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本からこぼれた言葉

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[「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと]

[「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと]

初版発行:2023年月18日
著者:村田慎二郎
出版社:サンマーク出版
ジャンル:一般

 今回、この本を甥っ子にクリスマスプレゼントとして択んだ。
 文章は平易で、避けて通られない政治が絡む厳しい医療現場ながらそれらが丁寧に表現され生徒が読んでも国際情勢をそこそこ読み取れる。
 また、彼が国境なき医師団に入団を決める過程も将来を悩む人には参考になるだろう。

 動画でクラシックコンサートを見る際

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[台所のラジオ]

[台所のラジオ]

初版発行:2017年8月18日
著者:吉田篤弘
出版社:角川春樹事務所
ジャンル:小説*文庫

 掌篇小説と呼ぶべきかショートショートなのか、どちらにしてもお隣りの町への電車移動中に問題なく読みあげられる一遍ら。
 表題にあるように掌篇に共通することは「台所のラジオ」、これだけでももう十分に昭和的なレトロ感がある。実際、私もキッチンに立つときは音楽を流すがそれはスマートフォンから繋いだスマートスピ

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[服は何故音楽を必要とするのか?]

[服は何故音楽を必要とするのか?]

初版発行:2012年12月10日
著者:菊地成孔
出版社:河出書房新社*文庫
ジャンル:エッセイ

 「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽についての考察と老眼の方には見えないほど小さな文字で表紙に書かれている通りの本。
 ご本人がおっしゃるように本業音楽家の彼がファッショ雑誌に連載の依頼を受け、言い訳のような、上手に折り合ったとでもいう着地点から語られている切り口

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[つむじ風食堂の夜]

初版発行:2005年11月10日
著者:吉田篤弘
出版社:筑摩書房
ジャンル:小説

 吉田氏の本はこれが最初ではない。ある程度予想はして、頁を開いた。
 ことば一つ一つがとても丁寧で柔らかい。少し前の時代昭和とも違う、私たちが現実に生きているこの時間軸ではない、此処ではない例えば「裏側にこんな世界がありました」と云われると信じてしまうような街角が描かれている。
 月船町の十字路角にあるつむじ風食

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[水の生きもの]

[水の生きもの]

初版発行:2013年10月19日
著者:ランバロス・ジャー
出版社:河出書房新社
ジャンル:絵本

 その日買い物は書店が目的ではなかった。書店の横を通り過ぎる際にふと一冊の本が視界にかかる。最初は微妙に引っ掛かりがあるもののそのまま二三歩を歩を進めたのだが、やはり気になり引き返して手に取ってみた。
 その本は決して派手にも、大仰にも棚に置かれてはいなかった。

 タイトル写真はカバーがかかった状

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[全身編集者]

[全身編集者]

初版発行:2019年5月16日
著者:白取千夏雄
出版社:おおかみ書房
ジャンル:自伝*半生記

 「伝説の雑誌「ガロ」元副編集長が語り下ろした半生記・半世紀。
師・長井勝一との出会い、「ガロ」編集としての青春、「デジタルガロ」の顛末と「ガロ」休刊の裏側。
慢性白血病、最愛の妻の急逝、悪性皮膚癌発症、繰り返す転移と度重なる手術という苦難の中、それでも生涯一編集者として生きた理由、「残したかったもの

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[月の文学館 月の人の一人とならむ]

初版発行:2018年7月10日
著者:和田博文
出版社:筑摩書房(文庫)
ジャンル:小説(アンソロジー)

 アンソロジーの良さは:
 1 偏った自身の選書からは手には取らないだろう作家と出会える
 2 1の場合の作家との相性云々リスクがアンソロジーという形態のお陰で
   比較的少ない
 3 ブックトークに似ているアンソロジーは編者によって一作品だけでは
   出ない良さが他作品との相乗効果

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[出世ミミズ]

[出世ミミズ]

初版発行:2006年2月25日
著者:Arthur Binard
出版社:集英社文庫
ジャンル:エッセイ

 アーサー・ビナード氏の本を読んだのはこれが最初ではない。初めて彼の本を読んだときに「訳者」を探したほど日本語が巧でいらしたことと物事の捉え方に共鳴することが多かった印象を持つ。

 私はこの先可能な限りの時間を全て注いでも英語で自身の考えを母国語のように繰ることは出来ないことは確か。
 イ

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[井浦新の日曜美術館]

[井浦新の日曜美術館]

初版発行:2014年8月6日
著者:井浦新
出版社:青幻舎
ジャンル:エッセイ

 本は常に10冊程度同時読みをする為、昨日のUPに続く形になる。
 国立新美術館へ行った際にベタだわと意識しながらも他のデザイン品と共に購入する。
 この本に惹かれたのは書名「日曜美術館」ではなく作者「井浦新氏」本人。
 彼を観る目的ではない映画の中で、気が付くと彼の演技を観ていることが何度かあった。印象に残る役者だ

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[ガソリン生活]

[ガソリン生活]

初版発行:2016年3月30日*文庫版
著者: 伊坂幸太郎
出版社: 朝日新聞出版
ジャンル: 小説

 この本に限らず、映画、音楽、写真、絵画、所謂「芸術」と一般に云われるものや感性が大きく関わるものにそもそも優劣は存在せず、個人的にその作品を受けいれられるのか、つまり作者(作り手)とその時点の感性が似ているかどうかが「個々の作品の受け入れ判断」なのだと考えている。当然、同じ作品でも受け入れ側の

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[時の罠]

[時の罠]

初版発行: 2014年7月10日*文庫版
著者: 米澤穂信、万城目学、湊かなえ、辻村深月
出版社: 文春
ジャンル: 小説

 こうしたアンソロジーは購入したことも無くて例えるには恐縮だが宝くじに似て外す可能性が含まれる。一方、好きな作家、ジャンルであればある程度自ら対象を絞り、アンテナも自分の興味に関しては磨かれる分外すことは少ない。結果から先に伝えると、私は★5満点中「1★」、残念である。
 

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[時事ネタ嫌い]

[時事ネタ嫌い]

初版発行: 2015年9月20日*文庫版
著者: 菊池成孔
出版社: イースト・プレス
ジャンル: エッセイ

 菊池氏を知ったのは映画絡みだ。映画「セッション」をめぐって町山智浩とネットで論争を繰り広げていた事が契機で菊池氏の他の本を読みたいと食指が動く一方、申し訳ないが町山映画評論はアンテナにかからなくなった。
 先ず文筆家の文章ではないこと、生業はジャズミュージシャンであることを前提に手に取

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[バイバイ、ブラックバード]

[バイバイ、ブラックバード]

初版発行: 2013年*文庫版
著者: 伊坂幸太郎
登場人物: 星野一彦、繭美
ジャンル: 小説

 「オーデュポンの祈り」から始まって全部とは云わないが殆ど彼の本を読んでいる。今回も又これまでのように購入してしばらく本棚で仮眠させてしまった。彼の本には「大きくは外れないだろう」という希望的観測があり、併せて此方の気持ちが良いbestの時に読みたい…etc…があると、こうして店頭に並んでから随分経

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[生きてるかい?]

[生きてるかい?]

初版発行: 2014年3月10日*文庫版
著者: 南木佳士
ジャンル: エッセイ

 「名を知るまではただの白いきれいな花だったのが、おさば草と知ってからこの場所は山行の明確な理由になった。」とある章で書かれている。中々良い表紙の写真が無く、この「おさば草」の写真をTopに択ぶ。というのもこのエッセイの中でご夫婦で山へ行くシーンが割合多かったことも二つめの理由。
 南木氏の本はダイヤモンドダストし

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