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「Girl ガール」

原題:Girl 
監督:ルーカス・ドン
製作国:ベルギー
製作年・上映時間:2018年 105min
キャスト:ビクトール・ポルスター、アリエ・ワルトアルテ

 昨年、映画公開よりも先に本作品が引き金になったトランスを描く姿勢への批判記事を読んでいた。敢えて簡潔且つ強引に要約すると「シスジェンダーが描いた、或いはシスジェンダーから見たトランスの世界だ」と糾弾。話は更に発展しトランスの役はトランスにさせるべきとも話が逸れていった経緯がある。

 少なくとも監督は暴走はしなかった。監督自身が新聞記事にあった、後にトランス女性ダンサーになるノラ・モンスクールについてを映画化したいと考え彼女に交渉するが彼女自身は出演を断る。しかし、10年に及び綿密に話を進めノラ・モンクレール自身もこの映画作品制作に関わった。

 映画や小説は多くのメタファを使う。「Girl」でもメタファとして、又は、イメージが伝わり易いようにデフォルメされた部分はある。この映画最後にも批判が集中したが当ノラ・モンクレール自身がそれを否定し、シスジェンダーの勝手な妄想ではない「私を描いた作品」とまで話している。

 ララを見ていると男であるのか女であるのか、その区別が不要になる。

 ララを演じたビクトール・ポルスター自身性別を超越して美しい。

 辛いことは、ララが本来の性を獲得する道がとても険しいことだ。
 このことだけでも現実世界はまだ追い付いてはいないにも拘わらず、彼女は躰の線が強調されるレオタードを着用しなければならないバレエの世界を希求する。

 ララが思春期とかさなってホルモン補充療法で体調を崩しながらも葛藤する姿が少なくとも理解ある家族、医師、親族に囲まれ描かれる。

 話として一部意地悪なバレエ学校生徒が描かれるが映画全般ララは理解ある大人に囲まれ、観ている側は確かに胸が苦しいが救いがあった。
 2019年半年過ぎた現在、ララの父マティアスがBestお父さん!である。

 久しぶりにゆっくりと時間が流れ、過剰過ぎない音楽も相まって登場人物の表情から感情を読み取っていく静かなドキュメンタリーのようなヨーロッパ作品を観た。

 エンディング近く、颯爽と闊歩するララの姿がその未来も見せてくれた。
★★★★☆

 この作品モデルとなったノラ・モンスクールさんのインタビュー記事が以下。是非、お読みください。


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