるきっかけとなった
ドラゴンボールとセーラームーン。

展示室のセンター部分に資料としての近代の漫画を見せ、

パーテーションを一枚挟んで造られた壁側の通路では
ヨーロッパでも有名タイトルの原稿を、一枚ずつ見せる。


芸術絵画のように、

堪能させるように、

記憶からその世界へ入り込めるように。



とはいえ漫画は元々、大衆向けエンターテイメント。

自由に手に取れる書籍スペースが配置されていて、
触れて、読むことができます。

気になった作品を見つけたら
QRコードから英語版の電子書籍をその場で購入できます。

「日本での漫画の親しまれ方」そのものを、その場で再現できる…

そして、本を開けば物語が広がっていく。

モーションコミックになった
宗像教授異考録 大英博物館の大冒険を通して、
イギリスとの繋がり、リアルとリンクをさせながら
絵画ではなく「ストーリー」としての魅力に進んで行きます。



ああ〜〜〜なんという贅沢な 展 示 !!!


ジャンルの分け方を見ていると、
日本と同じような「スポーツ」「冒険」「SF」…などもありますが

恋愛カテゴリを「リビドー(復讐なども含む)」にしていたり、
「生き方」としてLGBTqを取り上げたり、
特別に「宗教」を取り上げて聖⭐︎おにいさんを紹介したり、
「ホラー」のところに妖怪ウォッチが置かれていたり…

ゴールデンカムイのアシリパさんがマンガ展のキービジュアルに選ばれている通り
その多様性と文化的価値観が日本とは違うんですね〜。


日本だったら対象性別・年齢などによる分類や
出版社の垣根があるものですが…


展示種類も

修正・切り貼りの入った原稿
一部デジタル仕上げの原稿
アナログカラー仕上げに、ネームの展示…

なんと言っても

ヨーロッパにもファンの多いタイトル作品ばかりが並んでいるので
本っっっっ当に贅沢!!!!


ここを目当てに来ていたマンガファンの人たちも
みんな大興奮! だよねーわかる!!!

英語の他に日本語、中国語、スペイン語、その他私の知らない言語も
あちこちから聞こえてきてたので
改めて、ファンの熱量が感じられます!


ああ〜〜でも写真禁止の作品も結構あるから、それは撮っちゃダメですよ!!


作品の一覧はコミックナタリーさんの記事にまとまっていたので
リンクを貼っておきますね。


ファンの熱量の高さは
より社会的なアプローチにも影響するということで、

美術館や社会的啓蒙、
啓発ポスターなどにも利用されているという発展性

あるいは

ファン同士が集い盛り上がるコミケなどの
ファンイベント開催

そして
新しいコスプレという文化へと変化していることも紹介されています。


もちろんイベントだけでなく、

「ポケモン」のように
(写真禁止:ここが一番ファンと警備員さんの攻防が激しかった…)
アニメだけでなく
カードやゲームに展開してくコンテンツとしてのマンガ

そして

芸術作品へと昇華したものまで展示が続きます。

アニメーションの紹介として
ジブリの作品と制作風景が映像展示され

また、漫画のライブドローイングなども見学できるようになっています。


そして

記念写真が撮れるブースで写真を撮ると

自分の写真がマンガになっちゃう!!


展示の終わりに、
マンガの世界を旅した記録を楽しみながら残すことができるんですね〜。


この先、グッズショップへと続いて
展示は終わりとなります。

展示されていた漫画の英訳版やキャラクターグッズ、
あるいは漫画の源流となる浮世絵や鳥獣戯画のアイテムまで
ずらーっと揃っておりました〜。



さて、レポートはいかがだったでしょうか。

実際に見にいった感想は…やっぱり

見に行ってよかった…!!!



写真撮影不可の作品も多く、
そういうものほど…見たい!撮りたい!!っていう作品ばかりだったので
実物を見られるのは本当に貴重な機会だなと思いました。

加えて

大英博物館の展示は、
印刷物の版画としてしか利用されていなかった漫画原稿を
美しく魅せ、芸術作品として扱ってくださっていて、
日本の漫画業界の末席にいる身としても、とても嬉しかったです。


細やかな演出や配慮が行き届いており、

マンガをよく知らない人も、
日本の浮世絵などのアートにしか興味がなかっただけの人も、
すでにアニメから作品を知っているファンの人も、
私のような漫画制作者や他のアートジャンルの人に至るまで

より深く知り、楽しみ、共有できる

マンガという文化に対してリスペクトに溢れた想いが
訪れる人々に伝わってくる
とても素晴らしい展示でした。


日本からはさすがに遠いですけれど…
こんな素晴らしい展示を見られる機会はなかなかないのでは?と思います。

そして、

私たち日本が、そしてマンガが
海外からどういった目線で見られているのかを
肌で感じることのできる貴重な機会でもあったな、と感じました。

実際に、展示されている場でしか見られない貴重な原稿も
多く展示されていますので…もし可能でしたら

ぜひ

イギリスの観光ついでに、大英博物館のマンガ展で
海外から見たマンガの楽しみ方を堪能していただけたらいいなと思います。


⭐︎おまけ⭐︎
さすがに公共の博物館なのでコスプレしてる人は見かけなかったのですが
一人だけ…ワンパンマンに遭遇したので、写真から探してみてください〜!
(コス禁止じゃないかもしれませんが警備員さんに止められてたので…そこは自重した方がよさそうです)


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