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スナ式トケイ

 私は「砂時計」の響きの方が好きだ。
 私が紅茶党の話はマガジン「London17 紅茶」で既に触れた。紅茶を淹れる生活には砂時計が必需品。Google Home に「3分後アラームお願い」は何とも間抜けな風景である。勿論、茶葉の様子で微妙に抽出時間を10秒20秒調節するには、実はアナログの砂時計がとても使い易い。

 ブランド食器類の中で其処だけ時間が止まったように小学生から使っている木の枠に収まっている何の芸もデザインもない砂時計を使っていた。この何十年間狂いもせず、壊れもしなかった時計。壊れた訳ではなかったが、新しい砂時計を買ってしまった。
 自身で購入しておきながら、壊れもしていない砂時計を強制退職させたことが何とも心苦しい。
 愛着、そこに在ることが当たり前の風景になっていたから尚のこと。

 新しい砂時計はタイトル写真にある廣田硝子のシルバーコーティングされた砂時計。もう守り支えている木の枠は無く、無防備ではあるがガラスのフォルムが美しい。
 ミッドタウン日比谷で見かけたのはゴールドとシルバーの二種。此処は迷い様なくシルバーを択んだ。手に取らせてもらい、逆さにすると砂ではなく細かいガラスの粒が同じガラスの底にぶつかる硬質の音が心地よい。
 それはワインを注ぐ時の最初だけに聞こえる音のように、硬質の音は落ちてくる硝子にその内消されていく。その様子も佇まいに合わせて購入動機になった。

 紅茶の時間をどれほど一緒に過ごすと、この砂時計も我が家の一員になるのだろうか。



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