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タイムスタンプ

 人は無意識の場合に物事を先ず自分sideから考える、つまり「一方通行」にだ。起点は自分からであっても、それから思い巡らすうちに次第に俯瞰するように全体像が見え、漸く相手から見た自分の姿を想像出来るようになる。此処で「双方向」が生まれる。
 朝の通勤途中、ほぼ或る100mの区間で私立中高一貫校に通う男子高校生とすれ違う。そのすれ違い位置で今日は少し私が早く出た、或いは遅れ気味、などと時間確認し併せて歩くスピードを調整する。
 私が彼を覚えているようにおそらく彼も「この人と此処で会うなんて遅刻ギリギリか?」などと考えている筈だ。
 互いに相手にとってのタイムスタンプになっているのよね、と或る日気が付き、名前も知らない高校生だが全くの他人よりは微々たる距離ではあるが近い気がした。
 彼の制服から偏差値70前後の私立進学校に通う子だと解る。
 最初のすれ違いは、彼が中学生になったばかりで顔立ちは中学受験経験者に見られる大人びた感はあるが同学年の子らより引き締まっている程度でまだ幼い。その彼も最近は少年から青年に向かう途中なのだろう、精悍さが出始めた。
 彼はそろそろ、又、受験の季節に向かう。私はこの通勤路をもう少しで卒業する。彼は「あの人は最近此処を通らない」と気が付くだろうか。

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