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「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」

原題:The White Crow
監督:レイフ・ファインズ
製作国:イギリス・ロシア・フランス合作
製作年・上映時間:2018年 127min
キャスト:オレグ・イヴェンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルホプロス、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、ラファエル・ペルソナ、レイフ・ファインズ

 1993年54歳でその生を閉じるまで彼がダンサーとして多くの実績を残したことと同じように、亡くなった後も幾つもの作品題材になった人。
 「ホワイトクロウ」がその名の通り「際立った」或いは「孤立」を示すよう、これらからダンサー「ルドルフ・ヌレエフ」が描かれていく。

 シベリア鉄道の車両内でタタール人とバシキール人の血を継いだ子が生まれるところから丁寧に描かれる。第二次世界大戦中、一家はモスクワからウファに移送され赤貧、飢えと極寒の苦しい生活も垣間見せていくがこの辺りは多少冗長的。描く割には幼少期から青年期に至るまでその貧しい生い立ちからいじめにあう部分までは追ってはいない。

 写真はヌレエフ氏ご本人。ソ連時代に西側諸国で脚光を浴びた存在以上に描かれるべきは、彼が初めての「不帰国者」であったこと。
 単に踊り続けたいだけの理由で亡命は択べない。特にあの『ソ連時代』に残された家族への弾圧を考えると資本主義国に於いての例えば日本人がフランスに残って踊りたいとはレヴェルが違い過ぎる。KGBに警戒されるほどの言動や性格の激しさは確かに描かれてはいたが、足りない。
 「I Want to be Free」の台詞への導線をもっと太く描いて欲しかった。

 ヌレエフ役をダンサーから択んだことは、当然ながら作品を厚くした。全体としてはレッスン風景は少なく、同じバレエ作品映画「セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」とは趣を異にする。ヌレエフ基金でロンドンでプリンシパルまで上りつめたセルゲイ・ポルーニンも出演。

 レイフ監督も言うよう「動物のように、それも虎のような視線で(観客を)射るんだ」にもあるよう、ヌレエフ役オレグ・イヴェンコ氏は容姿も大変似ている。
 こうして復習した後に、見落とした部分が気になりもう一度観たいと考えている作品。

 亡命後の伏線も(上の写真)丁寧に描かれて終わる。英国ロイヤル・バレエ団で42歳マーゴ・フォンテインに23歳のヌレエフが出会い、この後彼らは伝説の二人となる。
★★★
*個人的な補足:今でも印象に残っている「ヒトラーの忘れもの」に出演していた青年ルイス・ホフマン氏に会えたことはうれしい

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