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「ギルバート・グレイプ」

原題:What's Eating Gilbert Grape
監督:ラッセ・ハルストレム(スウェーデン国籍)
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:1993年 117min
キャスト:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス

 この映画初見はネットだった。全く内容をチェックせず俳優だけで観たのだが「えっ?」の驚きがこころの中で続き、好印象それも深い印象が残る。
 もう一度大きなスクリーンで観たいとずっと願っていたところ、TOHOの期間限定上映で叶った。

 映画冒頭、通過するトレラーハウスをぎこちなく数えるシーンからはこれからどのような展開が始まるのか全く想像が付かない中、10代のディカプリオが出て来る。映画タイトルでも解るようにこの作品の主役は兄ギルバート役のジョニー・デップで当時のディカプリオは助演に過ぎない。
 撮影当時、ジョニー・デップ30歳、ディカプリオ19歳。映画の役と殆ど同じ年代を二人は演じている。知的障碍者役を演じるディカプリオの演技を彼を知らない人には知的障碍の人を役者として起用したと思わせるほどディカプリオは緻密に演技を組み立て弟をみせていく。彼はこの演技のために実際に障碍者宅で生活をさせてもらったそうだ。

 発声は元より指の動き、顔の表情では瞼の動きに関するまで細かい。その演技に支えられ役柄上「限られた台詞」ながら見事に悲しみ、怒り全ての感情を観るこちら側に伝えてくる。

 映画は地方それも大型スーパーがやっと出店し個人商店が寂れていく一方のかなりこじんまりとした町での障碍者である弟を囲んだ家族の話。派手さは一切ない。
 最近のジョニー・デップといえば殆ど素顔で演じることがない。カリビアンシリーズほどのメイクをせずとも何かしらその顔には施されている。この映画では素顔で等身大に近い市井の兄を彼もまた丁寧に演じていく。

 勤務先にまで連れて行き弟の面倒を自然体でみていく兄。それでも町自体にも閉塞感が有る中、自身の恋愛を含め近い将来さえ描き辛い内面葛藤の青年役を観ている側を共感させる計算された演技で演じる。

 移動トレーラーハウスが故障の為に町に留まった彼女の登場は、ありふれた表現だが窒息した場所に新鮮な空気が吹き込んできたかのよう。帽子に射す花一輪が場面毎(日毎)で変わる程度のファッションだが、特に見せるでもない一輪が変化の種を演じる。

 この塔に登ることが大好きな弟は説教をされてもそれを忘れまた登る。小さな町では明らかに目立つ行為だが町の人の視線はそれほど冷ややかではなく、全編を通じて弟アーニーが本当に愛されていることが伝わってくる。
 「ショーシャンクの空に」同様に展開を知っていても何度も観る映画がまた増えた。
★★★★☆

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